代償分割したいけど現金がない場合はどうする?相続人が取れる対応策と注意点

代償分割したいけど現金がない場合はどうする?相続人が取れる対応策と注意点
監修者: 中西孝志

はじめに

不動産を含む相続では、「特定の相続人が不動産を単独で取得し、他の相続人にはそのかわりに代償金を支払う」という分け方があります。このような形を「代償分割」といいます。

公平に遺産を分割しつつ、不動産の活用を妨げない実用的な方法ですが、「不動産は相続したいけれど、代償金を払う現金がない……」という問題に直面する方は少なくありません。

この記事では、代償分割の仕組みや、現金が足りない場合にどう対応すべきか、実務的な選択肢と注意点をわかりやすく解説します。


第1章:代償分割とは何か?基本の仕組みを再確認

1-1 代償分割の概要

代償分割とは、相続人の一人が不動産などの相続財産を取得し、その代わりに他の相続人へ「代償金(現金)」を支払うことで、相続分を調整する方法です。

たとえば、相続財産が実家(土地・建物)だけで評価額3,000万円、相続人が長男・次男の2人である場合、長男が実家を単独で相続し、次男に1,500万円の代償金を支払う、というような形です。

1-2 なぜ代償分割が選ばれるのか?

  • 実家を残したい(売却を避けたい)
  • 共有相続による将来のトラブルを避けたい
  • 不動産以外に現金資産が少ない場合に実用的

代償分割は、相続人どうしに対立関係がなく、遺産分割協議でスムーズに合意ができる場合に有効な方法です。


第2章:「現金がない」場合に起こりやすい問題とリスク

2-1 協議がまとまらない

「代償分割にしたいけど現金がない」となると、他の相続人からの不信感や不満が高まり、遺産分割協議がまとまらないまま長期化してしまうケースがあります。

2-2 相続登記・申告が遅れる

代償分割の内容が決まらなければ、相続登記や相続税の申告が進まず、期限切れによる過料などのペナルティを受けるリスクも生じます。

2-3 不信や感情的な対立に発展

「本当に払ってくれるのか?」「口約束では信用できない」といった不安が原因で、相続人同士の関係に亀裂が入ることもあります。


第3章:代償金を用意できない場合の具体的な対応策

対策①:分割払いを提案する

他の相続人と話し合い、「5年以内に毎年○○万円ずつ払う」など分割での支払いで合意する方法です。

  • メリット:手元資金がなくても協議がまとまりやすい
  • デメリット:相続人どうしの信頼関係と明確な書面化が必須

支払計画書や公正証書を作成することで、後のトラブルを防げます。

対策②:金融機関から借入を検討する

金融機関の不動産投資ローン等を利用し、代償金を一括で用意する方法です。

  • メリット:不動産を保持しつつ支払いができる
  • デメリット:審査や金利、担保条件に注意が必要

住宅ローン完済済みの不動産であれば、担保価値があると判断されやすくなります。

対策③:生命保険を使った準備(生前対策)

被相続人が生命保険に加入し、保険金受取人を代償金支払者に指定しておくことで、現金を確保しやすくなります。

  • メリット:相続発生時に確実に現金を得られる
  • デメリット:事前準備が必要

将来的に代償分割を予定している場合の有効な手段です。

対策④:現物分割や換価分割を選択する

上記のような手段を活用しても現金の用意が難しい場合、代償分割にこだわらず、現物分割や換価分割を検討するのも現実的な選択肢でしょう。

  • 現物分割:土地を分筆するなどして、不動産を不動産のまま分け合う
  • 換価分割:不動産を売却して、その代金を分ける

これらの方法なら、手元に現金が用意できなくても公平な遺産分割を実現することができます。


第4章:代償金の合意・支払いをめぐるトラブルを避けるには

4-1 書面での取り決めを必ず行う

「口約束」は後のトラブルのもとです。代償金の額・支払い時期・支払い方法を明記した遺産分割協議書を必ず作成しましょう。

4-2 公正証書で支払計画を明文化する

分割払いを行う場合は、支払計画を公正証書にしておくことで、未払い時に強制執行が可能となり、相続人どうしの信頼性を補強できます。

4-3 専門家を交えて調整する

司法書士や税理士、弁護士など、第三者の専門家が関わることで、感情的な対立を避け、客観的な視点からのアドバイスが得られます。


まとめ:代償分割で現金がないなら「交渉」と「代替策」で乗り切れる

不動産を単独相続したいが、現金がなくて代償金が支払えない──そんな状況でも、適切な交渉と代替策を取れば、相続人同士の納得を得てスムーズに相続を完了させることは可能です。

大切なのは、

  • 早めに事情を共有すること
  • 支払い計画を明確に示すこと
  • 書面化と専門家の関与を怠らないこと

です。

「住まいの賢者」では、司法書士法人と連携し、代償分割・不動産売却・登記・相続税対策までを一括サポート。初回のご相談は無料です。相続でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

中西 孝志(なかにし たかし)

中西 孝志(なかにし たかし)

宅地建物取引士/FP2級技能士/損害保険募集人

約20年の実務経験を活かし、お客様の潜在ニーズを汲み取り、常に一方先のご提案をする。お客様の貴重お時間をいただいているという気持ちを忘れず、常に感謝の気持ちを持つことをモットーとしている。

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