住まない実家を相続してはいけない4つの理由|手放す方法はある?

住まない実家を相続してはいけない4つの理由|手放す方法はある?
監修者: 中西孝志

はじめに

親の死後に実家を相続するかどうかは、多くの人にとって避けて通れない問題です。しかし「住まない実家」を安易に引き継ぐと、思わぬ出費やトラブルに巻き込まれる可能性があります。

この記事では、住まない実家を相続してはいけない理由や、手放すための具体的な方法をご紹介します。相続を検討中、あるいは相続したもののお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

第1章 住まない実家を相続してはいけない4つの理由

住まない実家を相続することは、一見すると家族の思い出を守る行為のように思えます。しかし、住まない実家を相続すると、以下のようなデメリットがあります。

  1. 相続税がかかる
  2. 固定資産税などの管理コストがかかり続ける
  3. 適切な管理をしないとトラブルに発展する恐れがある
  4. 実家を解体する場合は費用がかかる

1-1 相続税がかかる

住まない実家を相続する際、特に注意すべきは相続税の負担です。

通常、被相続人と同居していた相続人が実家を引き継ぐ場合、「小規模宅地等の特例」が適用され、土地の評価額を最大80%減額できます。

しかし、同居していない相続人が実家を相続する場合、この特例が適用されず、結果として相続税の負担が大きくなる可能性があります。

例えば、評価額5,000万円の土地を相続する場合、特例を適用すれば評価額は1,000万円となりますが、適用されない場合はそのまま5,000万円が課税対象となります。この差は非常に大きく、相続税の支払いに苦慮するケースも少なくありません。

1-2 固定資産税などの管理コストがかかり続ける

住まない実家を相続すると、固定資産税や都市計画税などの税負担が毎年発生します。これらの税金は、たとえ居住していなくても不動産の所有者に課せられるため、住まない実家でも支払い義務が生じます。

特に、固定資産税は土地や建物の評価額に基づいて計算され、年間で数十万円に達することもあります。さらに、空き家のまま放置すれば建物の劣化が進み、修繕費用や管理費用が増加するリスクも否めません。

また、2023年には「管理不全空き家」という新たな区分が設けられ、適切な管理が行われていない場合、固定資産税の軽減措置が適用されなくなる恐れもあります。

1-3 適切な管理をしないとトラブルに発展する恐れがある

住まない実家を適切に管理しないと、さまざまなトラブルに発展する恐れがあります。例えば、庭の草木が伸び放題になり、害虫の発生源となったり、近隣住民からの苦情が寄せられることがあります。

また、建物の老朽化が進むと、倒壊の危険性が高まり、周囲に被害を及ぼす可能性もあるでしょう。さらに、空き家は不審者の侵入や放火などの犯罪リスクが高まります。

これらの問題が発生すると、所有者としての責任を問われるだけでなく、近隣住民との関係が悪化したり、損害賠償請求の対象となる場合もあります。

1-4 実家を解体する場合は費用がかかる

住まない実家を解体する際には、建物の構造や規模に応じて高額な費用が発生します。例えば、木造住宅の場合、解体費用の相場は1坪あたり3〜5万円とされており、30坪の住宅であれば約90〜150万円の費用がかかります。

鉄骨造や鉄筋コンクリート造の場合はさらに高額になり、50坪の鉄筋コンクリート造の住宅では300万〜400万円程度の費用が必要となることもあるでしょう。

また、解体費用は建物の立地条件や周辺環境によっても変動します。例えば、前面道路が狭く重機の搬入が困難な場合や、隣接する建物との距離が近い場合などは、人力での作業が増えるため、費用が高くなる傾向があります。

さらに、解体後の整地作業や廃材の処分費用、アスベストの有無なども費用に影響を与える要因となります。

第2章 住まない実家を手放す方法

住まない実家を手放したい場合、次に挙げる4つの方法があります。

  • 売却
  • 寄付・贈与
  • 相続放棄
  • 相続土地国庫帰属制度の利用

2-1 売却

相続発生前に実家を売却する場合、所有者である親が判断能力を有していれば、本人の意思で売却が可能です。ただし、親の判断能力が低下している場合は、成年後見制度を利用する必要があり、手続が複雑になることがあります。

また、生前贈与を行ってから売却する場合は、贈与税や不動産取得税が発生するため、注意が必要です。

2-2 寄付・贈与

住まない実家を手放す方法の一つに、親族や第三者への贈与や寄付があります。親族への贈与では、年間110万円までの基礎控除が適用され、それを超える部分には10%〜55%の累進税率が課せられます。

また、相続時精算課税制度を利用すれば2,500万円まで非課税で贈与が可能です。

なお、第三者(法人や団体など)への寄付は、受け取り手が見つかりにくい傾向は否めません。また、個人が不動産を法人に無償で譲渡(寄付)した場合、税法上では「時価で売却した」とみなされます。

これを「みなし譲渡」といい、譲渡益(売却益)が発生すれば、その分に対して所得税・住民税が課税されます。つまり、実際にお金を受け取っていなくても、税金が発生するのです。

さらに、不動産取得税や登録免許税などの費用もかかるため、事前に専門家と相談するのが賢明です。

2-3 相続放棄

住まない実家を相続したくない場合、相続放棄を選択できます。相続放棄は、被相続人の死亡を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。相続放棄をすると、最初から相続人でなかったことになり、実家を含む一切の財産や負債を引き継がないことになります。

ただし、相続放棄を行うと、他の相続人に負担が移る可能性があるため、家族間での十分な話し合いが必要です。また、相続放棄後に財産を処分したり、管理したりすると、相続放棄が無効となる場合があるため、注意が必要です。

2-4 相続土地国庫帰属制度の利用

相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈により取得した不要な土地を国に引き取ってもらう制度で、2023年4月27日から施行されました。

この制度を利用すると、管理や維持が困難な土地の所有権を国に移転し、将来的な負担を軽減できます。

以下に、手続の流れを表でまとめました。

手続のステップ内容備考
事前相談管轄の法務局で相談土地の状況や申請の可否を確認
申請書類の作成・提出必要書類を準備し、法務局へ提出申請書、土地の図面、写真、印鑑証明書など
審査書類審査と必要に応じて実地調査審査期間は約半年から1年程度
承認・負担金の通知承認された場合、負担金の額が通知される負担金は土地の種目や面積により異なる
負担金の納付指定された期間内に納付納付期限は通知到達の翌日から30日以内
所有権の国庫帰属負担金の納付をもって所有権が国に移転登記は国が行うため、申請者の手続は不要

なお、申請には審査手数料として土地1筆あたり1万4千円が必要です。また、負担金の額は土地の種目や面積によって異なり、例えば宅地の場合は原則として20万円、市街化区域内の土地では面積に応じて計算されます。

まとめ:住まない実家を相続する際には慎重に判断しよう

住まない実家を相続することには、感情的な要素だけでなく、税金や管理費用、将来的なトラブルなど、さまざまな負担が伴います。相続前に情報を収集し、自身のライフプランや経済状況を踏まえ、慎重に判断するのが賢明です。

手放す方法としては、売却や寄付・贈与、相続放棄、相続土地国庫帰属制度の利用などがあります。それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるため、専門家に相談しながら最適な選択をしてください。

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この記事の監修者

中西 孝志(なかにし たかし)

中西 孝志(なかにし たかし)

宅地建物取引士/FP2級技能士/損害保険募集人

約20年の実務経験を活かし、お客様の潜在ニーズを汲み取り、常に一方先のご提案をする。お客様の貴重お時間をいただいているという気持ちを忘れず、常に感謝の気持ちを持つことをモットーとしている。

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