目次
はじめに
相続によって土地を取得したとき、多くの方が最初に疑問を持つのが「この土地はいくらなのか?」という点です。
土地の価格は相続税の課税対象額や、遺産分割の公平性の判断材料、または売却・活用を検討する上での重要な基準になります。しかし、土地の価格にはさまざまな評価方法があり、目的によって「どの価格を使えばいいのか」が異なる点が、相続人にとって大きな混乱を招きます。
本記事では、相続時における土地価格の調べ方を、5つの主要な評価方法に分類し、それぞれの調査方法、使いどころ、メリット・デメリットまで詳細に解説します。
第1章:相続時に土地の価格を調べる目的とは?
土地の価格を知ることは、単に「不動産の価値を把握する」という以上に、相続手続き全体において次のような重要な役割を果たします。
1. 相続税申告の基礎資料として
相続税の課税評価額には土地の評価が含まれるため、適切な土地価格の算定が必要不可欠です。過大評価すれば税額が上がり、過少評価すれば申告漏れやペナルティの対象になります。
2. 遺産分割・代償分割の協議材料として
土地を誰か1人が相続し、他の相続人に代償金を支払う「代償分割」では、その土地の価値をどう評価するかが争点になります。不公平感を生まないよう、客観的な基準で価格を把握する必要があります。
3. 遺留分請求の根拠として
不動産を含む相続で、特定の相続人に遺産が偏る場合、他の相続人が「遺留分侵害額請求」をすることがあります。その際も、土地の評価額が争点となるため、正確な調査が必要です。
4. 売却や活用の判断材料として
相続した土地を手放すか、保有し続けるかを判断するためにも、実際に売れる金額(実勢価格)を知ることが欠かせません。
第2章:土地の価格を調べる5つの主要な方法
方法①:固定資産税評価額(市町村評価)
- 各市区町村が算出する評価額で、毎年春に届く「固定資産税納税通知書」に記載されています。
- 登録免許税(相続登記時)の計算根拠になります。
- 一般的に時価の6〜7割程度とされています。
- 土地の細かい事情(地形、接道、上下水道の有無など)はあまり反映されません。
- 市区町村役場または法務局で評価証明書を取得できます(有料)。
方法②:路線価(相続税評価額の基準)
- 国税庁が毎年7月に公開する「路線価」は、相続税評価のベースとなる指標です。
- 1㎡あたりの金額が示されており、これに土地の面積を掛け、さらに奥行補正・不整形補正などを加味して評価額を算出します。
- おおよそ時価の8割程度が目安とされます。
- 国税庁がウェブで「路線価図」を公開しており、誰でも無料で閲覧できます。
方法③:倍率方式(路線価の設定がない地域)
- 路線価が設定されていない地方部などでは、「固定資産税評価額 × 国税庁の定める倍率」で相続税評価額を算出します。
- 倍率は地域や用途によって異なります。
- 土地ごとの形状や個別要因が反映されにくいため、大まかな目安として用います。
- 路線価図と同じく、国税庁がウェブで「評価倍率表」を公開しており、誰でも無料で閲覧できます。
方法④:公示地価・基準地価(行政発表の標準価格)
- 国土交通省が毎年3月に発表する「公示地価」や、都道府県が毎年9月に発表する「基準地価」は、地価の目安として最も広く報道される公的価格です。
- それぞれ標準地を基準として「実勢価格に近い時価」を示します。
- 相続税評価には使われませんが、参考値や周辺相場の確認に有効です。
- 公示地価・基準地価のいずれも、国土交通省のウェブサイト「不動産情報ライブラリ」で誰でも無料で検索できます。
方法⑤:実勢価格(不動産会社の査定)
- 実際に売買される価格に最も近い価格であり、売却予定や代償金算定時には最も参考になります。
- 地形や接道、建物の有無、周辺環境、需給バランスなどが加味されます。
- 不動産会社や不動産鑑定士に査定を依頼します(無料〜有料)。
第3章:各評価方法の使い分けと活用の目安
目的 | 適した価格調査方法 |
相続税申告 | 路線価 or 倍率方式 |
相続登記(登録免許税算定) | 固定資産税評価額 |
売却・換価分割 | 実勢価格(査定) |
遺産分割・代償金の調整 | 路線価+実勢価格の両方確認 |
相場の参考 | 公示地価・基準地価 |
相続人どうしの協議や対外的な手続きの正確性を高めるためには、複数の価格を比較・併用することが望ましいでしょう。
第4章:価格評価時に注意すべきポイント
評価方法によって価格が大きく異なる
たとえば、ある土地の固定資産税評価額が1,000万円でも、実勢価格では2,000万円、路線価ベースでは1,600万円といったケースは珍しくありません。価格の意味と目的を明確にして調査しましょう。
不整形地や無道路地などは補正が必要
一般的な宅地よりも条件の悪い土地(旗竿地、傾斜地など)は、評価時に補正率を適用する必要があります。補正を誤ると過大評価または過小評価につながります。
土地の評価には専門知識が求められる
相続税評価は自力で行うことも可能ですが、誤りがあれば修正申告や追徴課税が発生する可能性もあります。税理士や司法書士、不動産鑑定士への相談が安心です。
評価額=売却価格ではない
税務評価額(路線価や固定資産税評価額)は、市場価格(実勢価格)より低く算定されていることが一般的です。売却益が出た場合には譲渡所得税が発生することもあるため、複数の観点から判断しましょう。
まとめ:相続土地の価格は目的に応じて正しく調べることがカギ
相続における土地の価格調査は、税金、分割協議、売却判断などすべての判断の出発点となる重要な作業です。調べ方を間違えると、相続人どうしの不公平感や手続きミスにつながり、後のトラブルの原因になります。
複数の評価方法を理解し、目的に応じて適切な基準を選ぶことが、相続をスムーズに進めるカギとなります。
「住まいの賢者」では、司法書士法人と連携し、土地の価格調査から相続登記、相続税申告サポート、不動産売却のご相談まで一括でサポートしています。価格に関する不安や疑問があれば、まずは無料相談をご利用ください。
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