目次
はじめに
空き家を放置しておくと、建物の劣化が進み、資産価値の大幅な低下にもつながります。
また、倒壊や犯罪リスクも高まるため、トラブルを未然に防ぐためにも定期的に空き家を掃除することが大切です。
本記事では、空き家の掃除を自分で行う場合と業者に依頼する場合のポイントを解説します。必要な道具や掃除手順を確認して、資産価値を維持しましょう。
第1章 空き家の掃除をやるべき理由は?
空き家をきちんと掃除・管理することは、所有者としての最低限の責任です。
定期的に空き家を掃除することで、見た目の美しさだけではなく、防犯や近隣トラブルの防止、建物の寿命延長にもつながります。
また、近年では空き家対策として各自治体が条例を整備しており、放置によるペナルティも厳しくなっています。
では、空き家の掃除をやるべき理由を具体的に見ていきましょう。
1-1 空き巣や放火の犯罪リスクの予防
長期間手入れされていない家は、明らかに無人と分かり、犯罪者にとって格好の標的になります。
定期的な掃除と見回りにより「管理されている家」である印象を与え、空き巣や放火のリスクを下げることが可能です。加えて、防犯砂利の設置やセンサーライトの導入を併用することで、さらに防犯効果を高めることができます。
1-2 近隣からの苦情や行政指導の回避
空き家にゴミが溜まり、草木が伸び放題になっていると、悪臭や害虫の発生などで近隣住民の迷惑になります。
苦情や通報につながると、自治体からの行政指導や勧告が入るため注意が必要です。
また、苦情が続くことで「特定空家」に指定され、最終的に強制的に解体される可能性もあります。
適切な掃除と維持管理を行い、近隣とのトラブルを防ぎましょう。
1-3 水回りの腐敗・害虫発生などの防止
水道が長期間使用されないと、排水管のトラップが乾き、悪臭や害虫の侵入経路になります。定期的な掃除で水を流すことで、水回りの腐敗や害虫発生を防ぐことができます。
また、換気を行うことで湿気がこもるのを防ぎ、カビの発生を抑えることもできるでしょう。特に、夏場は湿気が溜まりやすいため、こまめな点検と掃除が必要です。
1-4 建物価値の下落の抑制
汚れや劣化が目立つと、売却や賃貸の際に不利になります。定期的に掃除をして外観・内部を清潔に保つことで、建物の資産価値を維持することができるでしょう。
さらに、定期的なメンテナンスを行っていれば、内見時の印象も良く、交渉もスムーズになります。住宅市場では、第一印象の良さが重要になるため、清潔な状態を保ちましょう。
第2章 空き家の掃除を自分でやる場合のポイント
自分で掃除する場合は、効率と安全を両立することが大切です。無理をせず、必要な道具を揃え、計画的に行いましょう。
作業に取り掛かる前に、事前のスケジュールを立てておくと作業がスムーズに進みます。家族で行う場合は役割分担も決めておくとよいでしょう。
掃除当日は天候にも注意し、換気が必要な作業時には晴れの日を選ぶと効果的です。
2-1 最低限そろえるべき掃除道具リスト
以下の道具は、最低限揃えておきたい基本セットです。
- マスク・軍手・ゴーグル
- 雑巾・バケツ・中性洗剤
- ほうき・ちりとり・ゴミ袋
- 掃除機
- 窓ふき用スクイージー
- 雑草用の鎌・剪定ばさみ
- 懐中電灯
空き家の場合は埃や虫、劣化部分の処理など特殊な状況に対応する必要があるため、耐久性や使いやすさも重視して選ぶとよいでしょう。
掃除機は、コードレスタイプで吸引力の強いものがあると便利です。
2-2 効率よく進めるための掃除手順
効率よく進めるための掃除手順は、以下を参考にしましょう。
- 家の外観を確認して草刈りやゴミの撤去を実施する
- 窓・ドアを開けて換気する
- キッチンやトイレなど水回りを中心に清掃する
- 各部屋の床や窓を掃除する
- 最後に掃除機をかけて全体を仕上げる
2階から1階へ、奥の部屋から玄関方向へ進むと効率的です。外から内、上から下、奥から手前の流れを意識することで、掃除した場所が再び汚れることを防げます。
また、作業時間の目安や休憩するタイミングも事前に決めておくと、集中力を保ちやすくなるため有効です。
2-3 掃除をするべき頻度
掃除をするべき頻度の理想は月1回ですが、少なくとも季節ごとに年4回は必要です。
季節によって、掃除のポイントが異なるためチェックしましょう。
- 春:草木の繁殖期のため雑草や虫対策を重点的に行う
- 夏:高温多湿でカビや害虫が増加するため水回りの点検をする
- 秋:落ち葉の掃除や台風対策をする
- 冬:凍結・漏水の予防のため換気を徹底する
気候や季節によって注意すべき点が異なるため、1年分のスケジュールを作っておくと計画的に管理できます。
第3章 空き家を掃除するときに確認すべきこと
空き家の掃除は、ただ清掃作業するだけではなく、建物の健康診断の役割もあります。異常がないか、劣化が進んでいないかを確認する重要な機会です。
早期に不具合を発見すれば、将来の修繕コストを抑えることにつながります。
では、掃除の際に確認しておくべきチェックポイントを解説します。
3-1 ドアや窓が閉まるか確認する
空き家では湿気や気温の変化により建材が歪み、ドアや窓の建て付けが悪くなることがあります。開け閉めがスムーズか、鍵がしっかりかかるか定期的に確認しましょう。
また、鍵の錆びや劣化も要注意です。防犯面でも重要なチェック項目になるため、見過ごさないようにしましょう。
3-2 天井や壁が雨漏りしていないか確認する
見落とされがちですが、雨漏りの兆候は天井や壁に現れます。シミや剥がれ、カビ臭がある場合は内部に水が入り込んでいる可能性があります。
特に、梅雨や台風シーズンの後には重点的に点検しましょう。早期発見できれば、簡単な補修で済む場合もあります。
3-3 外壁や塀が破損していないか確認する
外壁のひび割れや塀の傾き・崩れは、安全性に関わります。
台風や地震の後などは特に注意して確認しましょう。老朽化が進んでいる場合は、リフォームや撤去を検討する必要があります。
外部の劣化は遠目でも目立ちやすく、近隣住民の印象にも直結するため注意しましょう。
3-4 ポストや電気・ガスメーターなどの設備を確認する
ポストがチラシでいっぱいになると、誰も住んでいないことが一目で分かってしまいます。
定期的に中身を回収し、必要があれば「不要なチラシお断り」のステッカーを貼ると効果的です。
また、電気・ガスメーターの数値が異常でないかも確認しておきましょう。漏電やガス漏れの兆候があればすぐに専門業者へ相談が必要です。
第4章 業者に依頼する場合のポイントと相場
空き家の状態や作業内容によっては、自力での掃除が難しいこともあります。
大量のゴミや汚れなど、特殊な状況では専門業者への依頼が現実的な選択肢です。ただし、業者によって対応範囲や料金が異なるため注意しましょう。
以下は、作業内容ごとの一般的な費用相場です。
作業内容 | 広さ・状況例 | 料金相場(1回あたり) |
---|---|---|
ハウスクリーニング | 3LDK以上の一戸建て | 5万〜15万円 |
不用品回収 | 2トントラック1台分 | 3万〜10万円 |
特殊清掃(ゴミ屋敷など) | 大量のゴミ・腐敗臭など | 20万〜50万円以上 |
遺品整理 | ワンルーム・一戸建て | 5万〜30万円 |
地域や状況によっても異なりますが、作業内容と規模によって金額は大きく変動します。
複数の業者から見積もりを取り、作業内容の詳細や追加料金の有無を確認しましょう。
4-1 ハウスクリーニング業者と片付け業者の違い
ハウスクリーニング業者は、室内の清掃を専門に行う業者で、キッチン、浴室、窓、床などの汚れ除去が中心です。定期的な掃除を依頼する場合は向いているでしょう。
一方、片付け業者は不用品回収や遺品整理、大量のゴミの撤去なども行うため、作業の幅が広く、特殊清掃が必要な場合にも対応します。
大規模な掃除を行う場合は、片付け業者が向いています。
目的に応じて業者を選び、無駄な費用や手間を防ぎましょう。
4-2 掃除の対応範囲を確認しよう
依頼前に「どの範囲まで対応してくれるか」をしっかり確認しておきましょう。
業者によっては、キッチンやトイレだけの対応など、部分的な清掃しか行わないところもあります。床下や屋根裏、庭まで含めるかどうか、家具の移動をしてくれるかなどの条件も含めて見積もり時に詳細を確認することが重要です。
第5章 空き家の掃除後も維持管理を続けよう
空き家の掃除は、一度行っただけで安心してはいけません。放置すればまた元の状態に戻り、劣化が進んでしまいます。
空き家を良好な状態に保つためには、定期的な維持管理が不可欠です。
では、空き家を維持管理する方法を解説します。
5-1 空き家管理サービスを併用する
遠方に住んでいて頻繁に通えなかったり、忙しくて時間が取れない方は、空き家管理サービスの活用がおすすめです。
空き家管理サービスとは、所有者に代わって、空き家を定期的に訪問して点検や清掃、水の通水などを行い、状態を維持してくれるサービスです。
費用は月額5,000円程度から始められる場合もあり、定期的なレポート報告をしてくれる業者も多いため、交通費と手間を考えると負担が軽減できるでしょう。
5-2 活用・売却を前提に動く
空き家を維持する際は、今後の活用について明確な方針を持って行動することが大切です。
将来的に売却や賃貸を考えているなら、今のうちから掃除や修繕を進めておきましょう。空き家の買い手が見学をした際に良い印象を与え、スムーズな契約につながります。
また、空き家バンクや不動産仲介業者に相談して、地域のニーズに合わせた活用方法を探ることも効果的です。
所有し続けるだけでは負担が増す一方なので、積極的に動いて価値ある資産へと転換していきましょう。
第6章 掃除費用を抑えるために補助金を活用しよう
空き家の掃除や片付けにかかる費用を少しでも抑えたい場合、自治体が提供する補助金制度を活用するとよいでしょう。
多くの自治体では、空き家の利活用や安全対策を推進するために、清掃や修繕、片付けなどに対して費用の一部を支援しています。
では、補助金を受けるための条件や申請方法を解説します。
6-1 空き家バンクに登録されていることが条件
補助金を利用するためには、空き家バンクに物件を登録していることが前提になります。
空き家バンクとは、自治体が空き家の利活用を促すために設けた制度で、購入希望者と所有者をマッチングする役割も担っております。
また、倒壊のリスクがある家の場合、解体に利用できる補助金も利用できるため、該当する可能性があれば確認しましょう。
6-2 補助金の対象になる範囲と対象者
補助の対象となる費用は、清掃・片付けの作業費や不用品の処分費、簡易な修繕費などが一般的です。事前に、補助金の対象になる範囲を確認しておきましょう。
- ゴミの処理手数料
- ゴミや家財の収集・運搬
- リサイクル家電の処分
- ハウスクリーニング・排水管などの清掃
- 樹木の伐採や除草
補助対象者は、原則として空き家の所有者や法定相続人が該当しますが、活用の意志を持った購入希望者や賃貸を予定している入居予定者が対象になる場合もあります。
6-3 補助金の申請方法
補助金の申請は、以下の手順で進める場合が一般的です。
- 自治体のホームページで補助金制度を確認する
- 申請に必要な書類を準備する
- 空き家の片付け・掃除を実施する
- 作業完了後、報告書と領収書を提出する
片付けにかかる見積書や所有者確認書類、実績報告書などの必要書類を揃えて申請する必要があります。また、作業前後の写真添付が求められることもあり、作業の証拠が明確であることが大切です。
補助が受けられる額や条件は、地域によって異なるため注意しましょう。
例えば、大阪府岬市では、空き家の清掃や家財道具処分に最大5万円の補助が受けられます。東京全体でも、空き家の家財整理を対象に最大5万円の補助が受けることができます。
お住まいの地域の情報をチェックしておくとよいでしょう。
まとめ:空き家の掃除は防犯と資産維持の第一歩
空き家を放置することは、犯罪や苦情、建物劣化など多くのリスクを招きます。定期的な掃除と点検を行い、防犯と資産価値の維持に努めましょう。
必要に応じて業者や補助金制度も活用しながら、持ち家を「負の遺産」ではなく「活かせる資産」として管理していくことが大切です。
ただし、どれだけ掃除や管理をしても、維持には時間と費用がかかり続けます。長期的に活用の予定がない場合は、売却の選択肢も現実的な対策です。
売却すれば、防犯や管理の手間から解放されるうえ、資産を有効に活かすことができます。
計画的な清掃と維持管理、将来的に売却を視野に入れた対応が、空き家対策の最良の一手といえるでしょう。
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