目次
はじめに
遺産相続は、人生でそう何度も経験することではありません。しかし、ひとたびその時を迎えれば、法的手続きの複雑さや、相続人の間での意見の相違、費用や時間の問題など、さまざまな壁に直面します。
中でも不動産は、預貯金とは異なり「分けにくい」資産であり、また名義変更などの法的手続きが必要なため、慎重かつ的確な対応が求められます。
本記事では、不動産の遺産相続で損をしないために知っておくべき知識を、各ステップごとに丁寧に解説します。
第1章:不動産を含む遺産相続の基礎知識
1-1 相続とは何か?
相続とは、亡くなった人(被相続人)の財産や権利・義務を、配偶者や子供などの相続人が受け継ぐことをいいます。民法では、被相続人が死亡した時点で、自動的に相続が開始するとされています。
相続財産には、以下のようなものが含まれます。
- 預貯金
- 株式・投資信託などの金融資産
- 土地・建物などの不動産
- 家財道具、自動車などの動産
- 借金やローンなどの負債
これらすべてを「プラスの財産」と「マイナスの財産」に分けて整理することが、相続手続きの第一歩です。
1-2 不動産相続が特に重要な理由
不動産が相続財産に含まれる場合、以下のような点で特に注意が必要になります。
- 分割が難しい:現金と違って、土地や建物は簡単に分けられない
- 所有者の名義変更が必要:相続登記をしないと第三者に所有権を主張できない
- 管理・維持費がかかる:固定資産税や修繕費用などが発生する
- 共有状態がトラブルの原因になる:複数人で共有すると売却や活用が難しい
不動産の相続は、相続人の間での調整や合意形成が欠かせず、感情的な対立を生みやすい側面があります。そのため、無理に自分たちだけで進めようとせず、司法書士などの専門家の力を借りることが望ましいといえます。
1-3 法定相続人と相続分の基本
民法では、被相続人の財産を誰がどれだけ相続できるかの基本的なルールが定められています。このルールに沿った相続を「法定相続」、相続できると定められている人を「法定相続人」、定められた相続分を「法定相続分」といいます。
例えば、被相続人に配偶者と子がいる場合、配偶者と子がそれぞれ1/2ずつ相続します。親や兄弟姉妹が相続人となるケースでは、相続分の割合も異なります。
遺言がある場合は、原則として遺言の内容が優先されますが、それによって法定相続分の遺産がもらえなくなった人は、遺留分(最低限の相続分)を請求できる場合もあります。
このようなルールを踏まえて、不動産の分け方や名義の扱い方を検討する必要があります。
第2章:不動産の相続手続きと遺産分割の進め方
不動産の相続手続きは、以下の4つのステップで進めていくのが基本です。
ステップ1:相続人の確定
まず必要なのが「誰が相続人なのか」の確認です。相続人の確定には、被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集して、家族関係を時系列で確認する必要があります。これを怠ると、後に新たな相続人が判明してトラブルになることがあります。
戸籍収集は手間がかかる作業であり、古い戸籍は手書きで読みにくいこともあります。司法書士に依頼すれば、戸籍の収集から、それを用いた相続関係説明図の作成まで含めてスムーズに対応してもらえます。
ステップ2:遺産の調査と不動産の確認
次に、被相続人が所有していた不動産について、以下のような書類を収集します。
- 登記簿謄本(全部事項証明書)
- 固定資産評価証明書
- 公図・地積測量図など
- 権利証や売買契約書などの書類
これにより、不動産の所在地、権利関係、面積、評価額などを正確に把握できます。
都市部か地方か、また建物の状態などによっても、相続後の活用方針が変わってきます。
ステップ3:遺産分割協議と不動産の分け方
相続人全員で集まり、遺産の分け方を話し合うのが「遺産分割協議」です。不動産については以下のような分け方があります。
- 現物分割:相続人の一人が単独で不動産を取得し、他の相続人は預貯金を取得するなど、財産の形を変えずに分け合う
- 共有分割:複数の相続人で不動産を共有する(※後々のトラブルの原因になることが多い)
- 代償分割:一部の相続人が不動産を取得する代わりに、他の相続人に代償金を支払う
- 換価分割:不動産を売却して、その代金を分ける
不動産を共有にすると、その後の売却や管理に共有者(相続人)全員や過半数の同意が必要となり、特に意見の合わない相続人がいると処分が困難になります。なるべく他の分割方法にすることをおすすめします。
協議がまとまったら「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員の署名・押印を行います。
ステップ4:相続登記の申請(2024年4月より義務化)
遺産分割の内容が決まったら、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する「相続登記」を行います。
2024年4月からは、相続登記が義務化されたため、正当な理由なく3年以内に登記をしない場合、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。
相続登記に必要な主な書類は以下の通りです。
- 相続関係説明図
- 遺産分割協議書
- 戸籍一式
- 住民票(相続人)
- 登記申請書
司法書士に依頼することで、書類の確認や法務局への提出まで代行してもらえるため、時間や手間を大きく削減できます。
第3章:相続不動産の活用・売却方法
3-1 使わない不動産を相続した場合
利用する予定のない空き家や土地を相続した場合、維持費や税金の負担だけが増えていくことになります。空き家は放置しておくと劣化が進み、資産価値が下がるだけでなく、近隣住民とのトラブルにも発展しかねません。
放置された空き家は「特定空き家」に指定される可能性があり、固定資産税の軽減措置が外されるなどのペナルティを受けることもあります。
なお、不動産の活用には以下のような選択肢があります。
3-2 活用の選択肢
- 賃貸に出す:収益化の可能性があるが、初期投資や管理が必要
- 管理委託する:不動産会社に管理を任せることで負担を軽減
- リフォームして自ら住む・親族に貸す:将来の住居として活用
いずれの選択肢を取るにしても、物件の立地や築年数、修繕状況、地域需要を考慮して判断する必要があります。
自分たちでの利用が難しい場合、不動産の売却を考えるとよいでしょう。
3-3 売却する場合の流れ
- 相続登記の完了:名義が相続人でないと売却できない
- 不動産会社に査定を依頼:複数社から相見積もりを取るのが理想
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ:専属専任・専任・一般媒介の選択も重要(別の記事で解説します)
- 買主が見つかれば、売買契約を締結:不動産会社で手続き
- 引渡しと代金受け取り:登記は司法書士が対応
トラブルを避けるためにも、売却を前提とした相続分割の段階から、専門家と連携して計画を立てることが重要です。
「住まいの賢者」では、相続を得意とする司法書士と提携し、相続不動産の調査から登記、売却、活用までをワンストップで支援するサービスを提供しています。
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まとめ:不動産の相続で損しないために、今できること
不動産の相続は、法的手続きの複雑さに加え、相続人どうしの調整や財産の分け方など、感情的・実務的な難しさを伴います。特に、不動産は現金のように簡単に分割できないため、しっかりとした準備と対応が求められます。
以下のポイントを意識することで、不動産相続でのトラブルや損失を未然に防ぐことができます。
- 相続人と相続財産を正確に把握すること
- 遺産分割は協議書を作成し、明文化すること
- 相続登記は期限内に行うこと
- 活用・売却など、将来を見据えた判断を行うこと
- 専門家の力を借り、手続きと精神的負担を軽減すること
不動産相続では「相続が発生してから考える」のではなく、「事前に知識を持っておく」ことが重要です。もし現在、不動産の相続を検討中、あるいはすでに相続が発生してお困りの方は、専門家に早めに相談することをおすすめします。
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