相続した不動産の固定資産税は誰が払う?支払いのタイミングと注意点

相続した不動産の固定資産税は誰が払う?支払いのタイミングと注意点
執筆者: 木村道哉

はじめに

不動産を相続する際には、相続税だけでなく固定資産税の扱いについても把握しておく必要があります。

名義変更が済んでいない場合や、遺産分割協議が進んでいない状態では、誰が納税すべきか迷うこともあるでしょう。

相続した不動産の固定資産税は、遺産分割前と遺産分割後で払う人が異なります。よって、固定資産税が発生するタイミングから判断しなければなりません。

本記事では、相続発生後の固定資産税の支払義務や支払うタイミングを解説します。

不動産相続の全体像については、こちらの総合記事もあわせてご覧ください。

第1章 固定資産税とは固定資産に課される税金のこと

固定資産税とは、個人が所有する不動産や償却資産に対して毎年課される税金のことです。

不動産を持っている限り、毎年納税の義務が生じるため、相続によって不動産を取得した際にも避けて通れない費用です。

評価は市町村ごとの基準に従って行われ、その結果に応じて税金の額が決まります。

また、固定資産税とは別に都市計画税が課されるケースもあるため、納税額を確認する際には注意が必要です。

1-1 固定資産税の対象となる財産

固定資産税の対象となる財産には、土地や建物が含まれます。

具体的には、以下のような資産が対象になります。

  • 居住用不動産(自宅など)
  • 賃貸物件(アパート・マンション)
  • 商業用不動産(店舗・倉庫など)
  • 空き地、空き家

固定資産税は、登記されているかどうかに関係なく、1月1日時点でその不動産を持っている人にかかります。

そのため、たとえ遺産分割が終わっていなくとも、1月1日に所有していた人に税金の通知が届きます。

非課税扱いになるケースも一部に存在しますが、例外的な取扱いであるため注意が必要です。

第2章 相続した財産の固定資産税は誰が払うのか?

不動産を相続すると、その所有に伴って固定資産税の支払い義務も相続人に引き継がれます。

納税義務は実体上の名義とは無関係に発生するため、遺産分割が完了していなくても無視できません。

相続人の間で、事前に支払者や費用の分担方法について取り決めておくことで、後々のトラブルを防ぐことが可能になります。

2-1 故人の財産にも固定資産税は発生

相続が発生したからといって、不動産に対する固定資産税の課税が止まるわけではありません。

税務上は、1月1日時点の所有者に課税されるため、名義人が亡くなっていても納税通知書は送られます。

この税金は、被相続人が負っていた債務の一部と見なされるため、相続税の申告時に債務控除として取り扱うことができます。

控除を受けるには、支払額の証明書類が必要となるため、必ず領収書の保管をしましょう。

2-2 遺産分割前は相続人全員が支払義務を負う

遺産分割が終わっていない状態では、不動産の所有者が確定していないため、相続人全員が連帯して納税義務を負うことになります。

実際の支払いは誰か一人が立て替える場合もありますが、最終的には法定相続分に応じて分担するのが道理でしょう。

よって、各相続人の協力が不可欠であり、合意が得られない場合にはトラブルの火種にもなります。

そのため、早めに代表者を決めて連絡体制を整えることが望ましいでしょう。また、後の費用精算を見越して領収書や明細を保管しておくことが重要です。

2-3 遺産分割後は相続した人が支払い義務を負う

遺産分割が成立し、登記変更などの手続きが済むと、不動産を取得した相続人が固定資産税の名義人となり、今後の納税義務を一手に引き受けます。

ただし、遺産分割前に発生していた固定資産税については、他の相続人との間で精算が必要になる場合があります。この点を明確にしておかないと、後のトラブルにつながる可能性もあるため注意しましょう。

相続後は不動産の管理責任も伴うため、税金だけではなく維持費や修繕費などの将来負担についても見通しを立てておくことが大切です。

第3章 遺産分割協議中の固定資産税はどうする?

相続開始後すぐに遺産分割が完了するとは限らず、多くの場合、協議が長期化します。

その間も固定資産税は課税され続けるため、誰がどのように支払うのかについて、相続人の間で合意を形成する必要があります。

未払いが続くと延滞金や差押えのリスクが生じるため、協議中であっても納税を怠らないことが重要です。

3-1 遺産分割協議中でも固定資産税は払わないといけない

不動産が未分割のまま放置されていても、固定資産税は例年どおり課税されます。

固定資産税を誰が、どのように支払うかを相続人の間で決めておかないと、納税の遅延や延滞金が発生する恐れがあります。

また、自治体によっては納付書が旧所有者名義で届くため、実際の支払人が不明確になりがちです。

納税を怠ると自治体からの督促や、最悪の場合には差押えが行われることもあるため、遺産分割が進まない場合でも最低限の対応を取ることが大切です。

3-2 相続人の代表者が申告して支払うケースが多い

多くのケースでは、相続人のなかから代表者を定めて、納税手続きを担ってもらう形が採用されます。

役所には相続人の代表として届出を行い、納付書の送付先を変更する手続きも必要になります。このとき、支払額や負担割合の記録を残しておくと、後の精算やトラブル防止に役立つでしょう。

代表者が全額を立て替えたにもかかわらず、他の相続人が費用負担に応じないケースもあるため、納税後に証拠を残しておくことは重要です。

可能であれば、支払い前に書面で合意を交わしておくと安心です。

3-3 誰も納税しないと延滞金が発生するので注意

納税義務を放置してしまうと、延滞金が自動的に加算され、最終的には不動産の差押えや競売などの行政処分に至るおそれがあります。

相続をめぐる意見の対立や連絡不全が原因で、納税が滞るケースも珍しくありません。

トラブルになっている状況でも納税義務は継続しており、誰も対応しなければ不動産自体が失われる可能性すらあります。

代表者が決まっていない場合でも、相続人の間で最低限の協力体制を整え、納税を優先することが必要です。

第4章 固定資産税と相続税を払うタイミング

相続によって生じる税金は一種類ではありません。特に混同されやすいのが固定資産税と相続税ですが、それぞれ性質も支払い時期も異なります。

固定資産税と相続税は、どちらも相続に関連する税金ですが、性質や納税時期が大きく異なります。相続人は、双方の違いを理解して、混同しないようにすることが重要です。

4-1 固定資産税と相続税を混同しない

固定資産税は毎年発生する地方税であり、市区町村が課税・徴収を行います。不動産を所有している限り継続的に課税されます。

一方、相続税は被相続人が亡くなった際に、財産全体の価値に基づいて一度だけ課される国税です。相続税は、相続開始後10か月以内に税務署へ申告・納付する必要があります。

よって、混同すると納税計画に支障をきたし、それによって期限を過ぎた場合には延滞税が発生する可能性もあります。

特に、固定資産税は相続登記が未了でも課税されるため、相続開始後は速やかにその支払義務の所在を確認し、必要に応じて納付や手続きを行うことが重要です。

また、相続税の計算時には未払の固定資産税を債務控除として申告できる場合があるため、どちらの税金もきちんと把握しておく必要があります。

第5章 固定資産税を支払えないときの対処法

固定資産税の支払いが困難な場合でも、放置してしまうと大きなペナルティが発生します。

よって、まずは事情に応じた対策を講じることが大切です。行政の支援制度や家族間での話し合いを活用して、適切に問題を乗り越えましょう。

では、固定資産税を支払えないときの対処法を解説します。

5-1 相続人全員で話し合いの場を設ける

固定資産税の支払いは、一人で抱え込むものではありません。

法定相続分に応じて相続人全員に分担義務があるため、まずは家族間で冷静に話し合いの場を持つことが不可欠です。話し合いでは、誰がどの割合を支払うか、また一時的に誰が立て替えるかなど、実務的な取り決めを行いましょう。

また、不動産を実際に利用している人や将来的に活用したいと考えている相続人が多めに負担するという方法も一つです。

公平性を保つために、合意内容は書面に残しておくとトラブル回避に役立ちます。

5-2 役所の減免申請制度を利用する

所得が一定以下の場合や、失業・病気・災害などのやむを得ない事情がある場合、固定資産税の減免を申請できる可能性があります。

減免申請制度は各自治体によって基準や申請方法が異なるため、早めに役所へ相談に行き、必要書類や手続きの詳細を確認しましょう。

減免が認められると、税額の一部もしくは全額が免除されることもあり、経済的負担を大きく軽減できます。

なお、相続による納税困難は原則として減免の対象ではありません。ただし、個別事情を申告し、特例的に認められるケースもあるため、事前に相談するとよいでしょう。

5-3 相続放棄を検討する

どうしても不動産を引き継ぎたくない、あるいは固定資産税や維持費が負担になりすぎる場合は、相続放棄の選択肢も視野に入ります。

相続放棄をすると、固定資産税の支払い義務も含めてすべての財産・債務を放棄することになります。ただし、相続放棄には家庭裁判所での手続きが必要であり、相続の開始を知った日から3か月以内の期限があるため、早めの判断が重要です。

放棄後は最初から相続人ではなかったものと見なされるため、他の資産や権利も一切受け取ることができません。よって、放棄前には財産全体を確認し、専門家と相談のうえで慎重に決定する必要があります。

5-4 財産を売却・処分する

不動産の維持が困難な場合には、早めに売却して現金化することで固定資産税の支払い原資を確保することが現実的です。

相続人全員の合意があれば、遺産分割前でも売却は可能です。特に、空き家や利用予定のない土地は、放置しておくと特定空き家に指定され、固定資産税が最大6倍に跳ね上がる可能性もあります。

売却の際は、不動産会社に査定を依頼し、仲介業者を通じて買い手を探す方法が一般的です。売却前に税理士や不動産の専門家と相談して、合理的な解決策を選択しましょう。

まとめ:固定資産税は相続人に支払い義務がある!払い忘れに注意しよう

相続した不動産には、必ず固定資産税が発生します。名義人が死亡していても課税は継続され、相続人が支払いを引き継ぐことになるため注意しましょう。

遺産分割前は相続人全員に支払義務があり、分割後は相続人が単独で責任を負います。万が一払えない場合は、減免制度や売却などの対応も検討しましょう。

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この記事の執筆者

木村 道哉(きむら みちや)

木村 道哉(きむら みちや)

グリーン税理士法人 代表社員/税理士/弁護士

早稲田大学法学部卒。<br>都内大手税理士法人のインハウスロイヤーとして経験を積んだ後、木村道哉税理士事務所を開業。資産税(相続税・贈与税)を中心とした申告業務に携わり、相続人間に紛争が生じた場合の相続税申告業務に詳しい。

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