別荘を相続したときにやるべきことは?いらない場合の活用方法も紹介

別荘を相続したときにやるべきことは?いらない場合の活用方法も紹介
執筆者: 中西孝志

はじめに

親や親族が所有していた別荘を相続することになっても、実際には嬉しいと思える方ばかりではありません。相続人の多くが「使い道がない」「管理が大変」「税金や維持費が高すぎる」などネガティブな心情の場合も見受けられます。

特に、住まいが遠方だったり、活用の見込みがない別荘は「負動産」と化すリスクすらあるため注意が必要です。

本記事では、別荘を相続したときにやるべき手続きの流れと別荘の相続にかかる税金を解説します。使い道がない場合の対処法を押さえて、トラブルや費用の増大を防ぎましょう。

第1章 別荘を相続したときにやるべきことは?

別荘を相続したら、まずは手続きを進める必要があります。放置すると、管理責任や税負担だけが残ってしまい、後々のトラブルの火種になるため注意しましょう。

では、別荘を相続したときにやるべきことをステップごとに解説します。

STEP① 遺言の有無の確認をする

最初に確認すべきことは、被相続人が遺言を残しているかどうかです。

遺言書があれば、遺言書の記載に従って別荘の帰属が決まります。公正証書遺言であればそのまま登記が可能ですが、自筆証書遺言の場合は家庭裁判所での検認手続きが必要です。

また、別荘を相続するかどうかの判断もこの段階で行います。価値がある物件なのか、維持が可能か、負担が大きすぎないかなどの観点で冷静に検討しましょう。

「有効活用できないので不要」と決めつけず、使い道を見極めることが重要です。

STEP② 遺産分割の協議をする

遺言がない場合や、遺言で指定されていない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行います。別荘は不動産であるため、分割が難しい資産です。「売って現金化する」「誰か一人が取得する代わりに代償金を払う」など、現実的な案で合意を目指します。

このとき注意したいのが、法定相続分による相続登記を先にしてしまうと、協議内容が法定相続と異なる場合に再度登記をやり直す必要が出てくることです。

相続登記は、協議が整ってから行うことが基本です。

STEP③ 相続登記をする

遺言または遺産分割協議によって別荘の所有者が決まったら、不動産の名義変更である「相続登記」を行います。2024年4月から、相続登記は義務化され、相続を知った日から3年以内に行わなければ過料の対象になります。

登記の際には、被相続人の除籍謄本や相続関係説明図、遺産分割協議書などが必要です。手続きは自分でも可能ですが、登記に不慣れな方は司法書士に依頼するとよいでしょう。

相続登記を済ませることで、不動産の管理や処分が正式に可能となります。

2章 相続したけれど「別荘はいらない」と思う人も多い理由

一見すると魅力的な資産であるはずの別荘ですが、相続したけれど「いらない」と感じてしまう方も珍しくありません。なぜなら、日常的に利用する機会が少なく、維持費や手間がかかるうえ、売却も簡単ではないからです。

そのため「別荘だけいらないから相続放棄したい」という声もありますが、相続放棄は原則としてすべての財産を放棄することを意味します。別荘だけを選んで放棄することはできないため注意しましょう。

また、別荘は売却したくても、買い手が見つかりにくいケースが多く、維持コストだけが延々とかかる状態になりがちです。

2-1 別荘には維持費や固定資産税がかかる

別荘を所有すると、利用していなくても維持費や税金が発生します。

固定資産税はもちろん、地域によっては別荘管理費や共益費なども必要になることも多いでしょう。

また、草刈りや清掃、水道・電気・ガスの点検など、定期的な物理的管理も必要です。使用頻度が少ないにもかかわらず、コストと手間ばかりがかかるため、結果として「いらない」と感じる要因となります。

2-2 相続した別荘を放置するとどうなる?

別荘を仕方なく相続したものの、使い道がないことから「とりあえず放置しておこう」と思う方もいますが、空き家の放置は危険です。

別荘を放置し続けると、老朽化が進み、倒壊や景観悪化のリスクが高まります。そのうち行政から「特定空き家」に指定され、最終的には行政代執行による強制解体もあり得ます。

また、空き家を長期間放置することで、課税強化や補助金の対象外になるなど、税務リスクも出てくるため相続人は管理を怠らないようにしなければなりません。

3章 別荘の相続にかかる税金

別荘を相続する場合、忘れてはならないのが税金です。

相続税に加えて、引き継いだあとは固定資産税などの継続的な負担も発生します。

特に、別荘は居住用ではないため、税務上の優遇が受けられないことも多く、評価額が高くなりやすい特徴があります。現金化しにくい不動産にもかかわらず、税負担が重くのしかかるケースも珍しくないでしょう。

3-1 別荘は小規模宅地等の特例の対象外

相続税の計算において「小規模宅地等の特例」を利用すれば、一定の不動産について評価額を最大80%減額できます。

しかし、これはあくまで被相続人の居住用や事業用に限られた制度です。自分のリゾート用やセカンドハウスとして使っていた別荘は対象外となります。

したがって、評価額がそのまま課税対象になり、高額な相続税が発生する可能性があります。特に、都市部の別荘や人気観光地の物件では注意が必要です。

3-2 別荘の相続税評価額の計算方法

別荘の相続税評価額は「路線価方式」または「倍率方式」で計算されます。市街地であれば路線価が適用され、郊外の非課税地では倍率方式が使われることが一般的です。

建物部分は、固定資産税評価額をそのまま使います。注意点として、建物が古いほど評価額は下がりますが、土地の評価は立地によって高くなることもあり、油断はできません。

たとえ古い物件であっても、土地の価値が高ければ、相続税額が大きくなる可能性があるため、事前に税理士などの専門家に相談してシミュレーションしておくとよいでしょう。

4章 相続した別荘の活用方法

相続した別荘を活用して持ち続けるか、それとも売却するか、方針を明確にすることが重要です。方針を決めずに放置すると、費用の負担とリスクだけが増えていきます。

では、相続した別荘の活用方法を紹介します。

4-1 売却をして現金化する

別荘を使う予定がなかったり、維持が負担に感じる場合は、思い切って売却して現金化することが有力な選択肢です。

不動産会社や別荘専門の買取業者に査定を依頼し、適正な価格での売却を目指しましょう。

ただし、需要の少ないエリアでは買い手が見つかりにくいため、時間がかかることもあります。その場合は、価格を下げたり修繕を行うなどの工夫が必要です。

4-2 セカンドハウスとして維持する

自分や家族が定期的に訪れるのであれば、セカンドハウスとして活用する選択もあります。リモートワークが広がった今では、週末や長期休暇に利用する拠点としてのニーズも高まっています。

ただし、定期的な掃除や管理、修繕は必要です。水回りや屋根などの老朽化に注意し、使用頻度が少ない場合でも、空気の入れ替えや防犯対策を怠らないようにしましょう。

必要があれば、空き家管理サービス会社に依頼する方法も有効です。

4-3 賃貸・民泊運用をする

観光地やリゾートエリアの別荘であれば、賃貸や民泊運用によって収益化を図ることもできます。マッチングサイトなどのプラットフォームを使えば、空いている期間だけ貸し出すことも可能です。

ただし、地域によっては民泊営業に制限がある場合や、届け出・許可が必要なケースもあるため、事前に自治体の条例を確認しましょう。

また、賃貸に出す場合は、内装や設備の整備も重要なポイントになります。

4-4 空き家バンクに登録する

活用予定がなく、売却も難しい場合は、自治体が運営する「空き家バンク」に登録することも有効です。

空き家バンクに登録することで、自治体による補助金やリフォーム支援制度が利用できることもあります。また、最終的に移住希望者や地方での暮らしを求める方とマッチングして譲渡や寄付という形で手放すことも可能です。

5章 上手に別荘を売却するためのポイント

別荘の売却は、通常の不動産売却よりも工夫をしなければなりません。なぜなら、買い手が限られているうえ、築年数や立地、管理状態によって大きく価格が左右されるからです。

では、別荘をスムーズに売却するために押さえておきたいポイントを解説します。

5-1 売却にかかる税金を把握しておく

別荘を売却すると、その利益に応じて譲渡所得税がかかります。

譲渡所得税を計算する取得費は、被相続人や贈与者が別荘を買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算します。

相続で取得した場合、相続人や受贈者が支払った登記費用や不動産取得税の金額も取得費に含まれるため、注意しましょう。

また、所有期間が5年以下か5年超かで税率が異なり、短期譲渡は約39%、長期譲渡は約20%と大きな差があります。

取得費や譲渡費用を差し引いた正確な利益を把握するためにも、税理士などの専門家に相談して間違いがないように進めましょう。

5-2 仲介手数料や登記費用などの諸費用を確認しておく

売却時には、不動産会社への仲介手数料や登記の変更費用、測量費用などさまざまな諸費用が発生します。

諸費用は、売却価格から差し引かれるため、手元に残る金額は想像より少ないことも珍しくありません。

売却益が出る場合には譲渡所得税、赤字でも登記費用はかかるため、事前にシミュレーションしておくと安心です。あらかじめ費用の総額を見積もっておきましょう。

5-3 管理と修繕で物件価値を高める

売却前に建物の状態を確認し、必要な修繕をしておくことで物件の印象は大きく変わります。特に水回りや外壁、屋根の劣化は買い手にとって不安材料になるため、最低限の修繕は行っておくことが望ましいでしょう。

また、室内の整理整頓や清掃も効果的です。長期間使用していなかった場合は、空気の入れ替えやカビ対策なども実施しておきましょう。

管理が行き届いていることが分かれば、買い手からの信頼も得やすくなります。

6章 相続した別荘を売却する場合の注意点

相続した別荘を売却する際には、法的に気をつけるべきポイントがあります。

手続きを間違えると、買い手が見つかっても売れなかったり、法的なトラブルに発展するおそれがあるため注意しましょう。

では、相続した別荘を売却する場合の注意点を解説します。

6-1 相続人が複数いる場合の手続きは?

別荘を相続した相続人が複数いる場合は、全員の同意がなければ売却はできません。

遺産分割協議で誰が売却権限を持つかを明確にし、必要であれば「代表相続人」に一任するなどの手続きが求められます。

また、協議が整った内容は書面にして残すことが大切です。

あとから「同意していない」と主張されるリスクを避けるためにも、遺産分割協議の内容を公正証書化しておくとより安心です。

6-2 売却前のポイント

売却活動を始める前に、相続登記が完了しているか確認しましょう。名義が被相続人のままだと売却ができません。

次に、不動産会社による査定を受けて、市場価格を把握します。権利関係や境界、担保の有無などを登記簿で確認し、問題があれば早めに対処しましょう。

売却前に事前確認することで、トラブルの回避につながります。

6-3 売却活動のポイント

売却を成功させるには、物件の魅力を適切に伝えることが重要です。立地や築年数、周辺環境だけではなく、修繕履歴や管理の状態もアピール材料になります。

たとえば「定期的に清掃・点検をしていた」「最近屋根をリフォームした」などの情報は、買い手の安心材料となるでしょう。また、別荘ならではの魅力眺望や静けさ、自然環境などを写真や説明文で具体的に伝えるとより効果的です。

まとめ:相続した別荘は「放置しない」ことが最大の対策

別荘を相続したときに避けるべきなのは「よく分からないからとりあえず放置する」ことです。別荘は利用頻度が低く、固定資産税や管理費などのコストがかさむ資産です。

活用や売却の意志がないまま放置すれば、結果として資産ではなく「負債」になってしまいます。相続した瞬間から、別荘をどう管理するのか、売るのか貸すのかなどの出口戦略を考えておかなければなりません。

必要であれば専門家の力を借りて、早い段階で判断と行動を起こしましょう。相続トラブルや費用の増大を防ぐためにも、放置しないことが最善の対策です。

「住まいの賢者」では、司法書士と連携して、相続登記から活用・売却・放棄の相談まで一括で対応しています。別荘を放置することでリスクや費用が膨らむ前に、ぜひ無料相談をご活用ください。

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この記事の執筆者

中西 孝志(なかにし たかし)

中西 孝志(なかにし たかし)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/FP2級技能士/損害保険募集人

約20年の実務経験を活かし、お客様の潜在ニーズを汲み取り、常に一方先のご提案をする。お客様の貴重お時間をいただいているという気持ちを忘れず、常に感謝の気持ちを持つことをモットーとしている。

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