空き家投資とは?始め方とメリット・デメリット・失敗事例を徹底解説

空き家投資とは?始め方とメリット・デメリット・失敗事例を徹底解説
執筆者: 杉田悟

はじめに

空き家の増加が社会問題となる中、近年注目を集めているのが空き家投資です。

活用されていない空き家をリフォーム・再生して収益化する空き家投資は、不動産投資の初心者でも始めやすいと注目を集めています。

しかし、空き家投資で本当に利益を得られるのかと不安に感じる方は少なくないでしょう。実際、空き家投資にはメリットだけでなく、失敗事例や注意すべき法規制もあります。

本記事では、空き家投資の基本からメリット・デメリット、具体的な活用法などを広く解説します。

空き家を活用した投資に興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。

第1章 空き家投資とは

少子高齢化や都市部への人口集中によって、空き家は全国各地で増え続けています。こうした空き家を再活用し、収益を得る手段として注目されているのが空き家投資です。

空き家投資は一般の不動産投資とは異なり、使われなくなった資産を再生して収益化するという点が特徴です。建物の老朽化や立地などの課題がある一方、うまく活用できれば低コストで高い利回りを狙える可能性があります。

近年では、国や地方自治体も空き家対策に積極的に取り組んでおり、補助金制度や空き家バンクといった仕組みも整ってきました。空き家投資を始めるまでのハードルは、今や低くなりつつあるのが現状です。

1-1 空き家投資と空き家活用の違い

空き家を活用するという点では空き家投資も空き家活用も同じですが、両者の目的には明確な違いがあります。

空き家投資は、主に収益を得ることが目的です。つまり、どう活用すれば利益が出るかを考えながらリフォームや運用を行います。

一方で、空き家活用は必ずしも利益を追求するものとは限りません。たとえば、空き家をリフォームして地域のコミュニティスペースにしたり、家族で住んだりと社会的・個人的な目的で使われるケースも多いのが空き家活用です。

大きな括りでいえば、空き家投資は空き家活用に含まれます。その中でも、収益性にフォーカスした活用方法といえるでしょう。

1-2 空き家投資と一般的な不動産投資の違い

空き家投資は、一般的な不動産投資と比べると購入費が安い傾向にあります。特に空き家バンクなどを利用した場合は、100万円~数百万円で購入できるケースもあります。あるいは、相続によってただ同然で空き家を手に入れる場合もあるでしょう。

ただし購入費が安くても、古い物件ほど補修費などのリフォーム費用は高額になる可能性が高くなります。

とはいえ、物件の購入費を抑えられる分、一般の不動産投資より初期費用は少なくて済む場合が多いようです。

例えば新築のマンションを購入する場合、リフォーム不要で安くても1,000万円以上はかかります。一方、空き家を200万円で購入し、リフォームに600万円かかった場合は800万円で取得できるわけです。

初期費用は低い一方で、空き家投資は地域の需要や立地などが重要です。しっかり調査してから投資を始めなければ、却って損になるリスクが大きいことも知っておきましょう。

第2章 空き家投資のメリットとデメリット

空き家投資には、一般の不動産投資にはないメリット・デメリットがあります。

ここでは、空き家投資のメリット・デメリットを挙げて詳しく解説します。どちらも把握しておけば、大きな失敗を防ぐことにつながるでしょう。

2-1 3つのメリット

空き家投資のメリットは、以下の3つです。

  • 初期投資負担の軽さ
  • 高利回り・節税効果
  • 社会的意義と地域貢献

空き家投資の大きな魅力は、比較的少額の資金で始められる点にあります。資金が少ない人でも始めやすいのが大きなメリットです。

さらに物件の取得費用が安いため、利回りが高くなりやすいのもポイントになります。

利回りとは、投資した金額に対していくら収益があるかを割合で表したものです。実際の収益に近い実質利回りは、以下の計算式で表します。

(年間家賃収入 − 維持管理費・修繕費・税金など) ÷ (物件購入価格+諸費用+リフォーム費用) × 100

一般的な不動産投資の場合は4~8%程度ですが、空き家投資の場合はリフォーム次第で10%以上もありえます。

例えば、次のような場合は以下のように計算できます。

  • 年間家賃収入 72万円(月6万円)
  • 維持管理費や税金などの経費 20万円
  • 空き家の購入価格 200万円
  • 諸費用 50万円
  • リフォーム費用 300万円

(72万円-20万円)÷(150万円+50万円+300万円)×100=10.4%

また、不動産所得に対する経費計上ができるため、所得税や住民税の節税にもつながる場合があります。

投資のために放置された空き家をリフォームすることで、地域の景観改善や防犯対策にもつながります。

空き家問題の解決は、社会全体の課題でもあります。投資を通じて社会貢献ができるのもメリットといえるでしょう。

2-2 3つのデメリット

一方、空き家投資には大きなリスクにつながるデメリットがあります。

  • 修繕コスト・メンテナンス
  • 空室リスク・収益の不安定性
  • 法令・条例リスク

老朽化が進んでいる空き家では、購入後に想定以上の修繕費がかかることがあります。雨漏りや設備の劣化など、見えない部分のトラブルも多いため、購入する際によく確認しておくことが大切です。

また、空き家を賃貸物件にするとしても、立地や地域のニーズによっては入居者がなかなか見つからないこともあります。特に地方の空き家では、なかなか入居者が付かないリスクを想定しておく必要があります。

空き家を利用して民泊を運営する場合は、住宅宿泊事業法や自治体の条例に基づいた手続きが必要です。また、建築基準法や耐震基準を満たさない物件の場合、追加の工事や用途変更届出が必要になることもあります。

第3章 空き家投資の活用方法4選

空き家をどのように収益化するかによって、成功できるかどうかが決まるといっても過言ではありません。

ここでは、空き家投資で実際に活用されている代表的な方法を4つ紹介します。

3-1 賃貸による収益化

もっとも一般的なのが、空き家をリフォームして賃貸物件として運用する方法です。一戸建てやアパートの賃貸だけでなく、シェアハウスや賃貸併用住宅といった形での活用も考えられます。

地域のニーズや物件の間取りに応じて、柔軟な運用が求められます。立地が悪かったり、その地域にニーズが少なければ賃貸化しても収益は難しいでしょう。

3-2 民泊・宿泊施設

観光地やインバウンド需要のある地域では、空き家を民泊やゲストハウスとして活用する事例が増えています。

ただし、地域の条例による制限などは確認する必要があります。

リノベーション次第では、インバウンド向けだけでなくワーケーション施設として地域に役立つ施設に活用することもできます。

3-3 駐車場・トランクルーム事業・太陽光発電

立地や敷地条件によっては、建物を解体して駐車場にしたり、トランクルームを設置したりすることで収益を得るケースもあります。

駐車場は付近に駅や施設がある場合や、周辺の家に駐車スペースが少ない場合はニーズがあります。さらに移住者が多い地域では、本格的に引っ越す前の荷物を一時保管するスペースとしてトランクルームの需要があるでしょう。

また、屋根や空き地を活用した太陽光発電も、収益を見込める選択肢の一つです。

ただし設置するのは日当たりの良い場所でなければならず、屋根に設置する場合は、屋根の向きが悪ければ発電量が少なくなります。

太陽光パネル設置の初期費用は150~200万円ほどで、収益額は年10万円前後が目安です。初期費用回収には15~20年かかるため、その間の空き家管理が負担になるデメリットもあります。

3-4 店舗や介護・地域拠点などBtoC用途

地域ニーズと組み合わせて、カフェやコワーキングスペース、介護サービス拠点などに活用する例も増えています。

空き家をリノベーションして行うため、事業の初期費用が抑えられるうえ、国や市町村からの補助金が利用できる可能性があります。

空き家を活用することで、地域の活性化にもつながる例といえます。

3-5 売却

将来値上がりしそうな土地の空き家を安く購入し、価値が上がったタイミングで売却して利益を得るのも空き家投資の一つです。

これは一般の不動産投資でも行われる投資方法ですが、空き家の場合はリスクが大きいといえます。安く購入できる空き家は地方に所在している場合が多く、土地価格が大きく上がることが少ないためです。また、建物はリフォームしても定期的な管理が必要なうえ、年月とともに価値が落ちていきます。

賃貸活用した後に売却したいと考えている場合、一般の不動産よりも空き家は売却しにくいことを知っておくべきでしょう。

空き家を売却したいなら、早めに専門家に相談しておくことが成功のポイントです。住まいの賢者では、空き家の売却について税制・法律に通じたスタッフがご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。

第4章 空き家投資の流れ

空き家投資を成功させるには、しっかりとした準備と行動が重要です。

以下では、投資の流れを4つのステップに分けてご紹介します。

STEP① 対象物件の選定

まずは、どの空き家を活用するかの選定が重要です。

築年数や地域性、構造、将来的な価値などを確認しましょう。相続した空き家であっても、リノベーションして新たな資産価値が生まれるなら有効な資産となり得ます。

市場調査や賃貸に出す場合の収支シミュレーション、初期費用・修繕見積もりも欠かせません。

STEP② 資金調達と補助金活用

空き家投資には、物件取得費用やリフォーム費用がかかります。

自己資産でまかなえる額で小さく始められるのが空き家投資のメリットです。しかしリフォームに力を入れたい場合は、金融機関からの融資やリフォームローンの活用、空き家再生向け融資を検討するのも一つです。

さらに自治体による補助金や国の助成制度なども活用すると、初期費用の負担が軽くなります。

STEP③ リフォーム

物件の状態に応じた修繕計画を立て、リノベーションを進めていきます。

優先順位をつけた工事内容を決定し、民泊運用を行う場合は認可手続きや用途変更届出、耐震診断の実施など法的対応も求められます。

STEP④ 運用と管理

完成後は入居者の募集や賃料設定して運用をスタートします。

物件管理を外部に委託するか、自主管理するかも検討する必要があります。

物件が遠方にある場合は管理会社に任せるのが安心ですが、家賃の3~5%程度の管理手数料が必要です。

自主管理の場合は借主とのやり取りの中でトラブルになるケースもよく見られるため、その場合、契約書の作成は専門家に依頼しましょう。

第5章 空き家投資でよくある失敗パターン

空き家投資では、準備不足や見通しの甘さによって失敗するケースも少なくありません。

特に注意しておきたいパターンを以下に紹介します。

5-1 収支シミュレーション不足による失敗

家賃収入に対して管理費や税金などのコストを十分に見積もらず、結果的に赤字になってしまう例です。

特に空き家の場合は、外観はきれいでも水道設備や屋根など見えない部分の劣化が進んでいるケースがあります。見積もりを取ってみると、予想外に修繕費が必要だとわかったという例は多いものです。

また、空き家を居住目的以外に使用する場合、固定資産税が上がる点にも注意しましょう。居住している家屋の固定資産税は、住宅用地の特例によって最大6分の1に減額されています。

ただ、店舗利用している場合は経費計上が可能なので、住民税や所得税の節税につながり多少相殺されるメリットもあります。

5-2 法令未確認によるトラブル

民泊として運営したものの条例違反により営業停止となった事例など、法令や条例の確認不足によるトラブルが目立ちます。

トラブルの例は以下の通りです。

  • 特に住宅宿泊事業法に基づく届出をしないまま民泊マッチングアプリに登録
  • 民泊は住宅だからと勘違いして非常口・火災報知器・消火器設置をせず、消防法違反

空き家投資を進める前に、法令や条例についての事前確認が重要です。自力では完全に把握するのは難しいため、専門家への相談をおすすめします。

5-3 空室・地域需要ミスマッチ

地域のニーズに合わない活用方法を選んでしまい、借り手が長期間つかない、客足がにぶいなどのリスクもあります。

市場調査やターゲット層の分析を怠らず、専門家の意見も聞きながら需要のある活用方法を考えましょう。

まとめ:空き家投資は収益と社会貢献を両立できるが簡単ではない

空き家投資は、少ない資金で始められるうえに、地域社会に貢献できるという社会的意義もあります。しかしその反面、修繕費や複雑な法的手続き、地域需要の見極めといった課題も多く、簡単に成功できるものではありません。

大切なのは、正しい知識と綿密な準備、そして地域に寄り添った視点です。失敗例も参考にしながら、計画的に空き家投資を進めていくことで、収益と地域貢献の両立が実現できます。

所有する空き家を投資物件にするのは難しいとお悩みの方は、売却を検討してもいいかもしれません。

空き家の売却や活用にお悩みがある方は、「住まいの賢者」までお気軽にご相談ください。

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この記事の執筆者

杉田 悟(すぎた さとる)

杉田 悟(すぎた さとる)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/管理業務主任者/競売不動産取引主任士

長年の実務経験を持ち、特に相続や不動産登記に関する専門性が高い。一般の方にも分かりやすく、正確な情報提供をモットーとしている。

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