空き家はなぜ空き巣に狙われるのか?防犯対策と安全維持マニュアル

空き家はなぜ増えるのか?空き家問題の現状と今後の対策方法を解説
執筆者: 杉田悟

はじめに

近年、全国的に空き家が増加する中で、空き巣被害のリスクも深刻化しています。

2025年1月の警察庁の発表によると、2024年1〜11月の間に全国の空き家で発生した侵入窃盗事件は暫定値で8,192件、被害額は約11億6,000万円にのぼりました。

統計が開始された2020年以降、最も多かった一昨年の件数・被害額をすでに上回っており、前年同期と比べて件数は約1割増、被害額は6割増と急増しています。

空き巣や不法侵入が起これば、資産としての価値も大きく損なわれるため、空き家の「防犯対策」は今や必須といえるでしょう。

本記事では、空き家が空き巣のターゲットになりやすい理由と防止策を解説します。安全な資産管理のためにも、今すぐ行動を始めましょう。

第1章 空き家が空き巣に狙われやすい理由は?

空き家は、犯罪者にとって格好のターゲットです。

空き家が放置されることで、近隣地域に不安が広がり、空き巣被害だけではなく地域全体の治安の悪化にもつながる恐れがあります。よって、空き家を放置することは大きなリスクとなるでしょう。

では、空き家が空き巣に狙われやすい理由を解説します。

1-1 人の出入りがないから

日常的な人の動きが見られない空き家は、泥棒にとって絶好の侵入先です。

郵便受けが溢れかえっていたり、洗濯物が干されていなかったりすると「誰もいない」と判断されやすくなります。空き巣犯は数日間の動向を観察するケースも多く、一定期間人の出入りがないことが見抜かれると、ターゲットにされる確率が高まるでしょう。

加えて、防犯意識が薄いと思われる家は特に狙われやすくなります。家の前に雑草が生えていたり、新聞が何日もポストにたまっていたりすると、一目で「留守」と判断される材料になります。

空き家でも、人の出入りがあるように見せかける工夫をすることが大切です。

1-2 家が管理されていないから

定期的な掃除や点検がされていない空き家は、外観からすぐに「無人」とわかります。

破損した窓や外壁、錆びた門扉など、管理の手が行き届いていない状況は、空き巣に無人と思わせる要因です。

また、長期間手入れされていない建物は、老朽化によって鍵や窓が劣化し、物理的にも侵入が容易になります。雨漏りや腐食、シロアリ被害が発生していると、空き巣だけでなく家そのものの価値も下がってしまいます。

防犯と同時に資産保全の観点でも管理が重要です。

1-3 周りの人通りが少ないから

空き家の多いエリアや郊外など、人目が少ない場所は空き巣にとって行動しやすい環境です。周囲に目撃者がいなければ、堂々と窓を割って侵入したり、長時間物色したりすることも可能となるでしょう。

さらに、夜間や平日の昼間など、特定の時間帯に人気がない場所では、犯人が何時間も敷地内にとどまっていても気づかれにくいという問題があります。

人通りの少なさは、犯罪の抑止力が働きにくい点で非常に危険です。

1-4 近隣住民の関与が薄いから

近隣住民との関係が薄い空き家は、異変に気づかれても通報されにくくなります。

例えば、不審者が敷地内に入っていても、所有者だと誤解される可能性があります。

地域とのつながりがない空き家は、周囲の目も届きにくく、防犯の観点では非常にリスクが高いといえるでしょう。

第2章 空き巣を防ぐために知っておきたい7つの基本対策

空き家を守るには、空き巣に「入りにくい」「リスクが高い」と思わせることが有効です。

長期間放置が想定される場合は、あらかじめ複数の対策を組み合わせて、効果的な防犯環境を整えなければなりません。できることから一つずつ取り組むことで、確実にリスクを減らしていくことができます。

では、空き巣を防ぐための対策を解説します。

2-1 誰かいると思わせる工夫をする

空き巣を防ぐためには、外観から「無人」と思わせないことが重要です。

例えば、カーテンの開閉や照明の点灯・消灯を自動化することで、在宅感を演出できます。季節の飾りや日付入りの張り紙を貼るだけでも、人の気配を感じさせることができるでしょう。

また、スマート家電を活用すれば、防犯対策の自動化が可能です。ライトタイマーで夜間に照明を点けるだけでも、外部からは「誰かいる」と見せかけることができます。

照明はLEDで電気代も抑えられるうえ、屋外用のソーラーライトと組み合わせることで、経済的かつ持続可能な防犯対策になります。

IoT技術をうまく取り入れることで、空き家の管理の手間が軽減できるでしょう。

2-2 空き家管理サービスを活用する

定期的に空き家を見回ってくれる空き家管理サービスを利用することも有効です。

サービス会社に巡回、清掃、換気などを依頼すれば、空き家の劣化も防げて一石二鳥です。サービスによっては写真付きの報告書を提供してくれるため、遠方からでも状況を把握できます。

特に、相続や転勤などで一時的に空き家になるケースでは、空き家管理サービスの活用がリスク回避につながります。

2-3 防犯カメラ・センサーライトを設置する

空き家の外周や玄関に防犯カメラセンサーライトを設置することで、犯罪抑止効果が飛躍的に高まります。

最近では、スマホ連動型のカメラも登場しており、異常を検知すると通知が届く仕組みになっています。夜間の不審者を検知して、自動でライトが点灯するタイプもおすすめです。

ダミーカメラやステッカーでも、一定の抑止力はありますが、本物の機器を設置することでさらに効果的になります。

設置する際は死角をなくし、録画データの保存期間にも注意しましょう。

2-4 鍵と窓を強化する

古い家屋では、鍵や窓が簡単に破られるケースが多発しています。ディンプルキーや補助錠、防犯フィルムなどで侵入に時間がかかるように工夫しましょう。

侵入に5分以上かかると犯人は諦める傾向があるため、時間をかけさせることが重要なポイントです。

また、玄関や勝手口のドアに加えて、ガラス窓の強化も忘れずに行いましょう。防犯ガラスや補助錠の取り付け、窓格子の設置などが効果的です。

2-5 草木や郵便物を放置しない

庭の雑草が伸び放題だったり、ポストに郵便物が溜まっていたりすると、明らかに無人と判断されます。

定期的に庭の手入れを行い、郵便物は転送設定をするなどの対応をしましょう。

手入れする時間がない場合は、空き家管理サービスに草刈りや清掃を依頼するとよいでしょう。見た目を整えることで、地域住民の目にも留まりやすくなり、不審者の発見にもつながります。

2-6 空き家バンクや賃貸活用で人が居る状態にする

「人が住んでいる状態」にすることも効果的です。

空き家バンクや短期賃貸などを活用し、家を使ってもらうことで自然と防犯効果が高まります。定住者がいない場合でも、シェアオフィスや貸倉庫として活用する選択肢もあります。

自治体が運営する空き家バンクは、登録や手続きも簡単で、リノベーション費用の補助制度を導入している場合もあるため有効活用しましょう。

家の持ち主が不在でも、使用中の状況を作ることが、最大の抑止力となります。

2-7 地域との関係づくりをする

地域の見守りネットワークや町内会、防犯パトロールに参加し、地域との関係づくりをすることは、空き家所有者にとっても有益です。

地域に根ざした信頼関係があれば、異常があった際にも早期に連絡がもらえ、迅速な対応が可能になります。

「あの家は誰かが気にかけている」と思わせるだけで、防犯効果は格段に高まります。

第3章 空き巣の不法侵入が起きた場合の対処法は?

万が一空き巣に侵入された形跡が見つかった場合、冷静かつ迅速な対応が求められます。

最も重要なことは、自分の身の安全を第一に考えることです。犯人がまだ家の中に潜伏している可能性もあるため、決して独断で内部を確認しないようにしましょう。

では、空き巣の被害が発覚した際にとるべき対処法を解説します。

3-1 安全確保と110番通報が最優先

空き家に空き巣が侵入していた形跡がある場合、「中に入らず、安全を確保すること」が第一です。

犯人がまだ家の中にいる可能性もあるため、絶対に独断で確認しようとしてはいけません。すぐに110番通報し、警察の到着を待ちましょう。

また、現場保存も重要です。警察が現場検証を行うまで、無闇に物に触れたり、写真を撮ったりしないよう注意しましょう。玄関の外から状況をメモしておく程度にとどめ、冷静に情報を整理することが大切です。

警察到着後の対応がスムーズになるよう、状況説明を準備しておきましょう。

3-2 防犯カメラ映像や管理記録を証拠として提出

警察が来たら、防犯カメラの映像や空き家管理サービスの巡回記録などを証拠として提出しましょう。

証拠があることで犯人特定や逮捕につながる可能性が高まります。スマホで録画映像を確認できるタイプのカメラは、即時対応にも便利です。

万一裁判になった場合でも、記録が被害の正当性を裏付ける材料となります。映像の保存期間はサービスによって異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。

3-3 警備システムや空き家管理サービスの導入で再発防止をする

空き家における空き巣被害や不法侵入を放置してしまうと、被害が拡大するリスクがあります。一度侵入された家は「管理されていない」と判断され、再び標的になる可能性が高まるため、絶対に放置するのはやめましょう。

また、空き巣だけではなく、放火や不法占拠、ゴミの不法投棄などの二次的な犯罪や迷惑行為にも発展しやすくなります。

犯罪の温床とならないよう、被害を受けた場合は早急に対処することが重要です。定期的な見回りや警備システムの導入、空き家管理サービスの活用など、被害を再発させない対策を行う必要があります。

第4章 空き家を安全に維持するためにできること

空き家の防犯は、単発の対策だけでは不十分です。空き家は放置されればされるほどトラブルの原因になりますが、きちんと維持すれば、将来的な活用の幅も広がります。

長期的に安心して資産を保持するためにも、全体を見通した管理計画と実行が必要です。

では、空き家を安全に維持するためにできることを解説します。

4-1 空き家対策の優先順位を整理する

空き家の安全維持は、優先順位を明確にして一つずつ実行することが大切です。

まずは、登記情報を確認し、責任の所在を明確にしましょう。次に管理者を決め、定期的な見守り体制を構築します。

最後に、防犯カメラや鍵の強化など、物理的な対策を導入することで、トラブルを未然に防ぐことができます。

いきなり全てを整備するのではなく、優先順位を整理して「最低限やるべきこと」から着手しましょう。

4-2 防犯と資産価値維持はセットで考える

防犯対策は安全確保だけではなく、空き家の資産価値維持にもつながります。

外観の清潔さや管理状態が良好であれば、売却時や賃貸時の印象も大きく変わります。「誰も手をかけていない家」と思われないためにも、日頃のメンテナンスが重要です。

また、見た目が良ければ犯罪者に「ここは管理されている」と思わせる抑止力にもなります。美観と防犯の二つを同時に満たすことが、空き家管理の理想的な形です。

4-3 管理が難しい場合は売却・賃貸も視野に入れる

遠方に住んでいて管理が難しい場合や、長期的に使用予定がない場合は、思い切って売却や賃貸活用を検討することも選択肢です。

例えば、一時的な賃貸やトランクルームとしての活用など、多様な運用方法があります。無理に所有し続けるのではなく、現実的な運用を見直すことも、空き家対策のひとつです。

空き家の売却や活用でお困りの方は、早めに専門家に相談しましょう。早めの行動がトラブル予防の第一歩です。

「住まいの賢者」では、司法書士法人と連携し、不動産売却をサポートしています。土地の価格調査や相続登記にも対応しているため、空き家の売却を検討している場合はお気軽に無料相談をご利用ください。

まとめ:空き家は空き巣に狙われやすい!対策を怠らないことが重要

空き家は、放置しているだけで空き巣の格好の的になります。

しかし、適切な対策を講じることで、空き巣のリスクは大きく減らせます。「誰かが見ている」「侵入が難しい」と感じさせる工夫が防犯の鍵です。

とはいえ、防犯対策には手間も費用もかかり続けてしまいます。将来的な管理やコストを見据えれば、根本的な解決策として空き家を売却することも視野に入れるとよいでしょう。

「いずれ使うかも」と先延ばしにするより、今こそ前向きに売却を検討するタイミングといえます。

放置せずに継続的な対策、もしくは抜本的な解決としての売却を考え、安心安全な空き家管理を実現しましょう。

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この記事の執筆者

杉田 悟(すぎた さとる)

杉田 悟(すぎた さとる)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/管理業務主任者/競売不動産取引主任士

長年の実務経験を持ち、特に相続や不動産登記に関する専門性が高い。一般の方にも分かりやすく、正確な情報提供をモットーとしている。

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