空き家の管理を成年後見人に依頼するメリットは?売却する際のポイント

空き家の管理を成年後見人に依頼するメリットは?売却する際のポイント
執筆者: 杉田悟

はじめに

誰も住まなくなった家は、倒壊や衛生面の問題、放火や不法侵入などのリスクが高まります。そのような物件が増加していることから、日本各地で「空き家問題」が深刻化しています。

空き家問題の対策として注目されている制度が「成年後見制度」です。

成年後見制度によって、認知症や知的障害などにより判断能力が低下した方が所有する空き家の管理や手続きに関与することができます。

本記事では、空き家の管理を成年後見人に依頼する際のポイントと元気なうちにできる空き家対策を解説します。空き家問題は個人や家族だけではなく、地域全体の安全や景観にも関わる社会課題です。早めに対策を行って、空き家を放置しないようにしましょう。

第1章 成年後見制度とは?

近年、高齢化社会の進行に伴って認知症を患う方が増加しており、成年後見制度の利用が増えています。成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などで判断能力が不十分な方を法律的に支援する制度のことです。

法定後見制度を利用することによって、日常生活に必要な範囲を超える財産管理や身上的保護、法的手続きの代行などを依頼できることが可能となります。

したがって、年齢を重ねていくうちに、財産管理や契約行為に不安が生じた場合でも、成年後見制度を利用することで安心して生活を継続できるでしょう。

1-1 成年後見人の役割

成年後見人の役割は、被後見人(支援を受ける方)の財産を適切に管理し、生活を安定させることです。

具体的に、成年後見人は以下の業務を行います。

  • 預貯金や年金の管理
  • 生活費の支払い
  • 医療や介護契約の手続き
  • 不動産の管理(空き家も含む)

例えば、被後見人が高齢や病気などの理由で施設へ入所した場合、それまで住んでいた家が空き家になることがあります。そうした空き家を放置せず、必要に応じて管理することも成年後見人の重要な役割です。

また、被後見人が詐欺被害や不利益な契約を結ばないよう法的に判断することも役割のひとつです。後見人には、定期的な収支報告の提出が義務付けられており、家庭裁判所の監督のもとで厳密に職務を遂行する必要があります。

よって、空き家を含む不動産の管理も、放置せずに適切な対応を取ってくれるでしょう。

1-2 成年後見人から相続人へ引継ぎが発生した場合の対処法

成年被後見人が亡くなると、成年後見人の職務は自動的に終了します。その後の財産や空き家の管理は、相続人へと引き継がれます。

しかし、相続人の間で誰が管理するか揉めるケースや、そもそも誰も管理しないといった事態も珍しくありません。このような場合は、遺産分割協議や遺言書の有無が重要な判断材料となるため、速やかに専門家に相談することが望ましいでしょう。

空き家がそのまま放置されると、地域の防犯や衛生面に悪影響が及ぶため、後見人の任務が終わる段階での対応を計画することが重要です。

1-3 相続人がいない・行方不明の場合はどうなる?

相続人がいない、または行方不明な場合は「相続財産清算人(相続財産管理人)」が家庭裁判所によって選任されます。選任後は、相続財産清算人が財産の調査・清算・処分を行います。

ただし、空き家は適切に管理されるまで時間がかかる可能性があり、劣化や被害が進行することも珍しくありません。

近隣住民とのトラブルを未然に防ぐためにも、このような事態を想定して、被後見人の生前に空き家の処分を行うなど適切な手続きをしておくことが望まれます。

第2章 空き家管理は成年後見人でもできる

成年後見人は、被後見人の財産を守るために、空き家の管理を行うことができます。

ただし、できることには限りがあります。

成年後見人が行えるのは、空き家の価値を保つための「最低限の維持管理」のみです。つまり、大規模な修繕や改築、用途変更などは原則として行えません。

空き家の管理状況によっては、売却や賃貸への転用を検討する可能性も出てきますが、その際は家庭裁判所の許可が必要となります。

2-1 成年後見人ができる空き家の管理内容

以下は、成年後見人がしておくべき空き家の管理内容の例となります。

  • 建物の施錠確認・定期見回り
  • 雨漏り・破損状況の確認
  • 郵便物の回収
  • 草木の除去
  • 必要最低限の修繕

このような作業は、被後見人の財産保全を目的とするもので、空き家の維持を最小限にとどめるために管理されます。

また、防犯や近隣トラブルを防ぐための対策で、管理業者との連携や保険加入、定期報告の導入なども業務の中に含まれます。

2-2 管理費用はどのように払う?

管理費用は原則、被後見人の財産から支出されます。

具体的には、被後見人は以下の管理費用を払う必要があります。

  • 管理委託費用(管理会社などに依頼する場合)
  • 修繕費や設備維持費
  • 税金や公共料金

また、被後見人の資金が尽きた場合、家庭裁判所と相談し、必要に応じて不動産の処分(売却)を検討しなければなりません。その際には別途、家庭裁判所の許可が必要です。

よって、管理費用が予想以上にかさむ場合は、定期的な予算見直しや金融機関との調整も必要になります。特に、長期にわたる空き家の管理は、コスト負担が蓄積されやすいため、将来的な資金計画を早めに立てておくことが望ましいでしょう。

2-3 成年後見人が勝手に空き家を売却することはできない

成年後見人が空き家を売却するには、必ず家庭裁判所の許可が必要となります。

なぜなら、無制限の不動産の処分は、被後見人の生活基盤や資産状況に大きな影響を及ぼし、被後見人の不利益になるケースも多いためです。

たとえ後見人に合理的な理由があっても、本人の意向や裁判所の判断を無視して不動産を勝手に処分することは認められていません。

ただし、以下のケースの場合は、家庭裁判所が売却を許可する可能性があります。

  • 被後見人の生活費が不足している
  • 維持費用が過大であり売却が合理的
  • 被後見人の意思が確認できない(または売却に反対していない)

この条件を調えた上で、家庭裁判所に「不動産売却許可申立書」を提出しなければなりません。また、許可が下りるまでに数週間から数か月かかることもあるため、緊急の対応ができない場合もあります。

売却を視野に入れている場合は、できるだけ早く準備を進めることが重要です。

第3章 成年後見制度以外の空き家管理の選択肢

成年後見制度は有効な手段ですが、すべてのケースに最適とは限りません。

家族の状況や本人の意思、財産の構成などにより、他の制度のほうが柔軟かつ迅速に対応できることもあります。どの制度を選ぶかは、専門家と相談のうえ、被管理者本人と家族が納得のいく形で進めるとよいでしょう。

では、成年後見制度に代わる空き家管理の選択肢を紹介します。

3-1 任意後見制度を利用する

任意後見制度とは、将来の判断能力低下に備えて、あらかじめ信頼できる人と契約を結ぶ制度です。後見人を自分で選ぶことができるため、家族や信頼のおける第三者に空き家管理を委ねることができます。

また、成年後見制度と比べて、契約の柔軟性が高く、空き家の管理だけではなく、売却・賃貸の判断や財産活用にも柔軟に対応可能です。

ただし、以下の条件があるため、早い段階で手続きを進めておかなければなりません。

  • 契約には判断能力が必要
  • 公正証書での作成が必要
  • 発効には家庭裁判所で監督人の選任が必要

契約時にどこまでの権限を与えるかを定めておくことが、トラブルを避ける鍵となります。

3-2 家族信託を使った空き家管理をする

家族信託とは、委託者(本人)が受託者(家族など)に財産の管理・処分権限を託す仕組みのことです。信託契約によって、空き家の名義や管理権限を実質的に別の家族へ移すことができます。

信託銀行に依頼する方法もありますが、司法書士などの専門家と連携して家族間で契約を結ぶ方法が一般的です。

また、家族信託は、遺言や後見制度では難しいとされる自由な財産管理や活用ができる点が強みとなります。

3-3 空き家の売却を検討する

空き家の管理が難しい場合や、将来的な利用予定がない場合は、思い切って売却を検討する方法も有効な選択肢です。

成年後見人が売却を行う場合は、家庭裁判所の許可が必要ですが、任意後見や家族信託では、契約内容によりスムーズな処分が可能になることも珍しくありません。

また、空き家を売却することで、維持管理費や固定資産税の負担を減らし、財産としてのリスクを軽減できる点もメリットです。不動産会社や空き家バンクとの連携も視野に入れると、売却の選択肢が広がるでしょう。

3-4 財産管理契約を結ぶ

財産管理契約とは、本人が元気なうちに、財産や生活の管理を他者に任せる契約のことです。成年後見制度とは異なり、判断能力がある間も契約が有効で、生活の実務的なサポートに特化しています。

例えば、財産管理契約は以下の手続きを依頼することができます。

  • 銀行手続きや公共料金の支払い
  • 日用品や消耗品の買い物
  • 空き家の見回りや管理業務
  • 要介護認定申請の代行
  • 病院や介護施設への入所手続き

財産管理契約は任意後見と併用されることも多く、本人の希望に応じた幅広い対応が可能な点がメリットです。

ただし、法的な強制力や監督機関が存在しないため、信頼関係のある相手と契約することが大前提となります。契約内容はできる限り明文化し、公正証書で残しておくと安心です。

第4章 空き家を放置しないための対処法

空き家の放置は、防犯上のリスクや景観の悪化、倒壊や火災の危険を招きかねません。

放置状態が続くと「特定空き家」に指定される可能性もあり、強制解体などの厳しい措置が取られることがあります。

特定空き家の指定を防ぐためには、できる限り早い段階で空き家の状態を把握し、必要な手続きや管理を実施することが重要です。

では、空き家を放置しないための対処法を解説します。

4-1 地域包括支援センターへ相談する

地域包括支援センターは、高齢者の介護や福祉に関する相談を受け付ける公的機関です。

空き家の所有者が高齢である場合や認知症の疑いがある場合などは、成年後見制度や生活支援についての相談窓口として活用できます。

高齢の家族が空き家を所有していて、管理が行き届いていないと感じたら、まずは地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。

地域包括支援センターは無料で利用でき、必要に応じて関連機関へもスムーズにつなげてくれる点もメリットといえます。

4-2 空き家管理会社に依頼する

空き家管理会社は、定期的な見回りや清掃などを代行してくれる専門業者です。遠方に住んでいて管理が困難な場合や、家族に頼れる人がいない場合は有効な手段でしょう。

具体的には、以下の作業を依頼することができます。

  • 月1回の見回り
  • 写真付き報告書の送付
  • ポストの整理
  • 簡単な清掃や除草

空き家管理会社の費用は月額3,000〜10,000円程度が一般的で、サービス内容に応じて選ぶことができます。

長期的に空き家を維持する予定がある場合は、プロの手を借りて安心かつ効率的に管理することを検討しましょう。

4-3 空き家バンクを利用する

空き家バンクは、自治体が運営する不動産マッチング制度です。

空き家の売却や賃貸を希望する所有者と、地域に住みたい移住者や地元の購入希望者をつなぐ場として活用されています。

空き家の活用が難航している場合でも、空き家バンクに登録して地元でのニーズとマッチすれば、スムーズな処分が可能になることがあります。自治体によっては補助金やリフォーム支援を行っているところもあるため、前向きに検討するとよいでしょう。

まとめ:早めの対策と専門家の活用でトラブルを防ごう

空き家の管理や処分は、放置してしまうと大きなリスクとなります。

特に、所有者が高齢で判断能力が低下している場合、放置された空き家はそのまま特定空き家に指定されることも珍しくありません。

成年後見制度は空き家を防ぐための手段ですが、任意後見や家族信託、財産管理契約など他の制度も視野に入れることで、より柔軟で効率的な管理が可能になります。

空き家は個人の問題にとどまらず、地域や社会全体の課題でもあります。家族が協力し合いながら、専門家と連携して対応することが、空き家問題解決の第一歩となるでしょう。

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この記事の執筆者

杉田 悟(すぎた さとる)

杉田 悟(すぎた さとる)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/管理業務主任者/競売不動産取引主任士

長年の実務経験を持ち、特に相続や不動産登記に関する専門性が高い。一般の方にも分かりやすく、正確な情報提供をモットーとしている。

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