目次
はじめに
自身の両親等、家族が亡くなった際に、不動産を相続する事例はよく見られます。この際、既に自身が別の住居を構えている・遠方に住んでいるなどの理由から、その家が空き家となってしまうことは珍しくありません。
しかし、空き家はその性質上、犯罪の温床になりやすかったり、倒壊するリスクが高まったりなど、放置していると不都合が生じる可能性を常に有しています。
空き家の管理を定期的にするのが難しい方の中には、見守りカメラを導入する方も増えています。
ただし、空き家への見守りカメラ導入は、通常のカメラよりも意識すべき点が少なくありません。適当な選定をしてしまうと、トラブル発生時の対応がスムーズに進まないこともあります。
この記事では、空き家を相続したときに起きうるトラブル例を解説し、そのうえで見守りカメラをどのように使っていくべきかを解説します。
第1章 空き家を相続したときに起きうるトラブル例
空き家を相続した際、以下のトラブルが発生する可能性があります。
- 周辺住民に損害賠償請求される恐れがある
- 犯罪に巻き込まれる恐れがある
1-1 周辺住民に損害賠償請求される恐れがある
空き家の適切な管理を怠った場合、損害賠償請求をされる恐れがあります。
例えば、空き家となった不動産は、管理不足に伴う倒壊のリスクが高まります。
特に、1981年5月以前に建築された建物は、旧耐震基準によって建築されており、より倒壊のリスクが高いといえます。これは、旧耐震基準が「震度5程度の地震に耐えうる住宅」と定められていたためです。
万が一、管理をしていない空き家がある地域で大型地震が発生し、建物が倒壊したことで周囲の住宅を破壊したり、あるいは住民にケガを負わせたりした場合は、空き家の管理義務者に対して、損害賠償請求をされる可能性があります。
このように、空き家の管理義務を果たさずに放置していた場合、重大な問題に発展する恐れがあるため、適切な管理・準備をしておくことが重要です。
1-2 犯罪に利用される恐れがある
長く放置されている空き家などの不動産は、犯罪に利用される恐れがあります。
例えば、2018年、千葉県のとある空き家が、大量に密輸された覚せい剤を受け渡すための基地として使われていた事件が発覚しました。
管理が行き届いておらず、見守りカメラ等によるチェックがない空き家は、犯罪者の目には非常に都合のいいものに映ります。その空き家をどう使っても、一定の期間は通報される可能性が低いためです。
また、人が住んでおらず、見守りカメラが無い物件は、空き巣に狙われるリスクが高まります。
知らないうちに犯罪に利用されないよう、相続した空き家を見守りカメラ等で定期的にチェックすることは、重要と言えます。
第2章 空き家の防犯対策には見守りカメラを利用できる
第1章で述べた通り、放置された空き家は、犯罪リスク等が高まるため、遠方から管理・確認をする術が必要となります。
この際、見守りカメラが有効な手段の1つとして挙げられます。
見守りカメラは、以下の要素から、防犯対策に優れています。
- リアルタイムで空き家の状況を確認できる
- 自動録画機能があれば、トラブル発生時に記録を遡って確認できる
- 見守りカメラがついているだけで、犯罪者は敬遠する
見守りカメラは、一般的な録画機材とは異なり、遠隔地からでもスマートフォンなどを通じて24時間リアルタイムで状況を確認できる機種が多くあります。そのため、遠方に住んでいても、確認したいタイミングですぐに空き家の現状をチェックし、異変がないかを簡単に把握できます。
また、見守りカメラの中には、自動録画機能を搭載しているものもあります。この機能を導入している機種であれば、万が一トラブルに巻き込まれた際も、「いつ、どんな人物がトラブルを起こしたのか」を示す根拠を示しやすくなります。
このほか、見守りカメラが設置されているだけで、犯罪者がその空き家をターゲットとする可能性を減らせます。過去の調査では、カメラを導入したことにより、半径50m以内の犯罪を20%抑止できると発表したものもあります。
これらより、見守りカメラは、空き家の防犯対策に大きな効果を発揮すると言えます。
第3章 空き家に設置するときの見守りカメラを選ぶ基準
3-1 インターネット環境が必要か
空き家に見守りカメラを設置する際は、インターネット環境が必要な機種かどうかを確認すべきです。
見守りカメラの中には、Wi-Fiを介さないと、遠隔でチェックできない機種もあります。自分が住んでいる家であれば、このような機種でも大きな問題はありませんが、空き家の場合、インターネット環境がないことが多くあります。そのため、Wi-Fi環境を必須とする機種は、空き家への設置に向かないと言えます。
空き家に設置する見守りカメラの場合は、スマートフォンの通信等にも使われるSIMカード対応モデルをおすすめします。SIMモデルであれば、Wi-Fiなしでも通信が可能なことから、空き家であっても問題なく運用できます。
3-2 電源工事が必要か
空き家に見守りカメラを設置する際は、電源工事の必要性の有無も重要な観点となります。
通常、防犯を目的とした見守りカメラは、部屋の天井部分や、家の外壁部分に設置します。この際、見守りカメラの機種によっては、コンセントに差さなければ稼働しないことがあります。この機種だと天井部分や外壁に届く部分に電源工事が必要となるほか、空き家の電気を解約している場合、見守りカメラを使えない事態になってしまいます。
空き家に見守りカメラを設置する際は、可能な限り、ソーラー充電式のものを選定されることを推奨します。ソーラー充電式のものであれば、よほど悪天候が続かない限り、電源が無くても問題なく稼働します。配線工事が不要なため、設置の手間も大幅に軽減できます。
3-3 耐久性や画質はどの程度か
空き家に見守りカメラを導入する際は、設置の目的に応じて、耐久性や画質がどの程度なのかを入念に確認しておきましょう。
例えば、安価な見守りカメラだと、耐水性や防塵性に難があったり、画質が粗く、人物の特定が困難になることがあります。導入コストが低いメリットはありますが、屋外への設置が難しいほか、トラブル発生時の状況を正確に掴みづらくなる等のデメリットもあります。
そのため、空き家に見守りカメラを設置する際は、屋外での使用もできる耐久性を有しており、カラー画質で録画できる機種を選定されることを推奨します。
ただし、高機能な見守りカメラは、費用が高額になる傾向にあります。この点は十分にご注意ください。
3-4 AI検知機能の有無
空き家に見守りカメラを導入する際は、AI検知機能の有無を確認しておくとよいでしょう。
新型の高性能見守りカメラの中には、AIを搭載し、防犯性能を高めているモデルもあります。
AI検知機能を有している見守りカメラは、以下のような機能を搭載しています。
- 人や動物、車両が接近した際に通知する
- 異常を察知した際、見守りカメラからサイレンを鳴らして威嚇する
例えば、空き家の敷地内のうち、通常は人が入ってこないエリアにAI検知機能を搭載した見守りカメラを設置することで、犯罪者等の侵入に気づきやすくなり、リアルタイムで対応できるようになります。
見守りカメラの導入にあたり、防犯性能を高めたい方は、AI検知機能を搭載したモデルをご検討ください。
3-5 初期費用・ランニングコスト
空き家に見守りカメラを導入する際は、初期費用・ランニングコストがどの程度かかるかを事前に確認しておくことを推奨します。
見守りカメラは、家電量販店等で買える買い切り形式のモデルだけでなく、企業がサブスクリプション形式で貸与する形式のものもあります。
それぞれの費用の目安は、以下の通りです。
- 買い切りタイプ:15,000円から30,000円
- サブスクリプションタイプ:月額1,000円から5,000円
上記のうち、買い切り形式の見守りカメラは、初期費用が高額になる傾向にありますが、ランニングコストはほぼかからない事例が多くあります。
ただし、見守りカメラが壊れた際の対応は自分でやらなければならないケースが大多数です。
また、サブスクリプション形式の見守りカメラは、初期費用は安くても、ランニングコストが少なからずかかる傾向にあります。このことから、長期間見守りカメラを使用する場合は、買い切り形式より費用が嵩む傾向にあります。
しかし、サブスクリプション形式の場合、各企業が付帯するサービスが用意されている場合もあるため、空き家の状況に適したサービスがあれば、ランニングコストを支払う価値があると言えます。加えて、見守りカメラ破損時の対応も、企業が担ってくれるケースが多くあります。
空き家に見守りカメラを導入する際は、自身の目的・利用したい期間等によって、どの商品やサービスがよいか検討されることを推奨します。
第4章 見守りカメラ以外で空き家の防犯対策をする方法
4-1 空き家の管理代行サービスを利用する
空き家の防犯対策について、有効な手段の1つが、空き家の管理代行サービスを利用することです。
空き家の管理代行サービスは、主に以下の内容を担当するケースが多くあります。
- 定期的な空き家周辺の巡回
- 空き家に対してのクレームの一時的な対応
- 郵便物の回収・指定住所への転送
- 屋内の換気・点検
- 庭の手入れ
上記サービスは、いずれも空き家の防犯対策として重要なものばかりです。特に、屋内の換気・点検や庭の手入れなど、見守りカメラだけではカバーできない部分です。そのため、見守りカメラと併用すれば、空き家の環境維持や、防犯効果の向上も期待できます。
4-2 防犯カメラ設置済みのステッカーを貼る
空き家の玄関や正門等に、防犯カメラ設置済みのステッカーを貼ることで、防犯効果をより高められます。
犯罪者は、少しでも管理が行き届いていなそうな、通報される可能性が低い空き家を標的とする傾向にあります。その方が、スムーズに空き巣等の犯罪行為を完了させられるためです。
「防犯カメラ設置中」や「24時間監視中」などのステッカーを、誰にでも見える位置に貼っておけば、その空き家は管理されていると感じさせることができます。単純なステッカーだけでも、防犯には大きく寄与すると言えます。
なお、空き家に見守りカメラを設置するまでの間に、業者との契約手続きや、商品選定の期間が挟まることは珍しくありません。その間にも、ステッカーだけは貼っておくとよいでしょう。
カメラ設置のステッカーは、難しくない対策のため、早めに対応することをおすすめします。
4-3 郵便物を定期的に回収する
郵便物を定期的に回収することも、空き家の防犯対策につながります。
4-2でも触れた通り、空き巣等の犯罪者は、管理が行き届いていない空き家を標的にする傾向にあります。その際の判断基準の1つに、「郵便物が溜まっているかどうか」があります。
一般に、郵便物が多く溜まっている空き家は、長期間人が入っていないことが多くあります。このことから、犯罪をしてもすぐにはバレないと考え、狙われやすくなります。
郵便物を定期的に回収することで、「定期的に人が来ている、手入れがされている」と判断され、空き巣等の対象からは外れやすくなります。
上記の理由から、1週間から2週間に1回の頻度で、郵便物の回収を推奨します。
なお、空き家管理代行サービスの中には、郵便物の回収や転送をしてくれるところもありますので、自身が定期的に空き家に行くのが難しい場合、そちらの利用もご検討ください。
4-4 庭を手入れしておく
空き家の庭を定期的に手入れしておくことも、防犯対策になります。
庭の草木が伸びすぎている空き家は、郵便物の放置と同様、「人があまり入っていないところ」と判断され、犯罪者に狙われやすくなります。
また、庭を放置しすぎていて、隣家や道路に植物等がはみ出してしまった場合、近隣トラブルに繋がる恐れもあります。
定期的に庭を手入れしておくことで、犯罪者に狙われる可能性・近隣トラブルのリスクの両方を低下させられます。
庭の手入れについても、空き家管理代行サービスが担当できることがあるため、自身での対応が難しい方は、事業者への依頼をご検討ください。
4-5 窓に防犯フィルムを貼っておく
空き家の窓に、防犯フィルムを貼っておくことで、防犯効果を高められます。
防犯フィルムは、窓ガラスの強度を上げることができる防犯アイテムです。
犯罪者が空き家に侵入する際、窓ガラスを割って侵入するケースは少なくありません。防犯フィルムを貼っておくと、窓ガラスの突破にかかる時間が伸びるため、空き家への侵入を諦めさせやすくなります。また、見守りカメラと併用し、警察に通報した際に、犯罪者を捕まえやすくなる効果も見込めます。
このほか、窓ガラスの強度を上げることで、台風等の災害に備えられます。
防犯フィルムは、ホームセンターやネットショップ等で気軽に購入できるため、手軽に導入できる防犯対策と言えます。
まとめ:空き家を相続した際にはお気軽にご相談ください
この記事では、空き家を相続した際に発生するトラブルの事例に触れたうえで、防犯用の見守りカメラに期待できる効果やその選び方、見守りカメラ以外の空き家の防犯対策について解説しました。
記事全体で解説した通り、見守りカメラを導入すれば、空き家の防犯効果を高めることができます。しかし、売却や何らかの用途への活用を想定した場合、いかに防犯対策が出来ているとしても、そのまま所有し続けるのは現実的ではありません。そのため、空き家の防犯対策を整えるだけでなく、信頼できる不動産会社に相談するなど、適切な方法で手放すための行動も並行してすべきと言えます。
「住まいの賢者」では、空き家の相続に強い司法書士と連携し、空き家の相続・売却や土地活用に関する相談や依頼を受け付けています。空き家の相続にまつわるお悩みがある方は、ぜひお気軽にお問い合せください。
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