目次
はじめに
親から相続した土地や家屋に「抵当権がついていた」──そんなケースは珍しくありません。住宅ローンや事業資金の借入などで、不動産に抵当権を設定しているまま亡くなってしまうと、その不動産を相続した人も、抵当権付きのまま受け継ぐことになります。
抵当権が残っている不動産は、自由に売却できなかったり、最悪の場合には競売にかけられることもあります。この記事では、不動産の抵当権とは何か、相続した際の注意点と対応方法、そしてトラブルの回避策までを詳しく解説します。
第1章:抵当権とは何か?基礎知識を整理
1-1 抵当権とは?
抵当権とは、金融機関などの債権者が「債務者が返済できなくなったときに不動産を差し押さえて競売にかけることができる権利」です。住宅ローンや事業資金の借入れの際に、担保として土地や建物に設定されるのが一般的です。
1-2 抵当権があるとどうなる?
抵当権が設定されている不動産には、以下のような制約があります。
- 借入れの返済が滞ると競売にかけられる可能性がある
- 担保物件であるため不動産の評価が下がる(抵当権が付いたままの物件を買いたがる人はいない)
- 勝手に売却できない(民法上は問題ないが、普通は金融機関との抵当権設定契約において処分が禁止されている)
1-3 登記簿での確認方法
不動産に抵当権が設定されているかどうかは、「登記簿謄本(全部事項証明書)」で確認できます。謄本は法務局またはオンライン登記情報提供サービスで取得可能です。
抵当権が設定されている場合、権利部(乙区)にその情報が記載されています。
第2章:抵当権付き不動産を相続する場合の注意点
2-1 相続は自動的に発生する
不動産に抵当権が付いていても、相続は被相続人の死亡によって自動的に開始されます。相続人が放置していると、知らない間に抵当権付きの不動産を相続してしまう可能性があります。
2-2 ローンや借金の残りがある可能性
抵当権が残っているということは、ローンや借金が完済されていない可能性があります。残債があるかどうか、金融機関に確認する必要があります。
2-3 相続放棄の検討も必要
抵当権付きの不動産だけでなく、その他の借金などがある場合は、「相続放棄」という選択肢もあります。ただし、相続放棄は「財産全体」の放棄となり、不要な不動産だけを放棄することはできません。
相続放棄には、相続開始(被相続人の死亡)を知った日から3か月以内という期限があるため、早急な判断が必要です。
第3章:抵当権付き不動産を相続した後の選択肢
抵当権付き不動産を相続した場合、次のような対応が考えられます。
選択肢①:借入を引き継ぎ、そのまま使用する
被相続人の借金を相続し、引き続き返済を行うことで、不動産を使用・保持し続けることができます。なお、住宅ローンなどは、相続人の収入・信用状況によっては金融機関と再契約が必要になる場合もあります。
選択肢②:ローン完済後に抵当権抹消登記を行う
相続人が借入を完済すれば、抵当権の効力は消滅しますが、登記簿上から自動で消えるわけではありません。完済後に金融機関の協力を得て「抵当権抹消登記」を申請する必要があります。
選択肢③:不動産を売却してローンを清算する
ローンの支払いが滞っている場合、そのままでは不動産が競売にかけられる可能性があります。任意売却という手段を使えば、金融機関の承諾のもとで競売よりも高値で不動産を処分し、その売却代金を残債の返済に充てられる可能性があります。金融機関との交渉が鍵になります。
選択肢④:相続放棄をする
返済の目途が立たない、他に財産がないといった場合は、相続放棄を選ぶことで借金や抵当権付き不動産を引き継がずに済みます。相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所への申述が必要です。
第4章:抵当権抹消登記の手続きと注意点
4-1 抵当権の登記は自動では消えない
ローンを完済しても、抵当権の登記は法務局で抹消登記を行わない限り残ったままです。そのままでは、売却・贈与・再担保設定などができません。
この場合、金融機関の協力を得て、抵当権の抹消登記を行う必要があります。
4-2 抹消登記の必要書類等
- 登記原因証明情報(弁済証書など、完済を証明する書類)
- 登記識別情報
- 登記申請書
- 収入印紙(登録免許税)
4-3 専門家の関与
登記の手続きには法的な知識が必要です。司法書士に依頼すれば、書類の確認から登記完了までスムーズに進められます。
第5章:抵当権のある相続不動産でよくあるトラブルと対策
5-1 ローンがあると知らずに売却を進めてしまった
買い手が見つかったものの、売買契約の直前に抵当権があることが判明し、契約が白紙になるというケースもあります。事前に登記簿での確認を徹底しましょう。
5-2 金融機関との交渉に戸惑う
借入の引き継ぎや任意売却には、金融機関との綿密な交渉が不可欠です。相続人だけで対応するのは負担が大きいため、専門家のサポートが有効です。
5-3 共同で相続してしまい、足並みが揃わない
兄弟姉妹など複数人で不動産を共同相続した場合、売却には共有者全員の同意が必要になります。話し合いがまとまらず、解決まで長期化するリスクがあります。
なお、売却について共有者全員の合意がまとまりさえすれば、抵当権の抹消登記自体は共有者の一人だけでも手続きすることができます。
まとめ:相続と抵当権の関係は複雑だからこそ、早めの対応を
不動産に抵当権がついているかどうかは、相続人にとって重要なチェックポイントです。「親の家だから安心」と思っていたら、実は多額のローンが残っていたというケースもあります。
抵当権付き不動産を相続した際には、速やかに状況を確認し、
- 借金を引き継ぐのか
- 売却して清算するのか
- 放棄するのか
といった判断を冷静に行うことが大切です。
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