相続不動産の査定と評価額の調べ方|相続人との争いを回避するには?

相続不動産の査定と評価額の調べ方|相続人との争いを回避するには?
執筆者: 中西孝志

はじめに

親や親族から不動産を相続したとき、避けて通れないのが「不動産の査定」です。

土地や家の価値を明確にすることは、相続税の申告や遺産分割をスムーズに進めるうえで重要になります。しかし、不動産の価値には複数の評価基準が存在し、どれを使えばよいか迷う方も多いでしょう。

本記事では、相続不動産の査定と評価額の基礎知識を解説します。相続人同士のトラブルを防ぎ、納税や手続きの負担を軽くするための一歩としてご参考ください。

第1章 相続不動産で査定が必要な理由

不動産の査定が必要になるのは、売却時だけではありません。

相続の場面でも、不動産の価値を把握することが重要となります。

では、相続不動産で査定が必要な理由を見ていきましょう。

1-1 遺産分割での不公平防止のため

相続人が複数いる場合、遺産の分け方を巡って揉めることは珍しくありません。

不動産は現金と違い、そのままでは分割しづらいため、査定額を基準として公平に分けるための目安が必要です。

代表的な遺産分割の方法は、以下の4つが挙げられます。

  • 現物分割
  • 代償分割
  • 換価分割
  • 共有分割

遺産分割の手法を選択する際に、不動産の正しい価値を知っておくことが重要です。

不動産の価値を不明確なまま進めると、あとから不満が残ったり、訴訟に発展するケースもあるため注意しましょう。

1-2 不動産の活用方法の判断材料にするため

相続した不動産を「売る」「貸す」「住む」「保有し続ける」といった判断をするにも、まずは不動産の価値を知る必要があります。

周辺相場や固定資産税評価額だけで判断すると、あとで損をする可能性も考えられるでしょう。査定によって市場でのリアルな価値を把握することで、最適な活用方針を立てる土台が整います。

また、建物が老朽化している場合は、リフォームや解体の必要性を判断するためにも、正しい評価が不可欠です。

所有し続ける選択でも、年間維持コストとのバランスを見ておくべきです。

1-3 相続税の申告をスムーズに進めるため

相続税は、相続開始時の不動産評価額を基に計算されます。評価額が不明確だと、相続税の申告や納付に遅れが生じ、ペナルティの対象になることもあります。

特に、土地の相続税評価額は特殊なルールで決められており、誤って過小・過大評価すると追徴課税やトラブルの原因になるため、正確な査定でリスクを回避しましょう。

評価額の妥当性について税務署から指摘を受けないためにも、信頼できる情報源に基づいた評価が必要です。

第2章 不動産の評価額は5種類ある

不動産の評価額には複数の種類があり、利用される目的や計算基準が異なります。相続や売却でどの価格を参考にすべきかを知るためにも、それぞれの違いを理解しておきましょう。

では、代表的な5つの不動産評価額を解説します。

2-1 固定資産税評価額

固定資産税評価額とは、地方自治体が課税のために算出する評価額です。毎年送付される「固定資産税通知書」に記載されており、相続税や贈与税の計算の参考にもなります。

公的な資料で確認できるため、もっとも手軽に取得できます。

しかし、市場価格(実勢価格)よりも低めに設定されていることが一般的で、売却価格の目安には向きません。建物と土地それぞれに評価額が設定されているため、確認の際は両方の項目をチェックしましょう。

2-2 公示地価

公示地価は、国土交通省が毎年発表している、土地の「標準的な価格」です。

地価公示法に基づき、全国の標準地を対象に不動産鑑定士が評価した価格で、土地取引や融資などの基準となることがあります。

新聞やネットで一般公開されており、誰でもアクセス可能ですが、全国の一部地点のデータのみであり、ピンポイントな不動産価格を把握するには限界があります。

都市部では参考になることも多いですが、地方や特殊な立地では別の評価方法が必要となるでしょう。

2-3 基準地価

基準地価は、各都道府県が公示地価の補完として毎年公表する価格で、都道府県地価調査に基づいています。

調査対象は公示地価よりも多く、より広範囲なデータをカバーしている点が特徴です。

また、地方の土地や市街地の周辺エリアなど、公示地価が設定されていない場所でも活用しやすくなっています。相続税評価や資産管理の判断材料としても有効ですが、やはり目安程度にとどめ、正確な査定は別途行うことがベストです。

2-4 路線価

路線価は、国税庁が毎年発表する土地の価格基準で、相続税や贈与税の計算に使われる数値です。一般的には、公示地価の8割程度を基準に算出されています。

国税庁の公式サイトで無料公開されており、住所や地番から簡単に検索可能です。土地に面した道路ごとに価格が設定されているため、土地の評価においてもっとも実務的な価格といえるでしょう。

ただし、すべての地域に設定されているわけではなく、一部の山間部や農村地帯では利用できない場合もあります。

その場合は、固定資産税評価額や実勢価格を活用しましょう。

2-5 実勢価格

実勢価格は、実際の不動産取引で成立した価格を指します。もっとも「リアルな市場価格」とされており、売却時の参考としては重要な評価額です。

実勢価格は、不動産ポータルサイトや過去の取引事例、近隣の成約価格などを元に算出されますが、同じ地域でも土地の形状や建物の状態によって価格に幅が出るため、信頼できる業者に査定を依頼するとより安全です。

特に、遺産分割や換価分割を行う場合、実勢価格に基づいた査定が有効です。

第3章 不動産の相続評価額を調べる方法

不動産の相続評価額を調べるのは難しいと思われがちですが、ポイントさえ押さえれば一般の方でもある程度の目安を確認することが可能です。

相続税の申告や遺産分割の準備に向けて、基本的な方法からチェックしていきましょう。

3-1 固定資産税納税通知書を確認する

もっとも手軽に評価額を把握できるのは、自治体から届く「固定資産税納税通知書」を確認する方法です。通知書には土地と建物それぞれの評価額が記載されており、公的な数値として信用性も高いといえます。

ただし、この評価額はあくまで固定資産税の課税を目的としたものなので、実勢価格とは大きな乖離があるケースもあります。売却や遺産分割の参考には向かない可能性があるため、あくまで税務手続きの初期判断用として活用しましょう。

3-2 役所に問い合わせる

不動産の所在地を管轄する市区町村役場に問い合わせることで、固定資産評価証明書を取得することができます。固定資産評価証明書は、不動産の正確な評価額を記載した公的文書であり、相続税申告や登記手続きにも利用可能です。

申請には本人確認書類と不動産の情報が必要になりますが、窓口で丁寧に教えてくれる自治体が多いため、不安がある場合は相談しながら進めるとよいでしょう。

3-3 全国地価マップを確認する

国土交通省が提供している「全国地価マップ」や、国税庁の「路線価図検索システム」を使えば、パソコンやスマートフォンから土地の評価額を確認できます。

地番や住所を入力するだけで周辺の地価が表示されるため、目安として非常に便利です。売却を検討している場合や、他の評価額と比較したいときに活用しましょう。

ただし、ピンポイントの評価ではないため、あくまで概算の参考値として認識し、最終的にはプロの査定を受けることをおすすめします。

第4章 相続した不動産を査定する方法

評価額の目安を確認したあとは、より実務的な不動産査定に進む必要があります。相続税の計算や遺産分割、売却方針の決定において、実勢価格をベースとした査定は重要です。

では、相続した不動産を査定する方法を解説します。

4-1 自分で評価額から計算する

手軽に査定するには、自分で相続税評価額をベースに目安を出す方法があります。

たとえば、国税庁の「路線価図」を用い、対象不動産の面積と掛け合わせることで、おおまかな土地の評価額が算出できます。

土地の相続税評価額の計算式:路線価 × 土地の面積 = 評価額

ただし、この方法はあくまで概算であり、高低差・私道負担などの特殊事情や建物を考慮できません。

正確性には限界があるため、遺産分割や売却の判断材料として使うには不十分です。参考程度にとどめておきましょう。

4-2 不動産の無料査定を依頼する

もっとも現実的で信頼できる方法が、不動産会社に査定を依頼することです。

プロの目で建物の状態や周辺相場を踏まえて評価してくれるため、売却や分割に活かせる市場価格を知ることができます。

査定には「訪問査定」と「簡易査定」があり、訪問査定の方がより正確な金額を提示してくれます。不動産会社によって得意エリアや売却戦略が異なるため、複数社に依頼して比較することが理想です。

不動産会社による査定は、無料で行ってもらえることがほとんどなので、有効に活用するようにしましょう。

信頼できる不動産会社選びが、不動産売却の成否を左右します。口コミや実績を確認し、相性のよい担当者を見つけましょう。

4-3 不動産鑑定を依頼する

公的な価値を証明したい、相続人の間での争いを防ぎたい、裁判で証拠として使いたい場合は「不動産鑑定士」による鑑定評価書の作成が必要です。

不動産鑑定士は国家資格であり、専門的な手法で不動産の価値を評価します。費用は10〜30万円程度と高額ですが、その分、信頼性と証明力は抜群です。

相続が揉めそうな場合や、大きな資産を巡って客観的な判断が必要な場合には、検討すべき手段といえるでしょう。

第5章 相続不動産の査定をスムーズに進めるポイント

相続不動産の査定を進める際には、事前の準備や段取りの良し悪しが、全体の流れを大きく左右します。

では、トラブルを避け、迅速かつ正確に査定を受けるためのポイントを紹介します。

5-1 査定前に書類を準備しておく

不動産査定を依頼する際には、対象となる不動産に関する書類を可能な限り揃えておくことが重要です。

代表的な書類には以下があります。

  • 登記簿謄本(全部事項証明書)
  • 固定資産税納税通知書
  • 測量図や建物図面
  • 過去のリフォーム履歴 など

このような資料が手元にあるだけで、査定の精度は大きく向上します。

加えて、建物の劣化箇所や修繕の履歴なども整理しておくと、不動産会社に正確な情報を伝えやすくなるでしょう。

5-2 不動産の名義と法的な制限事項を確認しておく

相続が発生すると、故人名義の不動産は相続人に登記名義を変更する必要があります。

名義変更が済んでいない状態では、正式な売却や査定依頼が難航する可能性もあるため、事前に名義の確認を行いましょう。

また、都市計画法や建築基準法上の制限、再建築の可否なども確認しておくと、活用方針や売却価格の目安が立てやすくなります。市役所や法務局で取得できる情報も多いので、不明な場合は専門家に相談をすると安心です。

5-3 早めに専門家に相談する

相続不動産は、個人で判断するには複雑な要素が多く含まれます。

特に、以下の状況では、複数社に査定を依頼することで客観的な判断がしやすくなります。

  • 相続人が複数いて意見が分かれている
  • 相続税の対象となる可能性がある
  • 特殊な立地や築年数の古い物件である

分野ごとに専門性が求められるため、早めに信頼できる専門家に相談することが鉄則です。時間をかけてでも慎重に判断することが、後悔しない相続手続きにつながるでしょう。

まとめ:不動産の査定は迷う前に動くが鉄則

不動産の相続で最もつまずきやすい点が「不動産の価値がわからない」ことによる判断の遅れや相続人の間でのトラブルです。

査定には複数の評価方法があり、どの評価額を基準にするかによって相続税や遺産分割の結果は大きく変わります。不動産の査定は「売るときだけ」行えばよいものではありません。

迷っている間にも、価値は変動し、税制も変わる可能性があります。

だからこそ、不動産の相続が発生したら、迷う前にまず査定を受けることをおすすめします。一括査定サービスの活用やプロの知見を借りて、スムーズな相続を実現しましょう。

「住まいの賢者」では、司法書士と連携して、相続登記から活用・売却・放棄の相談まで一括で対応しています。不動産の相続をどうするべきか悩んでいる方は、ぜひ無料相談をご活用ください。

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この記事の執筆者

中西 孝志(なかにし たかし)

中西 孝志(なかにし たかし)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/FP2級技能士/損害保険募集人

約20年の実務経験を活かし、お客様の潜在ニーズを汲み取り、常に一方先のご提案をする。お客様の貴重お時間をいただいているという気持ちを忘れず、常に感謝の気持ちを持つことをモットーとしている。

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