空き家を寄付したい人必見!国や自治体への寄付方法と注意点を解説

空き家を寄付したい人必見!国や自治体への寄付方法と注意点を解説
執筆者: 杉田悟

目次

はじめに

少子高齢化や人口減少の影響により、日本各地で空き家が増加しています。

空き家を持て余している方の中には、税金や管理の負担を減らすために手放したいと考える方も多いでしょう。

しかし、売却が難しい物件も多く、どうすればよいか迷うケースもあります。そんな中、注目を集めているのが「空き家の寄付」という選択肢です。

本記事では、空き家の寄付方法や注意点、手続きの流れを解説します。

第1章 空き家は寄付する選択肢がある

空き家問題は年々深刻化しており、社会問題として注目されています。

特に地方では、空き家の放置により防犯や景観、衛生面での課題が生じています。また、放置された空き家は火災や倒壊のリスクも高く、周囲の住民にとっても大きな懸念材料です。

多くの方が「売れないから仕方ない」と思いがちですが、まずは不動産会社に査定を依頼するとよいでしょう。思わぬ高値がつく可能性もありますし、リフォームやリノベーションで価値が復活することも珍しくありません。

寄付に踏み切る前に、まずは専門家に相談して現状の価値を把握しましょう。

1-1 空き家の寄付が注目されている理由

空き家の寄付は、税負担の軽減や管理責任からの解放を目的に選ばれることが多いでしょう。固定資産税や草木の管理費用、倒壊リスクなどの不安から解放されることで、精神面・経済面の両面で負担が軽減されます。

また、公共目的に使われる可能性があるため、不動産を社会に還元する地域貢献としての意義もあります。相続で取得したものの使い道がない物件については、寄付は有効な解決策となるでしょう。

1-2 空き家を寄付できる相手は?

空き家の寄付先として考えられるのは、以下の相手です。

  • 個人や親族
  • NPO法人や公益団体
  • 地方自治体

それぞれの寄付先にはメリットとデメリットがあります。

寄付先メリットデメリット
地方自治体活用される可能性が高い受け取りに厳しい基準がある
NPO法人や公益団体地域活動に生かしてくれる可能性がある団体によっては受け入れ体制が整っていない
個人や親族手続きが比較的簡単贈与税の扱いなど注意点がある
買い手がつかない家でも引き取ってくれる受け取りに厳しい基準がある

国への寄付は「国庫帰属制度」と呼ばれ、無償で国に財産を譲渡する手続きで、財務省を通じて申請します。

一定の条件を満たせば、買い手がつかない空き家でも受け入れてもらえる可能性がありますが、建物を解体して更地にするなど要件がある場合も多く、事前の確認と準備が必要です。

自分のケースに応じて、最も適した寄付先を選ぶことが求められます。

第2章 空き家を寄付する方法

空き家を寄付するには、方法によって特徴や相談先が異なるため、目的や状況に応じて選ぶ必要があります。どの方法を選ぶにしても、まずは現地の調査と法的な確認が不可欠です。

適切な方法を選ばなければ、手間やコストばかりが増えるリスクもあるため、早い段階で専門家に相談して進めることが得策でしょう。

では、空き家を寄付する方法を解説します。

2-1 家族・第三者に無償譲渡する

最もシンプルな寄付方法は、家族や親しい第三者への無償譲渡です。

親族間での財産移転として扱われるため、贈与契約書の作成や登記手続きが必要になります。ただし、贈与税がかかるケースもあるため、税理士や司法書士へ相談しながら進めるとよいでしょう。

特に、複数の相続人がいる場合や、価値のある土地・建物を含む場合には、今後の相続トラブルを防ぐ意味でも慎重な手続きが求められます。

また、無償とはいえ受け取る側にとっては固定資産税や維持管理の責任が発生するため、必ず相手の意思を確認したうえで進めましょう。

2-2 空き家バンクを利用する

空き家バンクとは、全国の市区町村が運営する、空き家や空き地のマッチングシステムのことです。

多くの自治体が空き家バンク制度を運用しており、空き家を地域活性化に役立てています。
登録後は購入希望者とのマッチングが行われ、寄付ではなく低額での譲渡が実現する可能性もあります。

ただし、すべての物件が登録できるわけではなく、物件の状態や立地に基づいて登録可否が判断されるため、事前の確認が必要です。

2-3 自治体に寄付する

公共施設としての活用や防災用地など、用途や地域ニーズに合致している場合は自治体に直接寄付することができます。

ただし、予算や人員の問題から、すべての自治体が空き家の寄付を受け入れているわけではありません。管理コストや条件によっては断られることもあるため、事前の確認が必須です。

また、寄付の相談をする際は、物件の現状写真や土地の図面、インフラ状況などの資料を用意しておくとスムーズでしょう。

2-4 相続土地国庫帰属制度を利用する

2023年から開始した「相続土地国庫帰属制度」は、一定の要件を満たした場合に、相続した土地を国に引き取ってもらえる制度です。

ただし、建物がある場合は利用不可のため、事前に更地化が必要です。

また、対象となる土地は、境界が明確で他人の権利が設定されていないことが求められます。申請手数料や負担金の支払いも発生するので、費用面の準備も必要です。

第3章 寄付しやすい空き家の特徴は?

注意点として、どんな空き家でも簡単に寄付できるわけではありません。

具体的には、管理がしやすくトラブルが起きにくい状態である空き家が優先される傾向があります。

では、寄付しやすい空き家の特徴を解説します。当てはまる項目が多い空き家であれば、売却も視野に入れて動くとよいでしょう。

3-1 更地化済みで境界が明確である

建物が取り壊されており、境界が確定している土地は、受け取り手にとって扱いやすいため歓迎されやすい傾向があります。

特に、国や自治体が受け取る場合、境界トラブルのない更地は寄付の条件として重視されます。逆に、建物がある場合は解体費用がかかり、受け取り側の負担になることから好まれにくいでしょう。

3-2 接道義務を満たしている

建築基準法では、土地には接道義務が定められています。

幅員4m以上の道路に2m以上接していなければ、建物の建築はできないため、満たさない場合は活用価値が大幅に下がってしまいます。

再建築不可物件として扱われると、売却はもちろん寄付も困難となりかねません。接道条件を満たしているかどうかは、法務局の図面や自治体の都市計画課などで確認できます。

寄付を考えるうえで、接道条件のクリアは最低限の要件といえるでしょう。

3-3 地元のニーズに合致している

農地として転用可能だったり、地元事業者が倉庫や作業場として使える場合など、地域のニーズにマッチした物件は寄付が受け入れられやすくなります。

例えば、高齢化が進む地域では、高齢者向け施設やコミュニティスペースとしての活用が検討されることもあります。

空き家の現状だけではなく、将来の利活用計画まで視野に入れて提案できると、受け取り先との交渉もスムーズに進むでしょう。

3-4 生活インフラが整っている

水道・電気・ガスなどのインフラが使える状態であれば、すぐに活用できるため、受け取り手の負担が少なくなります。

逆に、インフラ整備が必要な土地は敬遠されがちです。特に、山間部や離島などでは、水道管の引き込みが困難だったり、インフラ整備に多額の費用がかかることもあります。

生活インフラの整備状況は非常に重要となるため、現地のインフラ状況を調査し、必要に応じて行政への支援相談を行うことも選択肢です。

3-5 商業施設や駅が徒歩圏にある

利便性の高さも大きなアピールポイントといえるでしょう。

買い物や交通の便が良い場所にある空き家は、自治体や第三者にとっても利用価値が高いと判断されます。例えば、駅まで徒歩10分圏内だったり、スーパーや病院が近くにあると、居住目的での活用がしやすいため、移住者や若年層からの需要が高まります。

周辺施設のリストアップや地図の準備をしておくと、プレゼン資料としても有効です。

3-6 観光地・山間リゾート地にある

観光資源の近くにある空き家は、宿泊施設や別荘、移住促進住宅としての活用が見込まれます。近年では、インバウンド需要を見据えた再活用が期待されています。

観光地では、古民家再生プロジェクトやゲストハウスへの改装を支援する制度が整っていることも多く、行政との連携が進めやすい点も大きなメリットといえるでしょう。

地域の魅力と物件のポテンシャルを結びつけた提案ができれば、寄付先とのマッチングも成功しやすくなります。

第4章 寄付できない可能性がある空き家

一方で、どんな空き家でも寄付できるわけではありません。

所有者の意思だけで完結するものではなく、受け取る側が「利活用できるか」「管理負担が大きすぎないか」などの観点で厳しく審査するためです。

寄付先が明確な基準や条件を設けている場合も多いため、自分の物件がその条件に合致しているか、事前に確認しておきましょう。

では、寄付できない可能性がある空き家を解説します。

4-1 接道義務を満たさない土地である

接道義務を満たさない土地は建物の建築ができず、活用が極めて限定されるため、受け取り先が見つかりにくくなります。

たとえ土地の面積や立地が良くとも、法律上の制約があるだけで利活用の幅が狭まってしまい、寄付先にとってはリスクの高い資産と判断されがちです。

改善するには、隣地の所有者と交渉して通路部分の土地を購入するなどの対策が必要ですが、簡単には実現しないことが現実です。

接道条件の有無は、不動産価値に直結するため、事前確認が欠かせません。

4-2 土地の境界トラブルがある

隣地との境界が不明確である土地は、法的リスクが高いため寄付先から避けられがちです。

境界トラブルがあると、受け取り手側でその解決に時間や費用をかけなければならず、受け入れに消極的になるのは当然といえるでしょう。また、測量費用や境界確定のための立ち会いや協議などが必要になるため、寄付のハードルが一気に上がります。

寄付を検討する際は、事前に土地家屋調査士による測量や法務局での確認を行い、境界問題をクリアにしておくことが推奨されます。

4-3 災害リスク地域の建物である

土砂災害特別警戒区域や津波浸水想定区域などにある建物は、安全性の観点から寄付を断られる可能性があります。

自然災害による被害が想定される地域では、受け取り後の管理責任や修繕費用が増大するおそれがあるため、自治体や法人は受け取りに慎重です。

災害リスクのある空き家を寄付したい場合は、ハザードマップを活用してリスクを把握し、建物の解体や土地の転用などを検討することで、寄付先の候補と交渉しましょう。

4-4 相続登記が未了である

2024年4月から相続登記が義務化されており、登記の名義人になっていないと売却も寄付もできません。

登記が完了していない不動産は、第三者に対して所有権を証明できないため、寄付手続きを進めることができないため注意しましょう。

よって、寄付を考えている場合は、名義を現所有者に変更する必要があります。

また、複数の相続人がいるケースでは合意形成が難航する可能性もあるため、司法書士に依頼して手続きを進めるなど早めの対応が大切です。

第5章 空き家を寄付する際の手続きの流れ

空き家の寄付には複雑な手続きが伴います。寄付先によって必要書類や条件が異なるため、スムーズに進めるためには事前準備が欠かせません。

ここからは、寄付にあたっての基本的な流れを4つのステップに分けて紹介します。専門家への相談も視野に入れて、慎重に進めましょう。

STEP① 物件調査をする

まずは、対象の空き家や土地が寄付に適しているかを調査します。

建物の老朽化や傾き、雨漏りといった物理的状態のほか、建築制限などの法的な制約についても確認が必要です。境界が未確定、接道義務違反、災害リスクなどがあれば、寄付先に断られる可能性が高くなります。

自治体の都市計画課や不動産会社などに相談して、正確な状況を把握しておきましょう。

STEP② 受け取り先の選定と交渉をする

次に、空き家の受け取り先を選定し、受け取り条件について交渉します。

候補となるのは自治体やNPO法人、空き家バンクなどです。相手が何を重視しているかを調べ、事前に物件の写真や図面を提示して提案すると効果的でしょう。

寄付を受ける側も検討に時間がかかるため、早めにコンタクトを取ることを推奨します。

STEP③ 書類作成をする

空き家を寄付するには、贈与契約書や不動産登記申請書、委任状、印鑑証明書など、さまざまな書類が必要になります。

契約書には、寄付の内容、物件の詳細、引き渡し条件などを明記しておきましょう。個人間での寄付であってもトラブルを避けるために、書類の作成は専門家に依頼することを推奨します。

書類不備があると再提出となり、手続きに時間がかかるため、丁寧な準備が求められます。

STEP④ 登記申請・負担金の支払いをする

最後に、法務局に申請して新しい所有者への名義変更を行います。

登記には、必要書類の準備や印紙代などの費用がかかるため、事前に確認しておくと安心です。

また、相手によっては受け取りを証明する書類や同意書が必要になるケースもあるため、手続きの流れを事前に整理し、ミスや遅れのないよう注意しましょう。

第6章 相続土地国庫帰属制度を利用する際の手続きの流れ

空き家を国に寄付する場合は、相続土地国庫帰属制度を利用します。

相続土地国庫帰属制度とは、管理が困難な土地や空き家の処分に困った相続人が、一定の条件を満たすことで土地を国に引き取ってもらえる仕組みです。

では、相続土地国庫帰属制度を利用する際の流れを解説します。

STEP① 相続登記をして名義を自分に変更する

相続土地国庫帰属制度を使うための条件は、自分がその土地の登記名義人であることです。

2024年4月から相続登記は義務化され、未登記のままでは売却も寄付もできなくなりました。必ず相続登記を行い、自分名義に変更しましょう。

また、相続登記には戸籍謄本や遺産分割協議書などの書類が必要で、申請には数週間かかることもあります。まずは法務局や専門家に相談して、名義変更を確実に済ませましょう。

STEP② 申請書類を準備して法務局へ提出する

名義変更が済んだら、国庫帰属の申請を行います。

申請先は、その土地を管轄する法務局です。書類の内容に不備があると審査が進まず、受理されないこともあるため、正確に準備することが大切です。

また、土地の形状や権利関係によっては追加資料が求められる場合もあるので、不明点があれば早めに問い合わせておきましょう。

STEP③ 法務局による審査を受ける

書類提出後は、法務局による審査が行われ、国が引き取っても問題のない状態かどうかを判断します。

具体的には以下の項目がチェックされます。

  • 建物が存在せず更地であること
  • 境界トラブルがないこと
  • 土壌汚染や埋設物がないこと
  • 他人の権利が設定されていないこと

審査は数週間から数か月かかる場合があるため、余裕を持ってスケジュールを組みましょう。

STEP④ 承認通知が届いたら負担金を納付する

審査を通過すると、法務局から承認通知書が届きます。

通知を受け取った日から30日以内に、定められた金額の負担金を支払いましょう。金額は原則として一筆あたり20万円です。納付が確認されると、土地の国庫帰属が成立します。

期限を過ぎると承認が無効となり、最初から手続きをやり直すことになるため、通知が届いたら速やかに納付の準備を進めましょう。

STEP⑤ 所有権が国に移転する

負担金の納付が完了すると、土地の所有権が正式に国に移転され、その土地に関する税金や管理責任は国が負うことになります。

ただし、手続きが完了するまでは、草刈りや近隣トラブルへの対応などの責任は相続人に残ります。負担金の支払いと名義変更が完了するまで、最後まで気を抜かず、必要な管理を継続するようにしましょう。

まとめ:空き家は寄付や譲渡で前向きに手放せる時代!

空き家の管理や税金に悩んでいる方にとって、寄付は現実的な解決手段です。

たとえ、売却が難しくても、条件次第で自治体やNPOなどが受け入れてくれるケースは珍しくありません。

専門家に相談すれば、登記や税務の面でも安心して手続きを進められるため、早めに相談するとよいでしょう。

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この記事の執筆者

杉田 悟(すぎた さとる)

杉田 悟(すぎた さとる)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/管理業務主任者/競売不動産取引主任士

長年の実務経験を持ち、特に相続や不動産登記に関する専門性が高い。一般の方にも分かりやすく、正確な情報提供をモットーとしている。

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