空き家売却の6つの注意点|基本的な売却の流れや費用も徹底解説

空き家売却の6つの注意点|基本的な売却の流れや費用も徹底解説
執筆者: 杉田悟

はじめに

相続などで受け取った空き家を、どう扱うべきか悩んでいる方は多いのではないでしょうか。特に売却を考え始めたものの、どんなことに注意すべきか不安を抱える方は少なくないものです。

この記事では、空き家を売却する際に知っておくべき注意点を中心に、売却の基本的な流れや費用の目安などをわかりやすく解説します。

空き家の問題は、誰にとっても身近なものです。初めての空き家売却でも安心して一歩を踏み出せるよう、ぜひ本記事を参考にしてください。

第1章 空き家売却を始める前に確認すべき5つのこと

利用する予定がない空き家をそのまま所持しているよりは、売却する方がメリットが大きいものです。しかし、売却に向けて実際に動き出す前に、注意しておかなければいけないことがあります。

特に次の5つについて、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。

  1. 空き家の名義変更はされているか
  2. 相続人の同意を取れているか(相続不動産が共有名義の場合)
  3. 抵当権は抹消されているか
  4. 土地の境界線ははっきりしているか
  5. 売却前のリフォーム・解体は必要か

まず確認すべきなのは、空き家の所有状況です。名義人が売却者になっていなければ、売却手続きができません。最寄りの法務局で登記簿を請求すれば、所有者や相続人の情報を確認できます。なお、空き家が相続不動産であるならば、相続登記が必要になります。

もし相続した空き家が共有名義になっている場合は、売却には相続人全員の同意が必要になる点にも注意が必要です。

また、空き家に抵当権がついたままになっている場合も売却はできません。抵当権とは、住宅ローンなどの借金を債務者が返済できない場合、債権者(銀行など)が
不動産を競売にかけて優先的に返済を受けられる権利のことです。住宅ローンを完済しても、抵当権は自動的に登記簿から抹消されることはありません。法務局で抵当権抹消登記を申請しなければならず、抹消されているかどうかについても登記簿で確認できます。

空き家の権利関係だけでなく、売却前には土地の境界線についても確認しておきましょう。自分で境界標を確認しておくか、法務局で登記簿と共に地積測量図を取得して確認します。もし地積測量図がない場合は、土地家屋調査士に依頼して調べてもらわなければなりません。

また、売却にあたってリフォームや解体をするかどうかは慎重に考えましょう。リフォームや解体したからといって、必ず希望の額で売却できるわけではないからです。

第2章 空き家売却時に気をつけたい6つの注意点

空き家の売却は、ただ不動産会社に任せればいいというものではありません。

空き家を売却する方法も状況によってさまざまであり、それぞれ以下のようなメリット・デメリットがあります。

売却方法特徴メリットデメリット
不動産会社に仲介を依頼・不動産会社が買主を探し、売買をサポートする。
・最も一般的な方法。
・市場価格に近い価格での売却が期待できる。
・専門家が手続きを代行してくれる。
・買主が見つかりやすい。
・買主が見つかるまでに時間がかかることがある。
・仲介手数料がかかる。
不動産会社に買い取ってもらう・不動産会社が直接買主となり、物件を買い取る方法。・売却がスピーディーに進む。
・仲介手数料が不要。
・物件に不具合があってもそのまま売却できる。
・市場価格より安くなる傾向がある。
個人間で売買する・知人や親族などに直接売却する方法。・仲介手数料が不要。
・価格や条件を自由に設定できる。
・手続きを全て自分で行う必要がある。
・法的トラブルになるリスクが高い。
空き家バンクなどを利用・自治体が運営するサイトに情報を登録し、購入希望者を探す方法。・自治体が関わるため、比較的安心。
・手数料が安価、または不要な場合が多い。
・売却までに非常に時間がかかる。
・登録しても必ず買い手が見つかるとは限らない。

この中では、不動産会社に仲介を依頼して売却するのが多く選ばれている方法です。

この章では、売却時に押さえておきたい6つの重要な注意点を解説します。

2-1 余裕を持ったスケジュールで進める

不動産の売却は、時間に余裕を持って行うのが大切です。不動産会社に任せるとしても、登記申請や抵当権の抹消などで予想外に時間がかかってしまうこともあるためです。

特に相続した空き家を売却する場合、3,000万円の控除特例を利用できる可能性があります。しかしこれは、相続してから3年以内の売却でなければ適用されません。

不動産会社の仲介で売却するなら、契約から決済まで1~2か月が目安と言われています。しかし、買主がなかなか見つからない場合はもっと期間が延びるかもしれません。

売却を検討しているなら、少しでも早く行動しましょう。

2-2 不動産会社は信頼できる会社を選ぶ

空き家の売却を成功させる鍵の1つが、信頼できる不動産会社選びです。物件の特徴や地域性を正しく把握して、適正価格で売却してくれる業者が理想といえます。

空き家は相場よりも安く見積もられることもあるため、必ず複数社に査定を依頼して比較するようにしましょう。

不動産会社を選ぶ時には、査定額だけでなく空き家売却の実績や地域への精通度もチェックすべきポイントです。

2-3 自分で売却相場を把握しておく

売却を不動産会社に任せるとしても、自分で市場相場は必ず確認しておきましょう。

売却相場を把握しておかなければ、複数の不動産会社に査定を出しても適正価格がわからなければ判断できないためです。売却価格が高すぎれば売れず、安すぎれば早く売れますが損になります。

相場を確認するには、まずSUUMOやアットホームなどの不動産ポータルサイトで同じ地域・間取り・築年数の物件の売り出し価格を確認します。次に国土交通省の不動産情報ライブラリで、実際の取引事例から成約価格も把握しておくとおおよその相場をつかめます。

参考:不動産情報ライブラリ/国土交通省

2-4 不動産売買契約書は必ず確認する

不動産売買契約書は仲介した不動産会社が用意します。契約を交わす前に買主・売主双方で契約書の案を確認し、不備や納得いかない点があれば修正を依頼します。

案文がまとまったら、宅地建物取引士が重要事項説明を行い、双方が内容を確認して納得したうえで売買契約書に署名・押印するのが一連の流れです。

特に、修理責任の所在は注意して確認しましょう。古い空き家の場合、売却の前に確認していても雨漏り・シロアリ・耐震不足などの問題が潜んでいることがあります。売主がどこまで責任を持つのか確認しておかなければ、後から修理費を請求されるリスクがあるためです。

また、契約解除の条件などの特約条項を見落とすと、売主に不利な条件で契約が成立する可能性もあります。

契約後に不利な立場に立たされないためにも、必ず確認しておきましょう。

なお、個人間で取引する場合も不動産売買契約書を用意する必要があります。どちらが用意するかは法的に決められていませんが、売主側で作成して双方確認することが一般的です。

2-5 売却益が出たら確定申告を必ず行う

売却した際に、取得費や仲介手数料などの諸費用を引いても売却利益が出た場合は、取引の翌年に必ず確定申告を行いましょう。

控除や特例によって課税対象から外れても、確定申告は必要です。控除や特例によっては、確定申告することが適用条件の一つになっている場合もあります。

相続した空き家の売却で確定申告が必要かどうか、さらに詳しく知りたい場合はこちらの記事も参考にしてください。

2-6 売却にも費用はかかると知っておく

収益が出るかどうかに目が向きがちですが、売却の際には支払うべき費用があることも知っておきましょう。

空き家の売却にかかる費用については、次の章で詳しく解説します。

第3章 空き家売却にかかる費用

空き家を売却する際には、一定の費用がかかることも忘れてはいけません。想定外の出費に驚かないよう、事前に費用の内訳を把握しておくことが大切です。

売却にかかる費用は、主に以下の4つです。

仲介手数料売却価格の 3%+6万円(上限)+消費税
印紙代売買契約書に貼付する収入印紙。1,000円〜3万円程度
抵当権抹消登記費用住宅ローンなどの抵当権が残っている場合に必要。
不動産の個数あたり1,000円の登録免許税+司法書士報酬1~2万円(登記手続きを依頼する場合)
譲渡所得税売却益が出た場合に課税される。
特別控除(3,000万円特別控除など)の有無を要確認

これらの費用は、売却価格から差し引かれる形になります。かかる費用や税金をシミュレーションし、手取り額を正確に把握しておきましょう。

相続した空き家を売却するときの税金をシミュレーションする際には、こちらの記事も参考にしてください。

第4章 空き家売却の基本的な流れ

空き家を売却するまでには、いくつかのステップがあります。

この章では、不動産会社に売却を依頼する場合の基本的な流れを紹介します。あらかじめ流れを理解しておけば、不安が少なくなるはずです。

STEP① 不動産会社へ査定を依頼する

まずは、所有している空き家の価格がどの程度なのか、不動産会社に査定を依頼しましょう。

査定は無料で請け負う会社がほとんどです。物件の立地や建物の状態、周辺環境などをもとに査定価格を算出します。査定額に納得できるかはもちろん、営業担当の対応や提案内容も検討材料にしましょう。

また、複数社に査定依頼することで、より客観的に物件の価値を把握できます。

STEP② 仲介か買取かを選択する

査定結果をもとに、仲介か買取のどちらにするかを選びます。一般に売却する仲介は高値で売れる可能性がある一方、時間がかかる可能性があります。

一方、不動産会社へ売却する買取ではすぐに現金化できる代わりに、市場価格より売却価格は安い傾向です。

それぞれにメリット・デメリットがあるため、状況や目的に合わせて選ぶことが大切です。売却スピードを優先するのか、金額を重視するのかを冷静に判断しましょう。

STEP③ 媒介契約し販売活動する

仲介を選んだ場合は、不動産会社と媒介契約を結び、販売活動が始まります。広告掲載や内見対応、買主との交渉などは不動産会社が代行します。

この間、売主側は内見に備えて片付けや清掃を行うことも重要な準備です。見た目の印象が良くなることで、売却が成功する可能性が高まります。

スムーズなやりとりのためにも、不動産会社との連絡は密にしておくことが大切です。不安な点や疑問は積極的に尋ねましょう。

STEP④ 売買契約を交わし、空き家を引き渡す

買主が決まったら、売買契約を締結して引き渡しの準備を進めます。このタイミングで必要になるのは、所有権移転登記の手続きや鍵の引き渡し、税金の精算などです。

売買契約を交わす前に、契約内容はよく確認しておきましょう。

ここまで一連の流れを説明しましたが、空き家の売却に不安な点がある場合は、住まいの賢者までご相談ください。
住まいの賢者では、登記手続きから税務処理までワンストップでの支援が可能です。

第5章 空き家を売却する以外の選択肢も知っておこう

空き家には売却以外にも活用方法があります。状況によっては、売却よりも別の選択肢のほうがメリットが大きい場合もあります。

この章では、売却以外の活用法を紹介します。

5-1 賃貸に出す

空き家を賃貸物件として貸し出すのも1つの活用方法です。自分で住む予定がなくても、家賃収入を得ながら所有できるのがメリットです。

管理の手間が気になる場合は、賃貸管理会社に委託することで手間を大幅に軽減できます。空き家の状態や地域のニーズによっては、有効な選択肢といえるでしょう。

ただし、空き家が地方にあって立地が悪い場合は、賃貸の需要が少なく入居者を募集しても利用されないケースもあります。検討する前に、周囲の環境やニーズのリサーチが必要です。

5-2 解体して更地にする

老朽化が進んでいる場合は、建物を解体して更地にするという手段も考えられます。更地にすることで、買主の選択肢が広がり売却しやすくなる場合もあります。

また、更地にしてから駐車場やトランクルーム、太陽光パネル設置など別の用途に転用することも可能です。

転用する場合にも、地域のニーズを踏まえた上での検討が必要です。また、太陽光パネル設置は日当たりが重要なので、周囲に建物や木々が多い場合は向いていません。

5-3 【注意】「とりあえず保有しておく」はリスク大

空き家に何も対策せず放置することは、将来の大きなリスクにつながります。老朽化による倒壊、草木の繁茂、不法侵入など、放置期間が長くなるほどそのリスクは高まります。

さらに、固定資産税の負担が続くだけでなく、特定空き家に指定されると税優遇が打ち切られることもあります。

空き家の放置によって固定資産税の負担が大きくなることについては、こちらの記事も参考にしてください。

空き家の売却には注意すべき点が多いものの、活用方法として多く選ばれています。決定を先延ばしして保有し続けるよりも、少しでも早く売却に踏み切った方が資産価値を保ったまま譲渡できます。

所有する空き家の売却に悩んだら、住まいの賢者までご相談ください。

まとめ:空き家売却は準備と注意点の把握が重要

空き家の売却を成功させるには、準備が何よりも大切です。登記簿の確認から始まり、建物の状態チェックや信頼できる不動産会社選びまで丁寧に進めていきましょう。

また、空き家の活用方法は売却だけではありません。賃貸などの収益物件にしたり、自分自身で住んだりするというのも選択肢になります。

売却も含め、空き家を放置せずにあなたの状況に合った方法で活用していきましょう。

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この記事の執筆者

杉田 悟(すぎた さとる)

杉田 悟(すぎた さとる)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/管理業務主任者/競売不動産取引主任士

長年の実務経験を持ち、特に相続や不動産登記に関する専門性が高い。一般の方にも分かりやすく、正確な情報提供をモットーとしている。

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