目次
はじめに
親族の死去などに伴い、不動産を相続することは珍しくありません。しかし、相続した方が既に別の住居を所有していたり、遠方に居住していたりするなどの事情から、相続不動産が空き家となってしまう事例も多く見られます。
また、管理が不十分な空き家を放置した場合、犯罪に利用されるリスクや、老朽化により周辺住民に損害を及ぼすリスクが高まります。そのため、空き家は所有者が責任をもって適切に管理しなくてはなりません。
実際に空き家を相続した方からは、「県外から月に数回、状況確認のために訪問するのが負担だ」「自分が住まない家の管理に時間を割きたくない」といった声も聞かれ、所有者の負担は深刻な課題となっています。
この状況下で活用事例が増えているのが、空き家管理代行サービスです。
この記事では、空き家管理代行サービスの概要や利用するメリット・デメリット、費用相場や選ぶ基準について解説します。
第1章 空き家管理代行サービスとは
空き家管理代行サービスとは、空き家の所有者に代わって、専門の事業者が不動産の維持管理を代行するサービスのことです。
定期的な巡回や清掃、設備の点検などを通じて、空き家が適切な状態で保たれるようサポートします。また、空き家管理代行サービスを提供する事業者によっては、周辺住民からのクレーム対応を一時的に担うこともあります。
空き家管理代行サービスは、不動産の維持管理に時間を割きづらい方にとって、有効な選択肢の一つと言えるでしょう。具体的なサービス内容は、第2章で解説します。
第2章 空き家管理代行サービスの主な業務内容
空き家管理代行サービスの主な業務内容として、以下のものが挙げられます。
- 外部・内部の状況確認: 建物の外周や敷地内の巡回など
- 室内管理: 定期的な換気・通水など
- 環境整備: 庭の除草・樹木の剪定など
- 定期報告: 管理作業の内容や現地の状況などの共有
空き家管理代行サービスは、主に空き家の敷地内の維持管理・周辺環境の異変の有無をチェックする業務が多くあります。
また、定期的な情報共有をサービスの一環とする事業所もあるため、自分の目で直接確認したい問題があった際に、スムーズに対応できます。
ただし、提供されるサービス内容は、事業者や契約プランによって大きく異なる点に注意が必要です。例えば、基本的な巡回と報告のみを基本プランとし、室内での作業や庭の手入れは別途オプション契約となるケースが多くあります。
そのため、サービスの利用を検討する際は、まず自身が管理のどの範囲を事業者に委ねたいかを明確にし、それに見合ったサービス内容と費用を比較検討することが重要と言えます。
第3章 空き家管理代行サービスを利用するメリット・デメリット
3-1 利用するメリット
空き家管理代行サービスを利用するメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
- 空き家管理の手間が削減される
- 空き家の資産価値を保てる
- 犯罪リスクを低減できる
- 災害時の一次対応を任せられる
3-1-1 空き家管理の手間が削減される
空き家管理代行サービスを利用する大きなメリットの1つが、空き家管理の手間を削減できる点です。
導入部分で述べた通り、定期的な管理が困難な所有者は少なくありません。また、仮に時間を確保できたとしても、その時間を本業や家庭など、他の優先すべきことに使いたいと考える方もいるでしょう。
空き家管理代行サービスへ委託することで、所有者自身が管理に携わる時間を最小限に抑えられ、精神的な負担の軽減に繋がります。
3-1-2 空き家の資産価値を保てる
空き家管理代行サービスの適切な活用は、空き家の資産価値を保つことに繋げられます。
一般的に、管理が行き届いていない空き家は、資産価値が低下する傾向にあります。
物件の管理がされていない空き家では、定期的な通水がないための設備劣化や、壁や柱の老朽化への対応の遅れなどが生じる場合があります。結果として、通常の物件よりも建物の劣化が早まるため、中古物件として売却する際に購入希望者が見つかりにくくなる一因となります。
空き家管理代行サービスを通じて定期的な清掃や設備点検を行うことは、こうした資産価値の低下を抑制する効果が期待できます。
そのため、将来的に、空き家の売却を考えている方は、資産価値の維持の視点から見て、空き家管理代行サービスを依頼するメリットがあると言えます。
3-1-3 犯罪リスクを低減できる
空き家管理代行サービスの活用は、犯罪リスクの低減にもつながります。
長く放置されている空き家などの不動産は、犯罪に利用される恐れがあります。
例えば、2018年、千葉県内の空き家が、大量に密輸された覚せい剤を受け渡すための基地として使われていた事件が発覚しました。
管理が行き届いておらず、定期的なチェックが入っていない空き家は、犯罪者の目には非常に都合のいいものに映ります。空き家内を不正に利用したとしても、発覚までに時間がかかり、通報される可能性が低いと考えられるためです。
また、人が住んでおらず、所有者の巡回がない空き家は、空き巣に狙われるリスクが高まります。
空き家管理代行サービスによる定期的な巡回は、犯罪を未然に防ぐ抑止力となることが期待できます。所有者の知らないところで犯罪に利用されないためにも、空き家管理代行サービスの利用の検討は重要と言えます。
3-1-4 災害時の一次対応を任せられる
空き家管理代行サービスによっては、災害時の一次対応を任せられることもあります。
災害発生時、管理不測の空き家は、倒壊等により物件が破損したり、それに伴い周辺住民にけが等をさせてしまったりする可能性が、通常の物件より高まります。
特に、1981年5月以前に建築された建物は、旧耐震基準によって建築されており、より倒壊等のリスクが高いといえます。これは、旧耐震基準が「震度5程度の地震に耐えうる住宅」と定められていたためです。
物件の破損や、周辺住民にけがを負わせた等があった場合は、通常、物件の所有者が対応にあたる必要があります。しかし、遠方に住んでいる場合など、スムーズな対応が難しいケースは少なからずあります。
空き家管理代行サービス事業者によっては、災害発生時の対応を一部代行することがあります。
具体的には、災害発生時に空き家へ向かい、建物の損壊状況や周辺への影響の有無を確認します。所有者に対して空き家の状況報告をしたうえで、必要に応じて近隣住民への聞き取りや、保険会社への連絡といった賠償に向けた初動を代行するサービスも存在します。
災害発生時の対応の負担を和らげたい方は、空き家管理代行サービスへの依頼を検討するメリットはあると言えるでしょう。
3-2 利用するデメリット
空き家管理代行サービスを利用するデメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
- 継続的に費用が発生する
- 適切な業者の選定が難しい
3-2-1 継続的に費用が発生する
多くの場合、空き家管理代行サービスの利用には、継続的に費用が発生します。
詳細は第4章で解説しますが、空き家周辺の巡回だけでなく、建物内部の維持管理や、災害時の対応などの高度な業務の代行も依頼する場合、少なくない費用が必要となります。
多くの空き家は直接的な収益を生まないため、その維持管理のために継続的な支出が伴う点は、デメリットと言えるでしょう。
ただし、3-1-2でも触れた通り、空き家管理代行サービスを通して、空き家の資産価値を低下させないことに繋がる側面もあります。
空き家管理代行サービスを利用する際は、継続的に発生する費用と、それにより維持できる資産価値とのバランスの意識が重要と言えます。
3-2-2 適切な業者の選定が難しい
空き家管理代行サービスは、適切な業者を選定するのが難しい場合があります。
近年、空き家管理代行サービスは、空き家の増加に合わせて、全国的にサービスが拡大しています。
しかし、空き家管理代行サービスは、特別な技術や知識が無くても開業できることから、質が低い業者も増加している現状があります。
中には、「管理をし、特に問題はない」という報告をしつつも、ほぼ管理がされていなかったという口コミが投稿されている事業所もあります。
このことから、空き家管理代行サービスは、適切な業者の選定が難しくなっており、代行サービスを活用する際のデメリットになっていると言えます。
空き家管理代行サービスの利用を検討する際は、既に代行を依頼している知人にヒアリングしたり、信頼できる第三者の専門家に相談したりすることで、慎重に情報収集していきましょう。
第4章 空き家管理代行サービスの費用相場
空き家管理代行サービスの費用相場は、以下の通りとなっています。
- 定期的な巡回のみ:月額3,000円~7,000円程度
- 定期巡回+敷地内の維持管理:8,000円~20,000円程度
空き家管理代行サービスは、提供サービスの範囲によって、費用が大きく変わります。
例えば、周辺地域や敷地内の定期的な巡回のみの場合、月額3,000円〜7,000円程度が費用相場となります。なお、事業者によっては、巡回頻度を減らすことで月額料金をさらに低く設定している場合もあります。
また、巡回に加え、建物内部の清掃等も依頼する場合は、月額8,000円〜20,000円程度が費用相場となります。巡回頻度と同様、清掃の頻度や清掃する範囲によって、料金は変動する傾向にあります。
加えて、冬期の雪かきや年度末の大掃除など、季節ごとにオプション料金が発生することもあります。
ただし、あくまでも上記は大まかな目安です。実際の料金は、事業者や空き家がある地域によって変動するため、サービスの利用を検討する際は、必ず複数の事業者から見積もりを取得し、比較検討することが重要と言えます。
第5章 空き家管理代行サービスを選ぶ基準
5-1 対応エリア
空き家管理代行サービスを選ぶ際、必ず確認すべきなのが、サービス事業者の対応エリアです。
近年、多くの市町村で空き家管理代行サービスは増えていますが、事業者ごとに、対応可能なエリアが異なることが多くあります。
例えば、同じ市内であっても、ある事業者は住宅が密集する中心市街地に限定している一方、別の事業者は郊外の地域まで広くカバーしているなど、事業者ごとに対応範囲が異なるケースは少なくありません。
そのため、空き家管理代行サービスの利用する際は、サービス事業者の対応エリアを確認することが不可欠と言えるでしょう。
5-2 提供サービスの種類
空き家管理代行サービスを選定する際、どのようなサービスが提供されているかの調査も重要となります。
第2章で述べた通り、空き家管理代行サービスは、空き家の点検・設備の維持管理の領域において、多くのサービスを提供しています。
しかし、すべての事業者が、第2章で述べたサービスを提供している訳ではありません。
例えば、代行サービスの月額料金が安価である代わりに、提供するサービスは定期巡回と報告のみの事業者があります。反対に、月額料金が高額な分、巡回や清掃だけでなく、郵便物の転送もサービスに含んでいる事業者もあります。
事前の確認を怠ると、「期待していたサービスが含まれていなかった」といった認識の齟齬が生じる可能性があります。
そのため、自身が空き家管理のうち、どの領域を委託したいのかを明確にすることが、空き家管理代行サービスを選定するうえで重要と言えます。
5-3 費用
空き家管理代行サービスを選定する際は、複数業者の費用の比較も重要となります。
第4章でも述べた通り、空き家管理代行サービスの費用相場は、数千円から数万円程度となっており、依頼する代行業務の内容によって変動します。
しかし、事業者の中には、市場調査が不十分な利用者を対象に、相場からかけ離れた料金を提示するケースも見られます。また、月額の基本料金を低価格に見せかけ、実際には避けられないオプション作業などを高額に設定している料金体系の事業者も存在するため、注意が必要です。
上記のような悪質な業者ではなく、適切な費用で質の高いサービスを提供している業者を選定するためにも、複数の事業者から相見積もりを取っておくことを推奨します。
その上で、契約を締結する前に、追加料金が発生する可能性のある項目について、その条件を書面で明確にしておきましょう。
5-4 口コミや解決事例
空き家管理代行サービスを選定する際は、各事業者の口コミや問題解決事例を事前に確認しておくことを強く推奨します。
3-2-2でも述べた通り、近年、空き家管理代行サービスは増加傾向にあり、その中で、十分な管理能力がない事業者も増えています。そのため、事業者選定を慎重に行わない場合、管理経験が乏しい、あるいはサービスの質が低い事業者へ依頼してしまう可能性が高まってしまいます。
空き家管理代行サービスの口コミや解決事例は、事業者の信頼性を判断する上で、客観的な指標の一つとなります。利用者の評価を事前に確認しておくことは、満足度の高い事業者選定に繋がるため、重要なポイントと言えます。
なお、空き家管理代行サービスの口コミを確認する際は、高評価のものだけでなく、低評価のものの確認が重要となります。事業者によっては、顧客に高評価の口コミを強要するケースがあるためです。
まとめ:空き家を相続した際にはお気軽にご相談ください
この記事では、空き家管理代行サービスの概要やサービス内容に触れたうえで、利用するメリット・デメリットや、サービスを選ぶ際の基準について解説しました。
記事全体で解説した通り、空き家管理代行サービスを活用すれば、空き家内部の環境の維持・空き家の資産価値の低下の防止に繋がります。
しかし、将来的な空き家の売却や、何らかの用途への活用を想定した場合、維持管理が出来ているとしても、そのまま所有し続けるのは現実的ではありません。
そのため、空き家の環境や治安の維持をするだけでなく、信頼できる不動産会社に相談するなど、適切な方法で手放すための行動も並行してすべきと言えます。
「住まいの賢者」では、空き家の相続に強い司法書士と連携し、空き家の相続・売却や土地活用に関する相談や依頼を受け付けています。空き家の相続にまつわるお悩みがある方は、ぜひお気軽にお問い合せください。
不動産の無料相談なら
あんしんリーガルへ
電話相談は9:00〜20:00(土日祝09:00〜18:00)で受付中です。
「不動産のブログをみた」とお問い合わせいただけるとスムーズです。