はじめに
相続で実家を引き継いだものの、離れて暮らしていて活用する予定もない場合、不動産の売却を検討している方も多いのではないでしょうか。しかし、不動産会社に相談すべきなのか、税理士や司法書士に頼るべきなのか判断に迷う方は少なくありません。
本記事では、状況に合わせた不動産売却の相談先を解説します。相談する際の注意点も紹介しているので、不動産売却を検討中の方はぜひ参考にしてください。
1章 不動産売却の場面に応じた相談相手
不動産を売却する際は、状況によって相談すべき相手が変わります。「誰に、どんな内容を相談すべきか」を整理しておくと、スムーズに手続きを進められるでしょう。
1-1 不動産売却全般は不動産会社
不動産を売却しようと考えた際には、最初の相談先として不動産会社を選ぶのが一般的です。不動産会社では、売却価格の査定から販売戦略の提案、広告活動や購入希望者の紹介、売買契約の締結、物件の引き渡しまで、売却の流れを一通りサポートしてくれます。
不動産会社に相談する大きなメリットは、査定や初期の相談が無料で行えることです。実際に売却が成立するまでは費用が発生せず、仲介手数料は成約後に支払う仕組みとなっています。そのため、売却を検討し始めた段階でも気軽に相談でき、費用の面で不安を抱く必要がありません。
さらに、不動産会社は地域の市場動向に精通しているため、過去の成約事例や周辺の取引状況を踏まえた現実的な売却価格を提示してくれます。売却方法についても、一般的な仲介による売却のほか、早期の現金化を重視する場合には買取を提案するなど、状況に応じて複数の選択肢を示してくれる点が心強いポイントです。
住まいの賢者では、司法書士グループが運営する不動産会社として、不動産売却に関する幅広い相談に対応しています。無料相談も承っておりますので、不動産の売却をお考えの方はお気軽にお問い合わせください。
1-2 特例の適用や確定申告は税理士
不動産を売却すると譲渡所得税がかかる場合があります。特に相続した不動産を売却する際は、居住用財産の3,000万円特別控除や相続財産を譲渡した場合の軽減措置など、様々な特例の適用が検討できたりするため、税金の計算が複雑になりやすいのが特徴です。こうした判断を自分だけで行うのは難しく、間違えれば余計な税金を払ってしまう可能性があります。
税理士に相談すれば、売却益の計算方法から特例の適用可否、節税につながる方法まで具体的にアドバイスを受けられます。また、翌年に行う確定申告の書類作成や提出を代行してもらえるため、本業で忙しい方でも安心して手続きを済ませられるでしょう。
1-3 権利関係や離婚・相続によるトラブルは弁護士
不動産の売却では、権利関係の複雑さからトラブルに発展することがあります。例えば相続した不動産が兄弟姉妹との共有名義になっている場合、売却には全員の同意が必要です。
意見が割れて話し合いが進まないと、売却が停滞する原因となります。また、離婚に伴って自宅を売却する場合も、財産分与の割合やローン残債の処理方法をめぐって争いになるケースが少なくありません。
このような場面で頼りになるのが弁護士です。弁護士は交渉や訴訟に対応できる専門家であり、相続人や元配偶者との利害調整を法的根拠に基づいて進められます。場合によっては遺産分割協議書の作成をサポートしたり、内容証明郵便を通じて正式な意思表示を行ったりすることも可能です。
さらに、売却契約を締結する段階でも弁護士に契約書の確認を依頼すれば、不利益な内容での契約を回避できます。契約内容が曖昧なまま進めてしまうと、後に損害賠償を請求されるリスクがあります。弁護士による事前チェックを受ければ、将来的なトラブルの芽を摘むことができるでしょう。
1-4 登記関連は司法書士
不動産を売却する際には、登記手続きが欠かせません。所有者の名義が正しく登記されていなければ売買契約を結ぶことができず、引き渡しまで進められないためです。このような登記関連で相談すべきなのが司法書士です。
相続した不動産を売却する場合、まず行うべきは相続登記です。親名義のままの実家を売却することはできないため、相続人全員の話し合いを経て、売却を行う人の名義に登記を変更しなければなりません。この手続きを司法書士に依頼し必要書類の収集や申請を代行してもらうことで、書類不備や期限遅れによるトラブルを回避できます。
2024年4月からは相続登記が義務化されました。相続で不動産を取得した人は、原則として3年以内に相続登記を申請する必要があると法律で定められています。正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料を科される可能性があります。
また、売却時の所有権移転登記や、住宅ローンが残っている場合の抵当権抹消登記も司法書士が対応してくれます。登記は自分で法務局に申請することも可能ですが、専門知識が求められ、記入ミスや必要書類の不足で受理されないこともあります。司法書士に依頼すれば、相続登記から売却に伴う登記まで一括して任せられるため、安心して売却手続きを進められるでしょう。
1-5 不動産の価値を正確に知りたいなら不動産鑑定士
不動産の売却価格は、不動産会社に依頼すれば無料で査定してもらえます。しかし、その査定額はあくまで市場での取引を想定した目安であり、公的に通用するものではありません。より客観的で信頼性の高い評価を求める場合には、不動産鑑定士に依頼するのが一般的です。
不動産鑑定士は、不動産の価値を判定する国家資格者であり、依頼すれば不動産鑑定評価書を作成してくれます。不動産鑑定評価書は、裁判所や税務署などの公的機関でも有効な資料として扱われるため、相続財産の分割や親族間のトラブル防止、税務調査への対応といった場面で特に役立ちます。例えば、相続した不動産を売却する際に兄弟姉妹で「いくらで売るのか」をめぐって意見が食い違うことがありますが、鑑定士の評価を基準にすれば公平な話し合いがしやすくなります。
また、土地の評価額と売却価格の差が大きいと税務署から指摘されることがありますが、鑑定評価書があれば、適正な価格で取引したことを証明できます。費用は不動産会社の査定と異なり数十万円程度かかるのが一般的ですが、その分だけ信頼性の高い資料を得られるのがメリットです。
1-6 農地売却を検討しているなら行政書士
不動産売却の中でも、農地の売却は特殊な手続きが必要になります。こうした農地ならではの許可申請や届出を専門に扱えるのが行政書士です。
農地を第三者に譲渡するには農地法に基づき、農業委員会や都道府県知事の許可を得なければなりません。さらに宅地や駐車場に転用して売却する場合には、転用の申請も必要です。
これらの申請は必要書類が多く、専門的な判断も伴うため、自分だけで進めると不備や遅延に繋がるリスクがあります。最悪の場合、許可が下りずに契約が成立しない可能性もあります。行政書士に依頼すれば、必要書類の作成から役所への提出までを代行してもらえるため、手続きを効率的かつ確実に進められます。
1-7 住宅ローンの返済途中なら金融機関
売却を検討している不動産に住宅ローンが残っている場合は、必ず金融機関に相談する必要があります。住宅ローンが残っている物件には抵当権が設定されており、買主への所有権に先立ってまたは同時に、この抵当権を抹消する必要があります。売却の流れとしては、決済日に買主から受け取る売却代金で住宅ローンを完済し、同時に抵当権の抹消と所有権の移転を行うのが一般的です。
金融機関に早めに相談しておけば、現在の残高や繰上返済にかかる費用、違約金の有無を事前に確認できます。また、決済日に必要となる書類の準備や司法書士との連携も銀行側でサポートしてくれるため、スムーズに売却手続きを進められます。こうした段取りを怠ると、残債が返済できずに売却が進まないといったトラブルに繋がってしまいます。
さらに、売却代金だけではローンを完済できないケースも少なくありません。その場合は不足分を自己資金で補うか、銀行の承諾を得て任意売却を選択する方法があります。金融機関への相談自体は無料で行えるため、住宅ローンが残っている不動産を売却する場合は、できるだけ早い段階で金融機関に連絡しましょう。
1-8 不動産に関する幅広い悩みなら市役所や都道府県が運営している相談窓口
不動産の売却について悩んでいるものの、どこに相談すべきか分からない場合は、市や都道府県が設けている窓口への相談も選択肢の一つです。公的な相談窓口は、不動産の売却や相続に関する一般的な疑問から、法律や税金の基礎知識まで幅広く対応しています。
自治体の相談窓口の強みは、中立的な立場から助言を受けられることです。営利目的ではないため、売却を急がされる心配もなく、安心して相談できます。さらに、司法書士や税理士などの専門家と連携していれば、必要に応じて専門家の無料相談会へ案内してもらえる場合もあります。
また、自治体独自の支援制度や補助金に関する情報を得られるのも大きなメリットです。解体費用の補助や相続関連のサポートなど、民間の不動産会社では得られない情報を入手できる可能性があります。
1-9 空き家の売却に困っているなら空き家バンク
相続した実家が長く空き家になっている場合や、築年数が古く不動産会社に相談してもなかなか買い手が見つからない場合には、空き家バンクの活用を検討しましょう。空き家バンクとは、市町村や都道府県が運営する制度で、売却や賃貸を希望する空き家の情報を自治体のホームページなどで公開し、購入や移住を希望する人とのマッチングを支援してくれる仕組みです。
空き家バンクに登録すれば、移住希望者や地元で住宅を探している人に物件を広く知ってもらえます。通常の市場では扱いにくい老朽化した物件でも、リノベーションや地域活性化を目的とした買主が見つかる可能性があります。
自治体によっては、空き家の解体や改修に対して補助金を用意しているところもあり、売却活動を進めるうえで経済的な負担を軽減できる点も大きな魅力です。空き家の売却に悩んでいる場合は、まず自治体の公式サイトで空き家バンクの情報を確認し、登録や相談の手続きを進めてみましょう。
2章 不動産に関する相談をする際の注意点
不動産に関する相談をする際の注意点は以下の通りです。
- 不動産会社への相談は1社だけに留めない
- 費用の説明が不明瞭な不動産会社・専門家には依頼しない
- 費用を抑えるために誰にも相談せずに1人で進めようとしない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1 不動産会社への相談は1社だけに留めない
不動産会社に査定や売却の相談をする際は、必ず複数の会社を利用しましょう。査定額は不動産会社によって差が出ることが多く、同じ物件でも数百万円単位で見積もりが異なるケースがあるためです。1社だけの意見に頼ると、相場より安い価格で売却してしまったり、販売活動の方法が偏ったりするリスクがあります。
複数の会社に査定を依頼すれば、市場相場を把握できるだけでなく、信頼できる担当者と出会える確率も高まります。不動産売却を成功させるためには、最初から1社に絞り込まず、複数の会社の意見を比較検討する姿勢が大事になるでしょう。
2-2 費用の説明が不明瞭な不動産会社・専門家には依頼しない
不動産売却を進める際には、不動産会社や司法書士、税理士、弁護士など、様々な専門家に依頼する場面があります。その際に注意すべきなのが、費用の説明が曖昧な相手を選ばないことです。
不動産会社の場合、仲介手数料の上限は法律で決められていますが、実際に請求される金額の内訳やタイミングは会社ごとに異なります。事前の説明がなく、契約後に想定外の費用が発生すると、売却益が大きく減ってしまう可能性があります。報酬の詳細を明かさないケースや、後になって追加費用を請求するケースもあるため注意が必要です。
安心して依頼するためには、見積書や契約内容を必ず確認し、費用の根拠や発生条件について納得がいくまで質問することが大切です。丁寧に説明してくれるかどうかは、信頼できる相手かを見極める指標になるでしょう。
2-3 費用を抑えるために誰にも相談せずに1人で進めようとしない
不動産売却にかかる専門家への報酬を節約しようと、誰にも相談せずに自分だけで進めようとするのは危険です。例えば、売買契約書を自己流で作成した場合、特約の不備や条文の抜け落ちによって、引き渡し後に補償を巡るトラブルが発生する恐れがあります。
また、登記手続きを自分で行うことも可能ですが、必要書類の不足や記入ミスによって法務局に受理されず、結果的に決済が滞り、買主から契約不履行を主張される事態も考えられます。
専門家に相談せずに進めてトラブルが発生すれば、後から対応が必要になり、さらに多くの費用と時間を失うことになりかねません。最初から専門家に依頼することで、トラブルを回避しスムーズに不動産の売却手続きを進められるでしょう。
まとめ:不動産売却で困ったら状況に合う相手に相談しよう
不動産を売却する際には、状況によって相談すべき相手が異なります。一般的な売却の流れは不動産会社が中心ですが、税務や相続・離婚の問題、登記や農地売却など、専門的な知識が必要な場面も少なくありません。
誤った判断を避けるためにも、複数の不動産会社や専門家に相談し、費用や条件を比較検討することが大切です。一人で抱え込まず、状況に応じた適切な相談先を見つけることで、不動産売却をスムーズかつ安心して進められるでしょう。
住まいの賢者では、司法書士法人グループの不動産会社として、売却に関する無料相談に対応しております。専門家を紹介することも可能なので、相談先に迷っている方はお気軽にお問い合わせください。
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