空き家の放火リスクと法的責任は?火災の原因から対策まで詳しく解説

空き家の放火リスクと法的責任は?火災の原因から対策まで詳しく解説
執筆者: 杉田悟

はじめに

近年、空き家の増加が社会問題となっていますが、その中でも放火のリスクは、空き家を所有している方にとって特に注意すべき項目です。

長期間放置された建物は老朽化しやすく、火がついた際の燃え広がるスピードも非常に速いため、周辺住民にも甚大な被害を及ぼしかねません。

本記事では、空き家の放火リスクと所有者が問われる可能性のある法的責任について解説します。放火を未然に防ぐために対策を行い、犯罪リスクを予防しましょう。

第1章 空き家は火災リスクの温床になる!

空き家は人の目が届きにくいため、火災のリスクが非常に高い物件です。

防火対策が不十分な状態で放置された空き家は、通常の住宅と比較しても火災リスクの温床になり得る存在といえます。

では、どのような火災リスクが考えられるのかを見ていきましょう。

1-1 放火

防犯対策が不十分な空き家は、放火犯にとって狙いやすい場所とされます。

特に、人通りの少ないエリアにある物件は危険度が高く、新聞紙や可燃ゴミなどが放置されている場合、ゴミが燃料となり被害が拡大する恐れがあるでしょう。

空き家の中には、放火のために窓を割られて侵入されたケースもあり、所有者にとっては予期せぬ被害となります。

1-2 漏電や落雷による自然発火

電気設備が古く、メンテナンスが行き届いていない空き家では、漏電や落雷による自然発火も無視できません。

誰も使用していないと思って油断していると、電気コードの劣化やブレーカーの故障などが引火原因となるケースがあります。

特に、梅雨時期や台風シーズンは湿気による劣化が進行しやすく、思わぬタイミングで火災を引き起こす可能性があるため注意が必要です。

1-3 不審火や子供のいたずら

空き家は、地域の遊び場になってしまうこともあります。

子供が火遊びをして不審火になる、あるいは焚き火などの危険行為など、意図的でなくとも火災につながることも珍しくありません。

このような場合も、所有者の管理責任が問われる可能性があります。

1-4 ゴミの不法投棄

空き家の敷地内にゴミが不法に捨てられ、燃えやすい素材だった場合、放火や自然発火の原因になります。

また、不法投棄されたゴミの中にはスプレー缶や電池など、引火性の高いものが混在することもあり、予想以上に被害が広がることがあります。

ゴミが積もることで火災の規模も拡大しやすくなり、近隣住宅への延焼リスクも増加するため、早期発見と処分が不可欠です。

第2章 空き家の放火で発生したら法的責任はどうなる?

火災が起きた場合、放火をした犯人が最も重い刑事責任を負いますが、所有者も無関係ではいられません。

管理が不十分だったと認定された場合は、民事上の責任が問われるケースもあります。空き家の状態が放火を助長する原因になっていたとされ、損害賠償命令が下される恐れもあるでしょう。

火災の損害は建物だけではなく、命や地域全体の安心にも直結するため、空き家でも放火をされないための予防が求められます。

2-1 所有者も民事責任を問われるケースがある

ゴミが放置されていたり、出入り口が施錠されていなかったりといった状況があると、空き家の管理がずさんだったと判断される可能性があります。

そのような状態が原因で火災や事故が発生した場合、所有者に「重過失」があったと判断され、近隣住民など被害者から損害賠償を請求されるリスクも考えられるでしょう。

空き家は、所有しているだけでも管理責任があることを忘れてはなりません。たとえ意図せずとも、第三者が空き家を悪用できる状態にしていた責任は重大です。

第3章 火災保険は空き家にも適用される?

空き家にも火災保険をかけることは可能ですが、現実にはその選択肢が限られています。

通常の住宅用火災保険は「居住していること」を前提としているため、無人状態の空き家はリスクが高いと判断され、保険会社に加入を断られるケースも珍しくありません。

ただし、空き家専門の保険を扱っている保険会社も一部存在します。万が一の備えとして、空き家専用保険に加入することも検討しましょう。

3-1 空き家専用保険を利用する

空き家専用保険は、一般の住宅火災保険より保険料が高めですが、空き家向けに特化した補償が受けられます。例えば、放火や自然発火、漏電などに対する補償が組み込まれており、安心感が高まるでしょう。

ただし、加入にあたっては保険会社による現地調査が行われ、建物の状態や管理体制によって契約の可否が判断されることが一般的です。

立地や築年数、建物の材質、周辺環境などによっても保険料が変動するため、複数社の見積もりを比較することが重要です。

3-2 保険に加入する場合は補償の範囲を確認しよう

火災保険に加入する際は、補償の対象となる範囲を必ず確認しておきましょう。

例えば、放火が原因の火災であっても、管理不十分と判断された場合は補償されないケースもあります。

また、水災や盗難などのリスクに対する補償の有無も、契約内容によって適用範囲が異なるため注意しましょう。

保険をかけているからといって安心せず、並行して管理体制を整えることが大切です。

第4章 空き家の放火を未然に防ぐための方法

空き家の火災リスクを下げるには、所有者による日常的な管理が欠かせません。長期間放置されている建物は外部からの目が届きにくく、放火犯に狙われやすい傾向があります。

そのため、可能な限り人の気配を残し、防犯性を高める施策を講じることが重要です。

では、空き家の放火を未然に防ぐための方法を解説します。

4-1 空き家を売却する

最も効果的な火災リスク回避策は、空き家自体を手放すことです。

不動産仲介業者に依頼する、空き家買取業者に相談する、空き家バンクを活用するなど、現在では多様な選択肢が存在します。

所有し続けることで発生する維持費や固定資産税、火災などのリスクを考えると、早期の売却は合理的な選択といえるでしょう。

4-2 定期的に巡回・通風をする

空き家であっても、定期的に人の出入りがあることを周囲に示すことで、放火の抑止効果が期待できます。

1〜2か月に1回程度は現地を訪れ、通風や清掃、外観チェックを行いましょう。ポストにチラシが溜まっていないか、不審者の形跡がないかなどの確認も忘れてはなりません。

また、近所に知人や家族がいる場合は、定期的な見回りを依頼する方法も有効です。

4-3 季節ごとに庭の手入れを行う

雑草が伸び放題、落ち葉が溜まった庭は燃えやすい材料の温床です。

特に、冬場は乾燥しやすく、ちょっとした火種で火災が起きやすくなります。

また、手入れの行き届いていない庭は「この家は管理されていない」といった印象を与え、放火や不法侵入のきっかけになることもあるでしょう。定期的に草刈りや剪定、落ち葉の掃除を行い、外観を整えておくことが放火防止につながります。

4-4 鍵や窓の補修をする

壊れたまま放置された窓や鍵は、不法侵入者にとって歓迎のサインです。

侵入しやすい環境を放置すれば、放火や窃盗などの被害に直結します。外部から簡単に中へ入れる状態を防ぐためにも、施錠の確認や扉・窓の補修は欠かせません。

また、定期的な点検と修繕を行っていれば、万が一の火災時にも「管理責任を果たしていた」として所有者の過失が問われにくい可能性があります。

4-5 防犯カメラやセンサーライトを設置する

防犯カメラやセンサーライトは近年、設置費用も手頃になってきており、手軽に始められる対策です。

機械的な監視装置を導入することで、放火や不審者の侵入に対する強力な抑止力となるでしょう。

また、録画映像があれば、万が一放火事件が発生した際の重要な証拠にもなります。建物の四隅や玄関周辺など、人目につきにくいポイントを優先的にカバーしましょう。

第5章 どうしても管理できない空き家の対処法

空き家の管理は手間とコストがかかるため、物理的・時間的に困難だと感じている方も珍しくありません。

継続的なメンテナンスが難しい場合には、思い切って空き家を手放すことも検討しましょう。リスクを放置して大きなトラブルを招く前に、できる対処法を検討しておくことが望まれます。

では、どうしても管理できない空き家の対処法を解説します。

5-1 空き家管理サービスを活用する

自分で定期的に訪問するのが難しい場合は、民間の空き家管理サービスを利用しましょう。

空き家管理サービスの内容には、建物外周の点検、通風、雨漏りチェック、郵便物の回収、雑草の除去、防犯対策などが含まれており、月額数千円から契約できる業者も存在します。

プロによる管理によって、近隣への迷惑や火災リスクを大幅に軽減することができるため、依頼する価値はあるでしょう。

5-2 解体して更地にする

建物の老朽化が進み、安全性や防災上のリスクが高まっている場合、空き家を解体して更地にすることを検討しましょう。

更地にすれば放火や倒壊のリスクを大幅に減らせるため、近隣からの苦情や損害賠償リスクを避けることができます。

ただし、住宅用地特例が適用されなくなり、固定資産税が跳ね上がる点には注意が必要です。長期的に見て合理的な選択ではないと判断した場合は、売却も視野に入れましょう。

5-3 売却や譲渡をして手放す

自分で管理するのが難しいと判断した場合、売却や譲渡によって手放すことも検討しましょう。

買い手が見つかりそうな物件である場合、資産になるため有効です。売値がつかない物件でも、自治体の空き家バンクや、空き家を再利用したい個人・団体とのマッチングサービスを活用することで、意外な買い手や引き取り手が見つかる可能性もあります。

たとえ無償譲渡であっても、所有し続けることによるリスクを手放せる点では大きなメリットといえるでしょう。

まとめ:空き家はリスクの塊!管理できない場合は売却や解体などを検討しよう

空き家は放火や自然発火、不審火などのリスクを常に抱えており、所有しているだけで周囲に悪影響を及ぼす可能性があります。

管理が行き届いていないと判断された場合は、所有者自身が損害賠償責任を問われることもあるため、空き家を所有し続ける際は定期的な管理を行わなければなりません。

空き家は、管理してこそ価値ある不動産となります。管理が難しいと感じた時点で、売却や譲渡などの選択肢を検討し、早めにリスクを取り除く行動を取りましょう。

「住まいの賢者」では、司法書士と連携して、不動産の活用や売却の相談が可能です。空き家の活用方法でお悩みの方は、ぜひ無料相談をご利用ください。

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この記事の執筆者

杉田 悟(すぎた さとる)

杉田 悟(すぎた さとる)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/管理業務主任者/競売不動産取引主任士

長年の実務経験を持ち、特に相続や不動産登記に関する専門性が高い。一般の方にも分かりやすく、正確な情報提供をモットーとしている。

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