空き家の整理に悩む人へ。手順・費用・業者選びを徹底解説

空き家の整理に悩む人へ。手順・費用・業者選びを徹底解説
執筆者: 杉田悟

はじめに

実家の空き家を相続し、遠方で長年放置してきた荷物を整理しなければ……と悩んでいませんか?

空き家の整理は想像以上に手間がかかり、何から始めていいかわからないという声も多く聞かれます。

この記事では、空き家整理をスムーズに進めるための計画の立て方から、自力か業者依頼の判断基準、費用相場、補助金制度の活用法まで詳しく解説します。

空き家の整理へのプレッシャーを少しでも減らし、心と身体の負担を軽くするために、ぜひ参考にしてください。

第1章 空き家の整理はなぜ必要?

空き家の整理をつい後回しにしている方は多いのではないでしょうか。時間がとれない、気持ちが追いつかないなど、その理由は人それぞれだと思います。

しかし、空き家を放置し続けることにはさまざまなリスクが伴うことをご存知でしょうか。

この章では、空き家の整理が必要とされる理由とそのメリットについて解説します。

1-1 空き家の整理が必要である2つの理由

空き家を手に入れたものの、すぐ中を整理する気持ちにはなれないかもしれません。だからといって、空き家を長期間そのままの状態にしておくのは避けましょう

空き家の整理がなぜ必要なのか、それには次の2つの理由があります。

  • 空き家を放置することで生じるリスクが大きい
  • 早く整理することで得られるメリットが多い

まず1つ目の理由に関して、空き家を放置することによるリスクには以下が挙げられます。

  • 建物の老朽化
  • 雑草・害虫の発生による近隣とのトラブル
  • 不審者の侵入
  • 設備の破損によって近隣へ被害を出した場合の管理責任
  • 固定資産税の負担

これらのリスクを避けるためには、いち早く空き家の整理に着手するのが肝要です。

一方で、早く整理することによって得られるメリットも多くあります。

  • 早期に売却や賃貸への活用が可能になり、資産として生かす道が開ける
  • 相続人の間での揉め事を減らす
  • 自分の心の整理にもつながる

空き家を整理するのは簡単なことではありませんが、リスクやメリットの観点から言えば、早めに進めて損はありません。

1-2 空き家を整理するには自力か業者に頼むかの2つ

空き家の整理には、自力で行う方法と業者に依頼する方法の2つがあります。

自力でする場合、業者に依頼するのに比べて費用を抑えられるメリットがある一方で、作業量や手間が大きく、時間もかかることが難点です。特に、遠方に住んでいる方や高齢の方にとっては負担が大きいでしょう。

一方、専門業者に依頼すれば、スムーズかつ安全に整理が進み、短期間で完了することも可能です。費用はかかりますが、その分心身の負担を軽減できるという点において業者依頼を検討する価値は十分にあります。

しかし費用の問題だけでなく、信頼できる業者を選べるかどうかも重要なポイントです。悪質な業者に依頼すれば、その分時間も精神的負担も大きくなるリスクがあります。

第2章 自力で空き家を整理する流れ

空き家は自分の手で整理したい、という方も多いのではないでしょうか。

この章では、自力で空き家整理を行う場合の基本的な流れを順番に解説します。

STEP① 空き家の状況確認

最初に行うべきは、空き家の状態を把握することです。

特に、以下の項目をチェックすると良いでしょう。

  • 建物の傷み具合
  • 残された荷物の量
  • 電気・ガス・水道の使用状況

この段階で、必要に応じて写真を撮影して記録を残しておくと、今後の活用や売却時にも役立ちます。

また、整理に取りかかる前に、近隣へのあいさつを済ませておきましょう。普段は人気がない空き家に出入りするので、近隣住民へ不必要に心配を与えないようにするためです。

STEP② 必要な書類や貴重品の回収

大がかりな整理作業に入る前に、重要書類や貴重品の有無をチェックしましょう。

失くすと困るものは真っ先に取り出して、安全な場所へ保管します。特に以下のものは必ず確保しておきましょう。

  • 通帳
  • 印鑑
  • 保険証券
  • 土地の権利書 など

また、思い出の品なども含め、廃棄する前に家族で共有・確認しておくことも大切です。大切なものは誤って処分しないよう注意しましょう。

STEP③ 処分品・保管品の仕分け

続いて、家の中にある荷物を「捨てる」「保管する」「人に譲る」などのカテゴリに分けていきます。

この仕分け作業は最も時間がかかる工程のひとつです。家族や親族と相談しながら進めると、後々のトラブルを避けられます。

迷った場合は一時的に「保留」ボックスを作り、後で検討するのも一つの方法です。

STEP④ 不用品の処分

仕分けが終わったら、不用品の処分に移ります。

大型家具や家電は、自治体の粗大ごみ回収サービスやリサイクル業者の利用が一般的です。地域によっては収集日やルールが異なるため、必ず事前に確認しておきましょう。

なお、以下の家電は家電リサイクル法の対象になるので、粗大ごみとして回収されません。

  • 冷蔵庫・冷凍庫
  • テレビ(ブラウン管・プラズマ・液晶)
  • エアコン
  • 洗濯機・衣類乾燥機

購入した家電量販店で引き取ってもらうか、どこで購入したかわからない場合は自治体に連絡して指定された場所に持っていきます。また、リサイクル料金と収集・運搬料金が必要になることにも注意しましょう。

購入したばかりの新しい家具・家電があるなら、リサイクルショップやフリマアプリで売却して処分費を抑える方法もあります。

STEP⑤ 掃除

荷物の処分が終わったら、最後に掃除しましょう。ホコリやカビ、害虫の死骸などがあることも多いため、マスクや手袋を着用して作業するのがおすすめです。

キッチンやトイレ、お風呂などの水回りは特に重点的に掃除し、売却・賃貸・解体に備えた状態に整えることが大切です。

2-1 自力で空き家整理する場合にかかる費用

自力で空き家を整理する場合でも、一定の費用はかかります。

主に必要になるのは以下の費用です。

  • 交通費・宿泊費
  • ゴミ処分費用
  • 掃除道具の購入費
  • クリーニング用品
  • 粗大ゴミ回収費

遠方の場合は、整理のために休暇を取得したことによる損失も含まれるかもしれません。

自力で整理する場合の費用は、一般的には数万円〜10万円前後を見積もっておくと安心です。しかし、荷物の量や処分方法によっても多少増減します。

業者に頼むより安いけれど、時間と体力はかかるという点を念頭に置いて進めましょう。

第3章 専門業者に空き家整理を依頼するときの注意点

空き家の整理をスムーズに終わらせたい、体力や時間に不安があるという方には、専門業者への依頼がおすすめです。

この章では、依頼する際の判断基準や費用相場、補助金の活用、そして信頼できる業者の見極め方について詳しく解説します。

3-1 業者に依頼するタイミングと判断基準

業者への依頼を検討するタイミングは、大きく分けて次の5つです。

  • 空き家を相続した直後
  • 売却・賃貸に出す前
  • 管理が難しくなった時
  • 補助金や税制を利用する前
  • 心理的に負担を感じたとき

早めに動けるのなら、相続した直後に依頼するのが一番良いタイミングです。

業者に依頼する判断基準としては「身体的・心理的負担が大きいと感じるかどうか」です。整理する量が多くても、気力・体力と時間があればコツコツ進めていけば終わるでしょう。しかし少しでも負担に感じるならば、早めに業者に依頼して進めた方が心理的な負担が少なくなるためおすすめです。

3-2 業者に依頼する場合の費用相場

業者依頼の費用は、間取りや荷物の量によって大きく異なります。

目安としては以下の通りです。

費用目安
1LDK約5万円~約20万円
2LDK約9万円~約30万円
3LDK約15万円~約50万円
4LDK約20万円~約60万円

この他に、物置の解体・特殊清掃・運搬費などが加算されることもあります。
また、地域によっても多少相場が異なります。

3-2-1 空き家整理に使える補助金・助成制度

自治体によっては、空き家整理にかかる費用の一部を補助してくれる制度があります。

たとえば、大阪府豊能町では「家財道具等処分補助金」として家財処分に要する費用(消費税を除く)の3分の2以内の額(最大10万円)を受け取れます(2025年8月現在)。

参考:豊能町空き家バンク活用促進事業「家財道具等処分補助金」のお知らせ/大阪府豊能町ホームページ

ただし、この補助金は空き家バンクに登録する空き家が対象です。他の自治体でも同様の補助金を設けている例はありますが、空き家バンクの登録に係るケースが多くみられます。

補助金は業者依頼の費用にも充てられるため、空き家が所在している自治体にも補助金制度がないか確認してみましょう。

3-3 依頼する業者の見極め方

業者選びで失敗しないためには、複数社から相見積もりを取ることが大切です。
金額だけでなく、対応の丁寧さや見積内容の詳細までしっかり比較しましょう。

確認すべきポイントは以下の通りです。

  • 一般廃棄物処理業などの許可の有無
  • 空き家整理の実績数
  • 買取サービスの有無(価値ある物の査定)
  • 追加料金が発生しない保証の有無

信頼できる業者に依頼することで、安心して空き家整理を任せられます。

4章 整理後の空き家、どう活用する?活用法3選

空き家の整理が完了した後は、この家をどう活用するか検討する段階に入ります。

それぞれにメリット・デメリットがあるため、状況や目的に合わせた判断が必要です。

ここでは、代表的な3つの活用法をご紹介します。

4-1 売却

空き家を売却することで、まとまった資金を得られるだけでなく、維持管理する責任がなくなるという大きなメリットがあります。

売却するには次の2つの方法がありますが、どちらもメリットとデメリットがあるため、自分の状況に応じて選びましょう。

  • 地元の不動産会社に相談する
  • 空き家バンクに登録する

不動産会社を通じて売却する場合は、適正に近い価格で比較的スピーディに売却まで進められます。また、売買に関する手続きを任せられるのも魅力です。

しかし、仲介手数料などの費用が必要になる点には注意しなければなりません。なお、仲介手数料の目安は売却価格×3%+6万円+消費税です。つまり仮に1,000万円で売却できたとすると、そのうち40万円弱は仲介手数料として支払う必要があるということを知っておきましょう。

一方、空き家バンクは無料で登録でき、手数料などは基本的に不要です。

しかし運営側で特に宣伝などはしないため、売却に時間がかかるというデメリットがあります。また、自分で買い手と交渉しなければならず、契約や登記は専門家を探して依頼しなければなりません。

空き家の売却に関してお困りごとがある場合は、住まいの賢者でも承っております。相続登記から売却までワンストップで支援可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

その他、不動産会社に直接買取してもらう方法や、不動産マッチングサイトを利用して売却する方法、友人や知人に譲渡する方法もあります。

4-2 賃貸活用

家の所有権を残しつつ定期的な収入を得たいという場合は、賃貸として活用する選択肢もあります。

ただし、築年数が古い家はリフォーム費用が高額になる可能性があります。また、賃貸管理に手間がかかるため、管理会社を利用するのが一般的です。

4-3 解体して更地化

空き家の再活用が難しい、倒壊の恐れがあるなどの場合は、解体して更地にするのも一つの方法です。解体費用はかかりますが、自治体によっては補助金が使える可能性があります。

思い切って家屋を解体することで、土地を活用・売却しやすくなる面があるのも確かです。解体の際には、その後の土地活用についても視野に入れた上で計画を立てると良いでしょう。

まとめ:空き家整理は放置せず早めに行うのが得策

空き家の整理は、精神的にも体力的にも負担が大きい作業です。しかし、放置することでリスクは増え、後から余計な費用やトラブルを招くことになりかねません。

この記事で紹介した整理までのステップや業者に依頼する判断基準などを参考に、無理のない計画で早めに進めていくことが大切です。

迷いなく動き出すことで、将来の安心にもつながります。あなたにとってベストな方法で、空き家整理を前向きに進めていきましょう。

不動産の無料相談なら
あんしんリーガル

電話相談は9:00〜20:00(土日祝09:00〜18:00)で受付中です。
「不動産のブログをみた」とお問い合わせいただけるとスムーズです。

この記事の執筆者

杉田 悟(すぎた さとる)

杉田 悟(すぎた さとる)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/管理業務主任者/競売不動産取引主任士

長年の実務経験を持ち、特に相続や不動産登記に関する専門性が高い。一般の方にも分かりやすく、正確な情報提供をモットーとしている。

⇒ 執筆者一覧はこちら