土地を売るベストタイミングとは?損しないための判断基準を解説

執筆者: 中西孝志

はじめに

土地の売却を考える際、「いつ売るのが正解なのか分からない」とタイミングに悩む方も多いのではないでしょうか。売却価格は市況や制度の変化によって左右されるため、判断を誤ると相場よりも安い金額で売却をしてしまう可能性があります。一方で、「今はやめておこう」と決断を先延ばしにすることで、地価が下落したり、維持費の負担が膨らんだりするリスクもはらんでいます。

そこでこの記事では、土地を売るベストなタイミングを見極めるために知っておきたいポイントについて解説します。土地を売るベストタイミングが分からず困っている方は、ぜひ最後までご覧ください

第1章 土地を売るタイミングが重要な理由

土地を売却する際、売るタイミングによって受け取れる金額が大きく変わる場合があります。なぜなら、土地の価格は景気やエリアの需要、不動産市況によって変動し、タイミング次第で高値で売れることもあれば、買い手がつかずに価格が下がってしまうこともあるためです。

また、売却によって発生する税金の額も、売る時期や保有年数によって異なります。ここでは、土地を売るタイミングが重要な理由について詳しく見ていきましょう。

1-1 売却価格

土地の売却価格は、時期によって変動するケースがあります。地価は経済情勢や金利、不動産需要、都市開発の有無などの影響を受けやすく、今が高値だからといって、数ヶ月後も同じ価格で売れるとは限りません。

例えば、周辺エリアで再開発が進んでいる時や、企業の進出などで人口が増えている時は、地価が上昇しやすくなります。反対に、過疎化が進んでいる地域や、災害リスクの高まりなどによって需要が低下すると、地価が下落する恐れもあります。

また、買い手の需要が集中する2月〜3月に売り出せば、比較的高く売れやすくなります。転職や進学に伴って引っ越し需要が高まるため、売却を希望するならこのタイミングを狙うのも有効です。一方、需要が落ち込む夏場や年末年始は、買い手が見つかりにくく、値下げを迫られる可能性があります。

1-2 税金

土地を売却して利益が出た場合、その金額に応じて譲渡所得税が課せられます。譲渡所得税額は売却額だけで決まる訳ではなく、売却タイミングや使用する特例などによって変わるのが特徴です。

特に注意したいのが、保有期間による税率の違いです。所有期間が5年超の場合、長期譲渡所得として税率は20.315%になります。一方で、所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得とみなされ、税率は39.63%になります。

また、相続した土地を売却する場合、相続税の取得費加算の特例によって節税することが可能です。相続税の取得費加算の特例とは、相続発生から3年10ヶ月以内に売却すれば、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例です。

このように、土地の売却タイミングは価格面だけではなく、節税の観点から見ても重要な要素になります。

第2章 土地を売るのに適しているタイミング

土地を売却するベストなタイミングは、人によって異なります。「相場が上がっているから売りたい」という方もいれば、「税金が高くなる前に売ってしまいたい」という方もいるでしょう。

ここでは、売却に踏み切るタイミングとして代表的な6つのパターンを紹介します。自分の状況に近いものがあるか、ぜひ照らし合わせてみてください。

2-1 そもそも土地が必要ない

所有している土地を今後使う予定がない場合は、なるべく早く売却を検討するのが得策です。なぜなら、所有しているだけで固定資産税や管理コストがかかるうえに、年数が経つほど劣化や周辺環境の変化によって資産価値が下がってしまうリスクがあるためです。

使う予定がなく資産としての活用も見込めない土地は、早めに売却を検討することで、余計なコストや手間を減らし、資金を有効に活用する道が開けるでしょう。

2-2 地価が上昇傾向にある

所有している土地の地価が上昇しているタイミングは、売却を前向きに検討すべきチャンスです。一般的に、地価は経済情勢や人口動態、再開発・インフラ整備などの影響を受けて上下します。特に、再開発の発表直後や大型商業施設の建設予定が出た地域では、地価が高騰するケースも少なくありません。

また、駅近エリアや都心周辺などの人気エリアでは、需要の高まりに応じて地価が上昇する傾向があります。このような環境下では、今後のピークを見極めて売却のタイミングを逃さないことが重要です。

2-3 不動産市況が活発である

不動産の売却を検討する際は、その時点の市況が活発かどうかを見極めることが重要です。市況が活発なタイミングとは、買い手の動きが活発で、取引件数が増加傾向にある状態のことです。不動産市況が活発なタイミングでは、土地は高値で売れる傾向にあります。

例えば、住宅ローン金利が低水準にある時や、景気が回復傾向にある時は、購入希望者の動きが活発になります。特に、都市部や再開発エリア、人口が流入している地域では土地の需要が高まり、高値で売れやすくなるでしょう。

一方で、市況が停滞している時に売りに出しても、買い手が現れにくく、価格交渉で不利になったり、売却までの期間が長期化したりする恐れがあります。そのため、土地の売却タイミングを計っている場合、不動産市場が活発な間に動くことが、価格・スピードの両面で大切です。

2-4 現金が必要である

急な出費やライフイベントへの対応など、まとまった現金が必要になった場合は、土地を売却することが現実的な選択肢の一つです。例えば、子供の学費や住宅購入の頭金、親の介護費用、ローン返済などの資金を確保したい場面では効果的でしょう。

ただし、土地の売却には数ヶ月を要します。必要なタイミングに資金調達が間に合うように売却するためには、早めに売却に向けて行動しておくのが良いでしょう。

2-5 ニーズが高まる2月〜3月

不動産市場には年間を通じた需要の波があり、2月〜3月はニーズが高まります。この時期は、進学・就職・転勤といった人の動きが多く、住宅や土地を探す買い手が増えるため、売却の好機と言えます。

また、買い手だけでなく、不動産会社にとっても繁忙期であるため、売却に向けた営業活動も積極的に行われやすくなります。結果として、買い手が見つかりやすくなるだけではなく、価格交渉でも優位に立ちやすくなるといったメリットも期待できます。

2-6 税金を抑えられる保有期間

土地を売却して利益が出た場合、その利益に対して譲渡所得税が課税されます。譲渡所得税の税率は、土地の所有期間によって異なるため、売るタイミングが税負担に直結します。5年超保有すれば売却益の約20%なのに対し、5年以下の場合は約40%と2倍近い差があります。

そのため、仮にあと数ヶ月で5年を超えるという状況であれば、少し売却を待つだけで税金を大幅に抑えられる可能性があります。売却益が大きいほど、この差は数十万円以上になることも珍しくありません。

また、相続した土地を売却する場合には、被相続人がその土地を取得した時期を引き継ぐことができるため、長期譲渡所得として扱えるケースが多くなります。さらに、相続開始から3年10ヶ月以内に売却すれば、取得費加算の特例が適用できる可能性もあります。取得費加算の特例は、相続税の一部を土地の取得費に上乗せできる制度で、課税対象となる譲渡所得を圧縮できる効果的な節税策です。

第3章 タイミングを見誤るリスク

土地の売却タイミングを見誤るリスクは以下の通りです。

  • 相場が下がって売却価格が安くなる
  • 固定資産税や管理費用がかさみ続ける
  • 譲渡所得税が高くなる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

3-1 相場が下がって売却価格が安くなる

土地の価格は永遠に一定ではなく、景気動向や人口の流出入、都市開発の有無、災害リスクなど、様々な要因によって上下します。売却を先送りした結果、市場が冷え込み、想定していた価格で売れなくなるというケースは珍しくありません。

過疎化が進んでいる地域や、再開発の見込みが乏しいエリアでは、需要の低下にともなって地価が下落する傾向があります。一度価格が下がり始めると回復までに時間がかかり、買い手の数も減少していくため、売却そのものが困難になるリスクも高まります。

3-2 固定資産税や管理費用がかさみ続ける

土地を所有している限り、たとえ活用していなくても固定資産税などの維持コストは毎年発生し続けます。都市部でも地方でも、固定資産税は原則として土地の評価額に応じて課税され、使い道がない土地であっても容赦なくコストがかかり続ける点は変わりません。

加えて、雑草の手入れや境界の管理、不法投棄の防止といった物理的な維持管理にも手間や費用が発生するケースもあります。

3-3 譲渡所得税が高くなる

土地を売却して利益が出ると、譲渡所得税がかかります。譲渡所得税の税率は、土地の所有期間によって異なるため、売却時期を見誤ると税負担が重くなります。また、取得費加算の特例を使えば、譲渡所得を圧縮できます。

これらの制度を知らずに売却を先送りしてしまうと、使えるはずだった優遇措置を逃してしまう可能性があります。税金の負担を抑えるには、制度の適用タイミングを意識して行動することが大切です。

第4章 土地の売却タイミングを検討する際の注意点

土地をいつ売るべきかを考えるうえでは、価格や税金だけでなく、現実的な売却スケジュールやエリア特性、発生するコストなどにも注意を払う必要があります。タイミングを見極める際に見落としがちなポイントを、ここで確認しておきましょう。

4-1 土地の売却には3ヶ月程度かかる

土地を売りに出してもすぐに買い手が見つかるとは限りません。査定から媒介契約、広告活動、内見対応、価格交渉、契約、決済、引き渡しといった一連の流れには一定の時間がかかります。

一般的に、動き始めてから売却するまでに3ヶ月程度かかります。需要の高まる2月〜3月に売りたいと思っても、年明けには準備を始めておかないと間に合わない可能性があるため、早めに動いてスケジュールに余裕を持たせることが大切です。

4-2 ベストタイミングを待っている間に価格が下がる可能性がある

土地の売却を先送りした結果、地価が下がってしまうケースは少なくありません。昨日まで好調だった市場が、数ヶ月後には停滞し始めることもあります。

最高値を狙い続けることで、売り時を逃してしまうかもしれません。現時点で市場が安定しており、買い手の動きがあるのであれば、確実に売れる今を選ぶことも賢明な判断と言えるでしょう。

4-3 田舎で需要の低い土地は、今後需要が増える可能性は少ない

需要の少ない土地を長期間持ち続けていても、将来的に価値が上がるとは限りません。特に、過疎化が進む地域や公共交通機関が整っていないエリア、再開発の予定がない土地などは、今後も買い手が見つかりにくい状況が続く可能性があります。

住宅地としても事業用地としても利用価値が低いと判断されると、価格は下がり続け、売却そのものが困難になってしまいます。また、雑草の管理や不法投棄対策などの手間もかかるため、所有しているだけで維持コストが発生し続けます。

将来的な上昇を見込めない土地であれば、「いつか使うかも」と先延ばしにするよりも、少しでも需要がある間に手放す方が、トータルで見て損失を抑えられるでしょう。

4-4 仲介手数料や印紙税などの諸費用がかかる

土地の売却では、売却価格に目が向きがちですが、実際の手取り額は諸費用を差し引いた金額になります。そのため、事前にどのような費用が発生するのかを理解しておくことが大切です。

主な費用としてまず挙げられるのが、不動産会社に支払う仲介手数料です。仲介手数料は、売却価格に応じて3%〜5%が上限とされており、高額な取引では数十万円以上になることもあります。

また、売買契約書を作成する際には印紙税がかかり、契約金額に応じた収入印紙の購入が必要です。さらに、土地に抵当権が設定されている場合は抹消登記、相続登記がまだの場合はその手続きも必要となり、司法書士への報酬や登録免許税などの費用が別途かかります。

第5章 土地を今すぐ売るべきかの判断に迷ったら不動産会社や税理士への相談がおすすめ

土地の売却タイミングは、地価の動向や税制、ライフプランなど複数の要素が関係するため、自己判断だけで最適な時期を見極めるのは容易ではありません。売却タイミングに迷った際は、不動産会社や税理士などへの相談がおすすめです。

不動産会社に相談すれば、現在の相場や周辺の成約事例、売却までにかかる期間の目安など、実務に基づいた具体的な情報が得られます。複数の業者から査定を受けることで相場感も把握でき、売却に踏み切るべきかどうかの判断材料になります。

一方、税金関連の不安がある場合は税理士のサポートが有効です。税負担を軽減するための特例や控除制度の適用可否、申告に必要な手続きなどを正確にアドバイスしてくれます。

売却を先延ばしにしてしまうと、結果的に損をしてしまう可能性があります。そのため、少しでも不安がある場合は、早い段階で専門家に相談し、客観的な視点で売却の是非を検討するのが良いでしょう。

まとめ:土地を売るタイミングで迷ったら不動産会社に相談しよう

土地の売却は、価格・税金・維持コスト・市場の動きなどの様々な要素が影響するため、タイミング次第で手取り額が異なります。売却を検討する理由が明確であれば、地価が安定している間に動くことで、スムーズかつ有利な条件での取引に繋がることもあります。

一方で、判断を先延ばしにしてしまうと、地価の下落や税負担の増加、特例の適用期限切れといったリスクを招くことにもなりかねません。売却タイミングについて悩んだ時は、不動産会社や税理士といった専門家に相談し、自分の状況に合った最適な選択肢を見つけることが重要です。

「住まいの賢者」では、土地を売るタイミングに関するアドバイスを行っています。「いつ売れば良いか分からない」という方は、お気軽にご相談ください。

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この記事の執筆者

中西 孝志(なかにし たかし)

中西 孝志(なかにし たかし)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/FP2級技能士/損害保険募集人

約20年の実務経験を活かし、お客様の潜在ニーズを汲み取り、常に一方先のご提案をする。お客様の貴重お時間をいただいているという気持ちを忘れず、常に感謝の気持ちを持つことをモットーとしている。

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