目次
はじめに
相続したマンションは、住む予定がなければ早めの売却を検討するのがおすすめです。所有しているだけで固定資産税や管理費がかかるうえ、空き家のまま放置すると資産価値の低下やトラブルの原因にもなります。
本記事では、相続マンションを売却するメリットから具体的な手順、かかる税金・費用、節税特例、注意点や不動産会社の選び方まで、司法書士法人のグループの不動産会社による監修で詳しく解説します。相続物件の売却で失敗しないために、ぜひ参考にしてください。
第1章 相続したマンションを売却するメリット
相続したマンションを売却するメリットは以下の通りです。
1-1 換価分割なら遺産の分配が簡単になる
相続したマンションを相続人同士で共有名義のまま保有すると、売却や賃貸などの処分には全員の同意が必要です。一人でも反対すれば手続きが進まず、売却のタイミングを逃して資産価値が下がる恐れがあります。
一方で、マンションを売却して現金化する換価分割を選べば、売却代金を法定相続分や協議で決めた割合に応じて分配できます。現金は分割がしやすく、管理負担も残らないため、相続人同士の関係悪化や長期的なトラブルを防ぐ効果があります。
1-2 固定資産税・維持管理費を負担しなくて済む
マンションを所有している限り、毎年固定資産税や都市計画税といった税負担が発生します。さらに、管理費や修繕積立金などのランニングコストもかかります。居住しない物件であってもこれらの費用は免除されず、年間で数十万円単位の出費になることも珍しくありません。
売却すれば、これらの固定的な支出を即座に止められ、金銭的な負担から解放されます。特に相続で取得したマンションが遠方にある場合は、維持管理の手間や交通費も不要となり、精神的な負担を軽減することも可能です。
1-3 空き家問題を回避できる
相続したマンションを放置して空き家状態にすると、室内の劣化や設備の故障が進み、資産価値が下がってしまいます。さらに、管理が行き届かないことでカビや害虫、漏水などのトラブルが発生し、修繕費用が膨らむケースもあるでしょう。
近年は空き家の増加が社会問題化しており、地方自治体によっては特定空家に指定されると固定資産税の優遇が外れ、税負担が増える可能性もあります。早めに売却して所有者を移転すれば、こうした空き家リスクを根本的に解消でき、資産の有効活用にも繋がります。
1-4 資金を確保できる
マンションを売却すれば、一度にまとまった現金を得られます。相続税や不動産の名義変更に伴う登記費用など、相続直後は何かと出費が重なる時期です。売却代金を充てれば、こうした支払いにも余裕をもって対応できます。
また、得られた資金は新たな不動産購入や投資、子どもの教育費、老後資金など、様々な目的に活用可能です。現金化しておくことで資金の流動性が高まり、予期せぬ支出にも柔軟に対応できるため、資産の安定運用にも繋がります。
第2章 7STEPで解説!相続マンション売却の流れ
ここでは、相続したマンションを売却する流れを、7つの手順に分けて解説します。
STEP① 相続人調査や物件調査
相続したマンションを売却する際は、最初に「誰が相続人か」と「物件がどのような状態か」を正確に把握しましょう。相続人調査とは、戸籍謄本などを調べて相続人を確定する手続きです。相続人が確定しないまま売却を進めると、契約後に無効となる恐れがあります。
また、物件調査とは不動産の権利関係や状態を正確に把握する作業です。登記簿謄本で所有者や抵当権の有無を確認し、管理規約や修繕履歴、管理費・修繕積立金の滞納状況なども調べます。現地での建物や周辺環境の確認、法務局・役所での権利・法令制限の調査、市場価格や取引事例の確認も欠かせません。
こうした調査は不動産売買に慣れていない方には負担が大きく、見落としがトラブルの原因になることもあります。司法書士法人と連携する不動産会社であれば、相続人の確定から物件調査まで一貫して対応でき、売却準備を安全かつ効率的に進められます。
STEP② 遺産分割協議を行う
相続人と物件内容が確定したら、遺産分割協議でマンションの扱いを決めます。相続人全員で集まり、売却する、特定の相続人が取得する、賃貸に出すなど方針を話し合い、合意内容を遺産分割協議書にまとめます。
売却して現金化する換価分割を行う場合は、売却代金の分配割合も明記します。署名押印には相続人全員の実印と印鑑証明書が必要です。
協議がまとまらないと売却手続きは進められず、相続税の申告(相続開始から10か月以内)にも影響します。相続人が多い場合や意見が分かれている場合は、弁護士などの専門家を交えて早期に合意形成を図ることが重要です。
STEP③ 相続登記を行う
遺産分割協議でマンションの取得者が決まったら、相続登記(所有権移転登記)を行います。相続登記とは、法務局で不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する手続きです。
2024年4月から相続登記は義務化され、相続を知った日から3年以内に申請しないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。被相続人名義のままではマンションを売却できないため、スムーズに売るためには早めの相続登記が必要です。
手続きには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書、不動産の登記事項証明書などが必要です。相続登記は自分で行うこともできますが、書類の不備や記載ミスがあると受理されず時間がかかるため、司法書士に依頼するとスムーズです。
STEP④ 相続税の申告・納付を行う
相続したマンションの評価額や他の遺産を含めた合計額が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告・納付が必要です。相続税の金額は、マンションの評価額を路線価や固定資産税評価額などをもとに算出します。
また、相続税の申告・納付期限は被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内です。超過すると延滞税や加算税がかかる可能性があるため注意しましょう。
STEP⑤ 不動産会社の査定を受ける
相続したマンションを売却する際は、不動産会社に査定を依頼し、市場での適正価格を把握する必要があります。査定を依頼する際は、必ず複数の不動産会社に依頼することがポイントです。会社によって得意とするエリアや物件タイプが異なり、提示価格や販売戦略にも差が出るためです。
また、高い価格を提示する会社が必ずしも良いとは限りません。販売実績や担当者の対応、売却プランまで含めて総合的に判断しましょう。
STEP⑥ 不動産会社と契約を結ぶ
査定結果や担当者の対応を比較検討したら、仲介を依頼する不動産会社を決定し、媒介契約を結びます。媒介契約には以下の3種類があります。
- 専属専任媒介契約:1社のみに依頼し、自分で見つけた買主との直接取引もできません。手厚い販売活動や報告が期待できます。
- 専任媒介契約:1社のみに依頼しますが、自分で見つけた買主との直接契約は可能です。販売活動の進捗報告義務があります。
- 一般媒介契約:複数の不動産会社に同時依頼できますが、販売活動や報告義務は限定的です。
契約形態によって販売戦略や情報公開の範囲が変わるため、売却希望時期や価格、販売力を考慮して選びましょう。
STEP⑦ 買主と売買契約を締結し決済が完了するとマンションを引き渡す
購入希望者が決まり、条件面で合意が取れたら売買契約を締結します。契約時には手付金(売買代金の5〜10%程度)を受け取り、契約書には引き渡し日や残代金の支払い方法などの条件を明記するのが一般的です。
引き渡し日は通常、残代金の決済日と同日に設定されます。決済当日は、買主から残代金を受け取り、司法書士立ち会いのもと所有権移転登記の申請を行った後、鍵や関連書類を引き渡します。
第3章 売却時にかかる税金・費用
相続したマンションを売却する際は、売却益だけでなく、様々な税金や諸費用が発生します。事前にどのような費用がかかるのか把握しておくことで、手取り額の見込みを正しく計算できます。
3-1 譲渡所得税
譲渡所得税は、マンションを売却して利益(譲渡所得)が出た場合にかかる税金です。他のマンション売却時にかかる費用と違い、確定申告によって納付する必要があります。税率は所有期間によって変わり、5年を超える長期譲渡所得と、5年以下の短期譲渡所得によって区分されます。
- 長期譲渡所得:15.315%(所得税)+5%(住民税)=20.315%
- 短期譲渡所得:30.63%(所得税)+9%(住民税)=39.63%
例えば売買価格が5,000万円、取得費や諸費用を差し引いた後の売却益が1,000万円だった場合、長期譲渡に該当すると約203万1,500円、短期譲渡に該当すると約396万3,000円の譲渡所得税がかかります。
なお、相続で取得したマンションの場合は被相続人の所有期間も通算されるため、被相続人が10年間所有していたマンションを相続した場合は、長期譲渡所得として扱われます。
3-2 登録免許税
登録免許税は、相続登記を行う際にかかる税金です。相続登記の登録免許税は「固定資産税評価額×0.4%」で求められます。つまり、固定資産税評価額が5,000万円なら、相続登記の登録免許税は20万円です。
3-3 印紙税
売買契約書を作成する際には、以下のように契約金額に応じた収入印紙を貼付する必要があります。
| 契約金額 | 軽減税率(不動産の譲渡に適用) | 
|---|---|
| 10万円超50万円以下 | 200円 | 
| 50万円超100万円以下 | 500円 | 
| 100万円超500万円を以下 | 1,000円 | 
| 500万円超1,000万円以下 | 5,000円 | 
| 1,000万円超5,000万円以下 | 1万円 | 
| 5,000万超1億円以下 | 3万円 | 
| 1億円超5億円以下 | 6万円 | 
例えば、相続したマンションを5,000万円で売却する場合、1万円の印紙税を納めることになります。
3-4 仲介手数料
仲介手数料は、不動産会社に売却の仲介を依頼した場合に支払う成功報酬です。売買価格に応じた仲介手数料の上限は以下の通りです。
- 売買価格が800万円超:売買価格×3%+6万円+消費税
- 売却価格800万円以下:30万円+消費税
例えば、売買価格が5,000万円の場合、仲介手数料の上限は5,000万円×3%=150万円、
150万円+6万円=156万円(税別)となり、消費税を加えると約171万6,000円です。
3-5 司法書士費用
登記手続きや書類作成を司法書士に依頼する場合、その報酬が発生します。費用は依頼内容や事務所によって異なりますが、5万円〜15万円程度が相場です。
3-6 戸籍・印鑑証明書などの実費
相続人の確定や登記申請のために必要な各種証明書の発行費用もかかります。1通数百円ですが、必要通数や郵送費などで金額は変動します。
第4章 相続したマンションを売却する際の節税に役立つ特例
相続したマンションを売却する場合、一定の条件を満たすことで譲渡所得税を軽減できる特例があります。ここでは、代表的な2種類の特例を見ていきましょう。
4-1 被相続人の居住用財産(空き家)を売った場合の特例
相続によって取得したマンションを売却する場合、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例を利用できる可能性があります。これにより、譲渡所得から最大3,000万円まで控除でき、譲渡所得税の負担を軽減することが可能です。
例えば売却益が2,500万円だった場合、全額が控除され、譲渡所得税はかかりません。ただし、要件を満たさない場合は適用できないため、売却を検討する段階で早めに不動産会社や税理士に確認することが重要です。
4-2 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例
相続したマンションを売却する際、相続税を納めている場合は相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例が利用できる可能性があります。取得費加算の特例は、相続税の課税対象となった財産を相続税申告期限の翌日から3年10ヶ月以内に売却した時、相続税額の一部を取得費に加算できる制度です。
例えば売却益が1,000万円、相続税額が400万円の場合、取得費加算後の課税対象は600万円となります。取得費を増やすことで譲渡所得が少なくなり、その分譲渡所得税を軽減できます。
第5章 相続したマンションを売却する際の注意点と不動産会社の選び方
相続したマンションを売却する場合は、手続きや税金の扱いが通常の売却と異なる点に注意が必要です。相続登記の完了や遺産分割協議書の作成が済んでいないと、売却手続きが進められません。また、譲渡所得税や特例の適用可否など、税務面の判断も早い段階で行うことが重要です。申告期限を過ぎると特例が使えなくなるケースもあるため、専門家に相談してスケジュールを組みましょう。
また、不動産会社を選ぶ際は、相続案件の売却実績があるかを確認してください。相続物件は権利関係が複雑なことも多く、登記や税務に関する基本的な理解を持ち、司法書士や税理士などの専門家と連携できる会社のほうがスムーズです。こうした連携体制があれば、法律や税務の判断が必要な場合も、適切な専門家を介して手続きを進められ、売却全体のスピードと安心感が高まります。
まとめ:相続したマンションを売却する際は不動産会社への相談がおすすめ
相続したマンションの売却には、相続登記や遺産分割協議といった特有の手続きに加え、譲渡所得税や各種特例の適用判断など、通常の売却以上に多くの準備が必要です。手続きを誤ると売却が遅れるだけでなく、税負担が増える可能性もあります。
スムーズかつ有利に売却を進めるためには、相続物件の取り扱い実績が豊富な不動産会社や、司法書士・税理士と連携できる専門家への相談が欠かせません。
「住まいの賢者」では、司法書士法人グループの不動産会社として、法務・税務・売却活動を一体的にサポートし、安心かつ最適な取引を実現します。相談は無料で承っておりますので、マンションの売却でお困りの方はぜひご相談ください。
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