目次
はじめに
少子高齢化や人口減少の影響で、日本全国に空き家が急増しています。
実家を相続したものの住む予定がない、転勤や入院などで一時的に不在になるなど、空き家の発生要因はさまざまです。放置された空き家は防犯・衛生面で問題を引き起こし、地域の景観や安全性に悪影響を与えることがあります。
空き家問題の解決策として注目されているのが「空き家見守りサービス」です。
本記事では、空き家見守りサービスの特徴と種類を解説します。家族の資産を守るためにも、費用相場を確認して、空き家見守りサービスの利用を検討しましょう。
第1章 空き家見守りサービスとは?
空き家見守りサービスとは、所有者が常に管理できない空き家を第三者が定期的に訪問・点検し、建物の劣化防止や防犯・防災対策を行うサービスです。
サービス内容は多岐にわたり、外観チェックから室内確認、清掃、除草、水道や電気の確認までさまざまです。
最近では、ドローンや遠隔監視カメラを利用したハイテク型の管理も増加しており、異変の早期発見や迅速な対応が可能となりました。
空き家見守りサービスを利用することで、空き家を放置するリスクを減らし、資産価値の維持にもつながります。
1-1 空き家見守りサービスが注目される背景
空き家見守りサービスが注目される背景には、空き家の放置による火災・倒壊・不法侵入・不衛生など、社会問題の深刻化があります。
総務省の調査結果では、全国の空き家は2023年時点で約900万戸(住宅総数の13.8%)に達しており、今後も増加が見込まれています。
特に、所有者が遠方に住んでいたり高齢だったりする場合、定期的な管理が難しいため、専門サービスに頼らざるを得ない状況となるでしょう。
また「空家等対策特別措置法」によって、特定空家に認定されると行政からの指導が入り、最終的には解体を命じられることもあるため、事前の管理体制が重要視されています。
法的リスクを回避し、所有物件の資産価値を守るためにも、見守りサービスは現代に必要不可欠な存在となりつつあります。
第2章 空き家見守りサービスの種類
空き家見守りサービスは、複数の形態が存在します。選ぶサービスによって内容や費用が異なるため、自分のニーズに最も合ったタイプを選ぶことが大切です。
では、代表的な空き家見守りサービスの種類を解説します。
2-1 ホームセキュリティ系の見守りサービス
セコムやALSOKなど大手警備会社が提供する見守りサービスです。
センサーや監視カメラを設置し、異常を感知すると即座に警備員が駆けつける仕組みとなっております。
防犯を強化したい場合におすすめで、空き家に対する不法侵入や放火などのリスク軽減に効果的です。遠隔で状況確認ができるアプリ連携サービスも導入しており、所有者の安心感につながるでしょう。
警備会社のノウハウを活かしつつ、緊急時対応にも強い点がメリットです。
2-2 運送系の見守りサービス
日本郵便などが提供する見守りサービスです。郵便局員が定期的に空き家を訪問し、外観のチェックやポストの投函物の確認などを行います。
報告書は写真付きで送られるケースが多く、簡易的な見守りには最適です。郵便局ネットワークを活かした全国対応が魅力で、コストを抑えたい方に向いています。
地域密着型の安心感があり、普段からその地域を熟知している配達員がチェックを行うため、細かな異変にも気づいてもらいやすい点もメリットです。
2-3 空き家管理専門業者
空き家管理に特化した企業が提供する見守りサービスです。
月1回以上の定期点検、通風・通水、除草・清掃、近隣住民からの聞き取り調査など、多岐にわたる管理を実施します。希望に応じてカスタマイズできる点も魅力で「自分では管理が難しいがしっかり維持したい」方に向いています。
見守りだけではなく、活用提案や売却のサポートを行う業者も登場しており、より包括的な対応が可能となりました。
2-4 不動産会社の見守りサービス
不動産会社が提供する見守りサービスです。
管理と並行して売却や賃貸といった活用提案を受けられる点が特徴で、空き家を将来的に手放したい場合や資産運用を考えている方に向いています。
実際に活用に向けたリフォームや査定なども相談できるケースが多く、出口戦略を描きながら管理を任せられるため、合理的で実用的な選択肢として支持されています。
第3章 空き家見守りサービスの費用相場はどれくらい?
空き家見守りサービスの費用相場は、サービス内容や契約形態、物件の規模によって異なります。
代表的な空き家見守りサービスの費用相場は、以下の通りです。
サービス内容 | 頻度 | 月額料金の目安 |
---|---|---|
外観の目視点検のみ | 月1回 | 1,000〜5,000円 |
室内の点検・通風通水 | 月1回 | 3,000〜10,000円 |
清掃・除草込み | 月1回 | 6,000〜25,000円 |
緊急時対応付き | 月2回以上 | 10,000〜30,000円 |
フルサポート+活用提案型 | 月2回以上 | 15,000〜35,000円 |
最も簡易な見守りのみのプランであれば、月額1,000円〜3,000円程度が目安で、本格的な清掃や修繕を含むフルサービスでは月額10,000円以上が目安です。
長期的な管理を前提とする場合は、年間契約による割引制度なども検討材料になるでしょう。
3-1 初期費用・オプション費用に注意
空き家見守りサービスを利用する際は、初期費用やオプション料金に注意が必要です。
例えば、鍵の預かり費用や契約事務手数料、初回の現地調査費などが発生する場合があります。また、台風後の緊急点検や害獣駆除、屋根や外壁の点検など通常の見守り範囲を超える作業はオプション扱いとなり、別途費用がかかることが一般的です。
追加費用を事前に把握し、後から「想定外の出費」に悩まされるリスクを回避しましょう。
3-2 自主管理とどちらが安い?
「自分で管理すれば無料で済む」と考える方も多いですが、実際には交通費や時間、精神的負担など見えないコストがかかります。
遠方に空き家がある場合、交通費だけでも月に数千円から数万円になることも珍しくありません。
また、不審者侵入や水漏れなどの突発的なトラブルへの対応は自力では難しく、結果的に見守りサービスを活用した方が効率的といえます。
第4章 空き家見守りサービスを利用するメリット
空き家見守りサービスの導入をすることで、頻繁な移動や管理対応の負担が軽減され、家族や仕事に集中できる点も大きなメリットです。
見守りによって劣化を最小限に抑えられるため、将来のリフォーム費用や売却時のマイナス査定を避けることにもつながります。
では、空き家見守りサービスを利用するメリットを解説します。
4-1 管理の手間・交通費が省ける
日常生活や仕事で忙しい中、遠方の空き家まで何度も足を運ぶのは現実的に難しいものです。
空き家見守りサービスを活用し、定期的なチェックや清掃を代行してもらうことで、維持管理のストレスから解放されます。
定期訪問と報告によって現地の状況を把握でき、自分の時間と労力を節約できることは大きな魅力といえるでしょう。
4-2 遠方の空き家を任せられる
物理的な距離がある場合、定期的な訪問は困難となります。
特に、空き家の所有者の多くが都市部に住み、地方に不動産を抱えている方は、その地域に拠点を持つ専門家が管理を担ってくれるため、遠隔から状況を見守ることができます。
台風や地震などの災害時も迅速に対応してもらえるため、リアルタイムでの状況確認が難しい場所にこそ、見守りサービスは有効です。
4-3 専門家が管理するので安心できる
建物の構造や老朽化リスクを熟知した専門家が定期的にチェックしてくれるため、見落としや判断ミスの可能性が低減されます。
見た目ではわからない劣化や雨漏りなども、早期に発見できる体制が整っており、問題が深刻化する前に対応が可能です。
写真付き報告書を受け取れるケースも多く、長年の経験や知識を活かして、見落としがちな問題点を見抜いてくれる点も安心できるでしょう。
4-4 特定空家・管理不全空家を防ぐことができる
行政が定める「特定空家」や「管理不全空家」に該当してしまうと、指導や改善命令の対象となり、放置すると行政代執行による解体と費用請求が行われる可能性があります。
定期的な管理を継続することで、リスクを回避でき、近隣とのトラブルを未然に防げます。
結果として、不必要なトラブルや費用の発生を防止できるでしょう。
4-5 物件価値を維持できるので売却時に有利になる
不動産の評価において、建物の管理状態は重要な指標となります。
空き家を放置しておくと湿気や害虫被害で急激に劣化が進みますが、見守りサービスを利用していれば美観や機能性が保たれます。
物件価値を維持することで、売却時に査定額が上がり、より有利な条件で取引を進める可能性があるでしょう。
また、定期的にメンテナンスされている物件は、購入希望者に対する信頼性の証明にもなり、競争力の高い資産へとつながります。
一部のサービス会社では、管理証明書や点検報告書の発行に対応しており、書類があることで売却時の大きなアピール材料となるでしょう。
第5章 空き家見守りサービスを利用するデメリット
便利な見守りサービスですが、誰にとっても万能な解決策とは言い切れません。
サービス内容や費用が多様であるため、選び方を間違えると「思っていたより高かった」「対応が雑だった」などの失敗につながりかねません。
また、長期的に管理だけを続ける場合、目的のない維持は資産を圧迫する原因にもなるため、活用や売却といった出口戦略とセットで考えることが大切です。
では、空き家見守りサービスを利用するデメリットを解説します。
5-1 管理費用がかかり続ける
月々の利用料金は一見すると少額に見えますが、数年間利用すれば数十万円に達することも珍しくありません。
空き家を長期保有する見込みがある場合は、年間コストの積み上がりを視野に入れて判断する必要があります。
金額に見合った効果が得られているか、定期的に見直しも必要です。
特に数年単位で空き家を維持するつもりなら、費用とメリットのバランスを事前に精査しておきましょう。
5-2 自分に合った会社選びが必要である
空き家の立地や築年数、今後の活用方針によって適切なサービスが変わってきます。
業者ごとのサービス内容を詳細に比較し、自分の目的や希望にマッチしたプランを提供している会社を選ぶことが重要です。
ホームページやパンフレットの情報だけではなく、担当者の対応や柔軟性、実際の利用者の評判や口コミも参考にしましょう。
5-3 売却のタイミングを逃す可能性がある
空き家見守りサービスによって建物が一定の状態に保たれていると、所有者としては「特に問題がないから」とついそのまま放置してしまうケースがあります。
しかし、建物の経年劣化は確実に進み、数年後には資産価値が大きく下がる恐れがあります。適切なタイミングで売却を検討しなければ、結果的に損をしてしまうこともあるでしょう。
売却のタイミングを逃さないためにも、定期的な管理とともに、資産としての出口戦略を並行して考えることが必要です。
第6章 空き家見守りサービス選びで失敗しないためのポイント
見守りサービスの質は、業者によって大きく異なります。
費用だけではなく、報告書の詳細さや緊急時の対応力、アフターフォローの有無など、確認すべきポイントをチェックしましょう。
では、空き家見守りサービス選びで失敗しないためのポイントを解説します。
6-1 サービス内容を確認する
業者によってサービスに含まれる作業の範囲や報告の頻度はさまざまです。
例えば、通水や雨漏り点検が含まれているか、災害後の臨時点検が対応可能かなど、チェックポイントをリスト化して確認しましょう。
また、報告書の形式や頻度、緊急時対応の有無なども事前に把握しておくことが大切です。
日常点検の範囲が曖昧なままだと、トラブルが発生したときに責任の所在が不明瞭になるおそれがあるため、契約前の説明を必ず受けましょう。
6-2 担当者が毎回同じか確認する
会社によっては担当者が毎回変わることがあり、サービス品質にばらつきが生じる場合があります。可能であれば、固定担当者制を採用している会社を選ぶと安心です。
毎回担当者が変わってしまうと、物件の履歴が十分に共有されず、見逃しや判断ミスのリスクがあります。
同じ担当者が継続して対応することで、物件の状態を正確に把握でき、物件の変化にいち早く気づける可能性が高まります。
継続的に安心して任せられる体制が整っているか確認しましょう。
6-3 目的別に会社を選ぶ
空き家を将来的にどう活用したいのか明確にしましょう。目的に合ったサービスを選ぶことが、空き家の価値最大化につながります。
例えば、不動産会社が提供する一貫型のサービスであれば、見守りと同時に資産運用の相談が可能です。売却や賃貸を視野に入れているなら、不動産活用まで一貫して対応可能な業者を選ぶとスムーズに手続きが進むでしょう。
資産の最適活用の観点でも、将来的な出口戦略を見据えたパートナー選びをすることが大切です。
6-4 利用期間を決めておく
空き家見守りサービスは便利な反面、管理がうまくいっていることでかえって売却や活用のタイミングを逃してしまう可能性があります。
「今は問題ないから」と利用を続けているうちに、建物は確実に経年劣化し、資産価値が徐々に下がってしまうリスクは否定できません。
そのため、サービスの契約時にあらかじめ「いつまでに売却を目指すか」などの期限を決めておくことが大切です。期限を設定することで、漫然とした維持から脱却し、適切なタイミングで出口戦略に移行しやすくなるでしょう。
まとめ:空き家は見守り+売却戦略で負動産を回避しよう!
空き家はただ放置するだけでは、物理的にも経済的にもリスクを抱える「負動産」と化してしまうのが現実です。
適切な管理と将来的な活用計画があれば、空き家でもプラスの資産に転じる可能性があります。見守りサービスで維持管理の基盤を整え、並行して売却や利活用の道を探ることで、資産価値を高めることができるでしょう。
適切な見守りサービスを活用しつつプロのサポートを受けながら、負動産ではなく資産に変える道を選びましょう。
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