空き家の相談はどこが正解?目的別に窓口やポイントまですべて解説

空き家の相談はどこが正解?目的別に窓口やポイントまですべて解説
執筆者: 杉田悟

はじめに

空き家に関する悩みがあるものの、どこに相談すべきか迷ってはいませんか。

「空き家無料相談」など目についたところに相談するのでは、あなたの悩みの解決には遠回りになってしまう可能性があります。

この記事では、空き家に関する目的別に相談できる窓口や機関を紹介するとともに、相談するときのポイントなどを解説します。

第1章 【目的別】空き家相談の主な窓口

空き家の相談をしようと思ったとき、どこに相談すればいいのか分からないと感じる方は多いのではないでしょうか。

不動産の売却、相続に関する手続き、補助金制度の活用など、それぞれの専門家や機関が得意とする分野があります。

以下の表に、空き家に関する代表的な相談窓口と、その特徴を目的別にまとめました。

目的相談先できること
空き家を売りたい・貸したい不動産会社売却価格の査定、買い手・借り手探し
空き家バンク(市区町村)移住希望者とマッチング、自治体の支援あり
相続や税金について相談したい司法書士相続登記、名義変更の手続き
税理士相続税や贈与税、固定資産税の相談
弁護士相続人同士のトラブル解決隣地とのトラブル対応
空き家を貸したい賃貸管理会社入居者の募集、物件の管理
空き家の管理ができない空き家管理サービス定期巡回、換気、草刈りなど代行
シルバー人材センター手頃な費用で草刈りや清掃
空き家について全般を相談したい自治体活用事例や補助金の紹介

詳しい内容については、以下で解説していきます。

1-1 【空き家を売りたい】不動産会社・空き家バンク

空き家の売却を検討しているなら、不動産会社に相談するのが一般的です。

相談の流れとしては、初めに空き家の売却価格がいくらになるか知るために査定を依頼します。査定は1社だけに依頼せず、複数社に依頼して比較した上でその後の相談を進める会社を決めましょう。

不動産会社は、空き家が所在している地域にある会社をおすすめします。地域の特色や立地について詳しく、その地域での販売ノウハウを持っているためです。

建物が古い、立地が悪いなど、条件が悪い空き家のを売却したいという場合は、空き家バンクへ相談するのも方法の1つです。

1-2 【相続や税金について相談したい】司法書士・税理士・弁護士

空き家を相続で取得した場合は、相続登記が必要です。自分で登記手続きは行えますが、書類作成には時間や手間がかかります。

相続してから3年以内に登記を済まさなければ過料が科せられるケースもあるため、書類作成に悩んで進まないなら司法書士に相談しましょう。

また、空き家を相続した際の相続税や、贈与税の負担を減らす特例・控除の手続きをしたいなら、税理士が相談先です。

弁護士には、相続や権利関係のあらゆることを相談できます。特に相続人同士でトラブルが起こった場合や空き家の隣人とトラブルがあった際に相談すれば、法的な解決策を提示してもらえるでしょう。

1-3 【空き家を貸したい】賃貸管理会社

空き家を賃貸物件にして収益化したい場合の相談先は賃貸管理会社です。

空き家の周囲の環境によっては、賃貸のニーズが少なく入居者が付きにくい場合もあります。賃貸物件として活用できるかどうかも含めて、一度相談することをおすすめします。

1-4 【空き家の管理を任せたい】空き家管理サービス・シルバー人材センター

空き家が遠方にあると、自力で定期的な管理は難しいものです。空き家の管理に関しては、空き家がある地域の空き家管理サービスやシルバー人材センターに相談すべきです。

空き家管理サービスでは定期的な巡回や掃除、現状をレポートするサービスがあります。月額で支払い、年単位で契約するケースがほとんどです。

一方、シルバー人材サービスは空き家管理を専門としていないものの、庭の草刈りや空き家の清掃には低額で対応してもらえます。ただし年単位での契約ではなく、単発での依頼になります。

シルバー人材サービスの利用は、主に自分で管理している人が、できない時に代わりにしてもらうことを相談するという利用が向いているでしょう。

1-5 【空き家について全般を相談したい】自治体

空き家を所有したものの、どう活用すべきか決められない場合は、自治体の空き家相談窓口へ相談しましょう。

空き家の状況や環境から、最適な利活用を一緒に考えてもらえるでしょう。自治体で用意している補助金についても詳しく教えてもらえます。

空き家をどうすればいいか困っているという人は、まず自治体で相談してみると空き家活用の初めの一歩を踏み出しやすくなるはずです。

第2章 空き家を相続したら相談前にまずやること

相続した空き家をこれからどうすればいいのか、まずは相談してみたいという方もいるでしょう。

しかし、相談前に確認しておいてほしいことがあります。それが以下の3つです。

  • 不動産の名義変更(相続登記)
  • 家族との話し合い
  • 固定資産税や維持費の確認

この3つが済んでいなければ、空き家の活用を考える上で壁になるためです。

相続したら、まず速やかに相続登記は済ませましょう。2024年に義務化されたため、理由なく登記していなければ過料の対象になります。

また、他の相続人と共有名義になっているなら、空き家をどうするか事前に話し合って方針を一致させておくべきでしょう。

相続して名義変更した時点で、固定資産税の支払い義務が発生します。また、水道やガスが通っている場合の維持費も必要になるので合わせて把握しておく必要があります。

上記の3つを踏まえた上で、空き家にどう対処していくか考え、しかるべき窓口へ相談しましょう。

2-1 空き家を放置すべきでない理由

空き家の処遇に悩んだからといって、管理もせずそのまま放置しておくのはやめましょう。空き家を放置していると、さまざまなリスクを招く可能性があります。

例えば、老朽化が進んで倒壊の危険が高まったり、不審者の侵入やゴミの不法投棄といった治安上の問題が発生したりします。

さらに自治体から「特定空家」に指定されると、固定資産税の軽減措置が外れ、税負担が増すケースもあります。自治体によっては改善命令や強制撤去が下されることもあり、その際の費用は自己負担です。

このように、放置によって損をするリスクは決して小さくありません。

第3章 空き家の相談をするときのポイント

相談して良い結果を導くには、事前の準備と相談相手の選定が重要です。

この章では、スムーズに相談を進めるために知っておきたいポイントを紹介します。

3-1 相談時に用意するもの

相談する前に最低限の情報を揃えておくことで、やり取りがスムーズになります。たとえば以下のような書類があると、具体的なアドバイスが受けやすくなります。

登記簿謄本不動産の名義や権利関係を確認するため
固定資産税納税通知書評価額や税負担の確認に必要
相続関係図家族構成や相続人を整理しておく
空き家の写真や図面現状把握の参考資料として

こうした資料が手元にない場合でも、相談時にどこで取得できるかなども教えてもらえます。まずは負わずに問い合わせてみることが大切です。

3-2 無料相談を活用する方法

費用が気になって相談に踏み出せない方は、無料相談の活用を検討しましょう。多くの自治体や士業団体では、空き家に関する無料の相談会や電話窓口を設けています。

たとえば、全国宅地建物取引業協会のWebサイトでは、各都道府県の宅地建物取引業教会で開設している無料相談会や相談窓口を紹介しています。

参考:空き家相談窓口のご案内/全国宅地建物取引業協会

こちらは空き家の利活用について無料で提案してもらえるサービスです。

また、空き家が多い地域の市区町村役場でも無料相談会を行っている場合があります。

3-3 信頼できる相談先の見極め方

専門家の中には残念ながら、十分な実績や信頼性のない人もいるのが現実です。そこで大切なのが、相談先をどう見極めるかです。

以下のポイントを意識すると、信頼できる相手を選びやすくなります。

  • 実績や資格が明示されているか(例:司法書士登録番号、行政書士会所属など)
  • 質問に対して分かりやすく丁寧に答えてくれるか
  • 無理な契約を急かさないか
  • Googleレビューや口コミに不自然な点がないか

特に高額な費用が発生する売却や解体では、複数の会社に相談し、相性や対応を比較して決めましょう。

第4章 空き家を相談せずに放置しない!対処法4つ

空き家の活用は、早くから始めるのをおすすめします。時間が経つほど建物が劣化し、状況が悪化してしまうためです。

ここでは、代表的な対処法を4つご紹介します。それぞれの方法にメリット・デメリットがありますので、ご自身の状況や目的に合ったものを検討してください。

4-1 売却する

もっとも手間が少なく、確実に処分できる方法の1つが売却です。物件の売却には不動産会社と契約するのが一般的で、仲介契約と買取契約という2つの方法があります。

仲介契約は、不動産会社に販売活動を委託する契約です。ただし、契約内容によっては自分で買主を探して直接契約もできます。

仲介契約なら、不動産会社が相場を見極めて金額交渉までサポートします。そのため、適正な市場価格で売却できる可能性が高いのがメリットです。

不動産業者を通さず、個人同士での直接取引は、買い叩かれたり安く手放してしまうリスクがあります。

一方、買取契約は不動産会社が直接買い取る契約です。仲介契約は広告を出して売却するまで時間がかかりますが、買取の場合はすぐ売却して現金化したい場合に適しています。

築年数が古く、市場価格が低いとみられる物件の場合は、空き家バンクへ登録するのをおすすめします。市場では売りにくい物件を手放したい、誰かに住んでもらいたいという場合に向いている方法です。

空き家バンクについて、詳しくはこちらの記事も参考にしてください。

4-2 貸す

空き家を資産として活かしたいなら、賃貸や民泊として貸し出す方法があります。

賃貸として貸し出せば、継続的な収入が見込めます。また、空き家が観光地などにある場合、民泊にすれば高収益を狙える可能性もあります。

ただし、貸すには建物の状態が良好であることが前提となるため、リフォームや耐震補強が必要になるケースがほとんどです。さらに、賃貸契約にはトラブル対応や管理の手間が発生することから、不動産管理会社に委託するのが一般的です。

空き家の立地や築年数、地域ニーズによって最適な方法は異なります。まずは自治体やリフォーム会社に相談し、空き家が貸せる状態かどうか診断してもらう必要があります。

4-3 管理サービスを利用する

すぐに空き家を活用しないときは、管理サービスの利用が有効です。民間企業や一部の自治体が提供しており、定期的な見回りや換気、簡易清掃などを委託できます。

遠方に住んでいて頻繁に空き家を確認できない方や、相続人が複数いて管理を分担できない場合などに向いている方法です。費用は月額5,000円〜15,000円と比較的手頃で、物件の状態を維持するうえでもメリットがあります。

将来的な活用や売却を視野に入れている場合は検討すべきでしょう。

4-4 解体して更地にする

空き家が老朽化していて活用が難しい場合は、解体して更地にするという選択肢もあります。解体すれば倒壊や近隣トラブルのリスクを減らせるのがメリットです。

ただし、解体には建物の構造や広さによって100万円以上の費用がかかります。自治体の補助金制度が活用できるかどうか、事前に確認しておきましょう。解体に関する補助金は工事前に申請する場合がほとんどです。

また、更地にすると固定資産税が上がるケースもあります。解体費と固定資産税をふまえて、更地にした場合の費用対効果を慎重に見極めてから進めましょう。

5章 空き家の相談をきっかけに考えたいこと

空き家の問題は、建物や土地だけでなく、家族の関係や将来の暮らし方とも深くつながっています。一度専門家に相談してみることで、家族での話し合いや相続対策など、今後の暮らしを見直すきっかけになることもあります。

ここでは、空き家を通じて改めて考えておきたい3つの視点を挙げます。

  • 家族での今後の資産・相続の話し合い
  • 将来の自分たちの住まいとライフプラン
  • 相続対策・遺言の必要性

空き家の処分をめぐる話し合いを通して、家族全体の資産状況や今後の相続について考える機会にもなります。

  • 誰が何を相続するのか
  • 費用はどう分担するのか

など、日頃は話しにくいことでも空き家をきっかけに話し合っておくことが大切です。

実家の空き家をどうするか考える中で、自分自身やパートナーの老後の住まい方やライフプランについても意識が向くかもしれません。たとえば、実家をリノベーションして将来的に住む選択肢や、売却した資金で新しい生活を始めるといった道もあります。

空き家問題を経験して、「自分の子供たちには同じ思いをさせたくない」と感じた方も多いのではないでしょうか。今後の相続に備え、遺言書の作成や生前贈与の検討など早めの対策をとることが、家族間のトラブルを防ぐ一番の方法です。

まとめ:空き家は早めの相談がカギ

空き家を相続したとき、どうしたらいいのか迷うのは誰にでも起こりうることです。しかし、早めに専門家に相談することで、将来の不安がぐっと軽くなります。

悩みや目的に合った相談先を選べば、解決に向けてスムーズに一歩を踏み出せます。また、相談を通じて家族の相続や暮らし方について考えるきっかけにもなるでしょう。

空き家をそのままにしておくのではなく、どう活用するかを前向きに考えることが大切です。あなたとご家族の未来のためにも、まずは気軽に専門家に相談してみましょう。

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この記事の執筆者

杉田 悟(すぎた さとる)

杉田 悟(すぎた さとる)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/管理業務主任者/競売不動産取引主任士

長年の実務経験を持ち、特に相続や不動産登記に関する専門性が高い。一般の方にも分かりやすく、正確な情報提供をモットーとしている。

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