空き家を管理しないとトラブルの原因に!未然に防ぐ管理方法を解説

空き家を管理しないとトラブルの原因に!未然に防ぐ管理方法を解説
執筆者: 杉田悟

はじめに

空き家は、少子高齢化や相続問題の影響によって全国的に増加しています。

誰も住まないからと空き家の管理を放置していると、景観の悪化や近隣トラブルなどから所有者の管理責任が問われたり、税制面での不利益を被ったりとリスクになるため注意しましょう。

本記事では、空き家を管理しないことで発生するトラブルや正しい空き家管理の方法を解説します。資産価値を保つためにも、適切な対策をしてリスクを避けましょう。

第1章 空き家を管理しないことで発生するトラブルとは?

空き家のトラブルは、単に建物の劣化だけではなく、周囲の環境や住民の安全・安心にも悪影響を及ぼしてしまいます。

例えば、空き家の管理を怠ることで、以下のトラブルが発生する可能性があります。

  • 雑草やゴミの放置による景観の悪化や悪臭
  • 害虫・害獣の発生
  • 放火や不審者の侵入による治安悪化
  • 建物の老朽化による倒壊・屋根の落下
  • 雨漏りやカビなど建物内部の損傷
  • 空き巣や不法投棄のターゲットになる
  • 不動産価値の下落
  • 行政による指導や強制撤去

管理せずに放置された空き家は、地域全体の価値を下げる原因にもなるため、地域に新たな住民が定着しにくくなるなど、悪循環になりかねません。

空き家問題は個人の所有物の範囲にとどまらず、地域社会全体の課題といえるでしょう。

1-1 特定空き家に該当すると行政措置に

2015年に施行された「空き家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策特別措置法)」によって、倒壊の恐れや衛生上の問題がある空き家は「特定空き家」として行政から勧告・命令の対象になります。

特定空き家に認定されると、固定資産税の軽減措置が解除されるだけではなく、命令に従わなければ強制的に解体される「行政代執行」が行われることもあります。

解体費用は所有者の負担となり、事前通告を無視していた場合は差押えのリスクもあるため、思わぬ財産損失につながりかねません。

特定空き家に認定される基準は、建物の著しい損傷や倒壊リスク、火災リスクなどが含まれており、所有者が意図していなくとも該当する可能性があるため注意しましょう。

1-2 管理者責任が問われる可能性がある

空き家を管理しないことで発生した損害は、管理者責任を問われる可能性があります。

例えば、老朽化した屋根瓦が落下し通行人がけがをした場合、所有者は「管理責任を怠った」として損害賠償を請求されるケースが挙げられます。過失の有無が争点になることもありますが、空き家であるにもかかわらず巡回や点検を行っていない場合、裁判で所有者の過失と判断される可能性もあるでしょう。

所有者である以上、使用していない物件であっても管理責任を完全に免れることはできません。予防的な視点からも、定期的な見回りや第三者による管理委託が必要です。

1-3 管理責任と税金の負担が続く

誰も住んでいない空き家でも、所有している限り固定資産税の支払い義務は続きます。問題になる点が、「住宅用地の特例」が適用されなくなるケースです。特定空き家に指定されると特例が解除され、敷地の固定資産税が最大で6倍に増える可能性があります。

また、空き家を所有しているだけで管理費や補修費、保険料などのランニングコストもかかります。使っていないにもかかわらず負担が積み重なっていくため、管理不能な状態になる前に、現状を見直すことが大切です。

第2章 空き家トラブルが起こる原因

空き家がトラブルの原因になる背景で特に多いケースが、相続後に空き家を放置したり所有者が遠方に住んでいて管理できないケースです。

空き家は、住まなくなった瞬間から老朽化が進み、管理の手を抜けばすぐに劣化します。結果、見た目にもわかるような傷みが進行して悪影響を与えるようになります。

空き家は、単に「誰も住んでいない建物」ではありません。トラブルになる前に、早めに空き家をどうすべきか考えておくことが大切です。

2-1 空き家が放置される理由

空き家が放置される大きな理由は、相続後の対応が滞ることです。

「親から空き家を相続したものの、忙しくて現地に行く時間がない」「他の相続人と話がまとまらない」「そもそもどう処理してよいかわからない」などの理由で手つかずの状態が続いてしまうケースは珍しくありません。

さらに、登記がされていなかったり、所有者が死亡して誰が法的に所有者か不明になっている「所有者不明の物件」も問題です。このケースでは、管理はおろか売却や寄付すらできずに放置されることになります。

空き家は放置された瞬間から劣化が進み、数年で取り返しのつかない状態になることもあります。時間が経てば経つほど対応が困難になるため、放置せず早めの対策が必要です。

2-2 空き家管理は見落としが起こりやすい

空き家を「管理しているつもり」でも、実際にはトラブルの原因を見落としているケースもあります。例えば、数ヶ月に一度の訪問で外観だけをチェックしていても、室内のカビの発生や雨漏り、害虫の繁殖といった内部の劣化は気づかれずに進行します。

草木の繁茂やゴミの散乱など、周囲への影響が見えにくい場所にある空き家では、近隣住民からの苦情によって初めて問題が発覚することもあるでしょう。

「管理しているつもり」ではなく「実効性のある管理」が求められるため、自分で対応しきれないと感じたら早めに専門業者に委託することをおすすめします。

第3章 トラブルを未然に防ぐ空き家管理の方法

空き家トラブルを未然に防ぐためには、何より定期的な管理が重要です。無人の期間が長くなる空き家では、建物の劣化や環境悪化が目に見えて早く進行します。

管理の方法には、自分で行う方法と専門のサービスを利用する方法の2つがあります。それぞれにメリット・デメリットがありますが、どの方法でも継続的な取り組みが必要です。

では、トラブルを未然に防ぐ空き家管理の方法を解説します。

3-1 自分で管理する

自分で空き家を管理する場合は、月に1回以上の定期的な訪問が望ましいでしょう。

具体的には、物件の外観や内部の点検、草木の手入れ、郵便物の回収、換気、防犯チェックなどを行います。特に梅雨や台風のシーズンには、雨漏りやカビの発生を防ぐための点検も欠かせません。

ただし、自分での管理には限界があります。特に、高齢者や遠方在住者にとっては、毎月の巡回は大きな負担となるでしょう。交通費や時間もかかるため、無理に続けるよりも早めに外部のサポートを検討することが現実的です。

3-2 空き家管理サービスを活用する

自分で管理を続けることが難しい場合は、空き家管理サービスの活用を検討しましょう。

空き家管理サービスとは、専門業者が所有者に代わって空き家の点検・清掃・巡回・防犯などを行うサービスのことです。特に、遠方に住んでいる、身体的な理由で定期的な訪問が困難、または忙しくて時間が取れないという方にとっては心強い味方になります。

業者によってサービス内容は異なりますが、一般的には月に1〜2回の定期巡回、建物の外観・内部チェック、郵便物の整理、通気や水回りの確認、防犯チェックなどが含まれます。

空き家管理サービスの料金相場は、およそ月額5,000円〜15,000円程度が一般的です。

月1回の点検5,000円前後
月2回以上の点検8,000〜15,000円
オプション追加別途料金(1,000円〜)

ただし、業者選びには注意が必要です。信頼できる業者かどうか、サービス内容と価格が適正かを確認して選びましょう。

3-3 自治体のサポート制度を活用する

空き家対策に力を入れる自治体は年々増えており、管理や活用を支援する制度が充実してきています。

代表的な制度には、解体費用の一部補助リフォーム費用の助成金などがあります。制度の有無や内容は地域によって異なるため、事前に確認しておきましょう。

空き家は個人の問題であると同時に、地域資源としての価値にも影響します。上手に制度を利用し、適切な管理と有効活用を目指しましょう。

3-4 賃貸物件として活用

空き家を賃貸物件として活用することで、建物の使用頻度が保たれるため、老朽化のスピードを遅らせることができます。

ただし、現実的には築年数が古い物件や設備が老朽化した空き家の場合、そのままでは入居希望者が現れない可能性が高いでしょう。

一定のリフォームや修繕が必要になることも多く、そのための費用負担が発生します。また、改修を施したからといって確実に入居が決まる保証はなく、投資に対するリターンが不透明な点もリスクになりかねません。

迷った場合は、不動産会社などの専門家に相談し、立地や市場ニーズを踏まえた活用の可能性を判断してもらうことが重要です。

また、近年では「サブリース」といって、一定の賃料で物件を借り上げ、管理や運営を代行してくれるサービスもあります。維持費程度の賃料であれば不動産会社側が引き受けるケースもあるため、資産価値が高いと判断した場合は前向きに検討するとよいでしょう。

第4章 万が一トラブルが起きてしまった場合の対処法

空き家をどれだけ丁寧に管理していても、完全にトラブルを防ぎきることは難しいでしょう。トラブルの対応を怠ると、損害賠償請求や行政からの指導などの問題に発展する可能性もあります。

では、万が一トラブルが起きてしまった場合の対処法を解説します。

4-1 苦情が来たときの対処法

近隣住民から苦情が来た場合、原因となっている問題を特定し、できるだけ早く現地を確認して対応しましょう。対応した内容は、文書や写真で記録を残しておくと後々のトラブル回避に役立ちます。

また、苦情を寄せた方には、進捗状況や対策内容を丁寧に説明し、誠意をもって対応することで信頼関係を維持するように心がけましょう。

近隣住民との関係は、今後の生活にも大きく影響するため、誠実な姿勢が大切です。

4-2 損害賠償請求された場合の対処法

万が一、空き家が原因で他人に損害を与えてしまい、損害賠償を請求された場合は、まず相手から届いた内容証明などを確認しましょう。自身だけで対応するのではなく、なるべく早く弁護士に相談し、法的アドバイスを受けることがおすすめです。

同時に、空き家にかけている火災保険や個人賠償責任保険の内容を確認しましょう。保険が適用される場合、損害額の一部または全額がカバーされる可能性があります。

損害が発生した事実を軽視せず、誠意をもって対応して被害の拡大を防ぎましょう。

第5章 事前にできる空き家トラブルの予防策

空き家のリスクを最小限に抑えるためには、あらかじめ予防策を講じておくことが重要です。トラブルが起こってからでは手遅れになることも多いため、空き家をどうするかを早めに検討することで未然にトラブルを防ぐことができます。

では、事前にできる空き家トラブルの予防策を紹介します。

5-1 空き家を売却する

使う予定のない空き家は、できるだけ早く売却することを検討しましょう。

建物の劣化が進めば進むほど、修繕費や維持管理費がかさむだけではなく、買い手が見つかりにくくなります。不動産としての価値が残っているうちに手放すことは、資産を守る意味でも有効です。

また、売却する際は相続登記の手続きや権利関係の整理も行う必要があります。トラブルを未然に防ぐためにも、専門家に相談しながら慎重に進めましょう。

5-2 定期管理で防犯対策をする

空き家は、人の気配がないことで空き巣や不法侵入者の標的になりやすくなります。そのため、外部から見て「放置されていない」と感じさせることが防犯対策に有効です。

例えば、庭木や草を定期的に手入れしたり、照明やセンサーライトを設置したりすることで、空き家であることを悟られにくくなります。また、郵便ポストに郵便物が溜まっていないかも定期的にチェックしましょう。

防犯対策は、空き家の維持と地域の安心のために欠かさず行うことが大切です。

5-3 空き家を活用する

空き家は、売却する以外にも多様な活用方法があります。

例えば、賃貸住宅として貸し出す、民泊として活用する、シェアハウスや事務所として活用することも選択肢のひとつです。

最近では、地域コミュニティの拠点や子育て支援施設、高齢者向けの居場所づくりなど公共的な利用にも注目が集まっています。

ただし、用途変更には法的手続きや設備の改修が必要になることもあるため、事前に専門家に相談をしながら進めるようにしましょう。

5-4 空き家バンクに登録する

空き家を活用したいが、自力では買い手や借り手を見つけられない場合は「空き家バンク」の登録を検討しましょう。

空き家バンクは自治体が主体となって運営しており、地域への移住希望者やUターン希望者、事業利用を検討する方などに空き家情報を発信しているサービスです。

登録された物件は自治体のホームページなどに公開されるため、自分では見つけられなかった買い手・借り手とマッチングできる可能性が広がります。

また、空き家バンクを利用した取引には補助金や改修支援制度がセットになっていることもあり、費用面の負担を抑えられる点もメリットです。

5-5 寄付や譲渡を行う

売却や活用が難しい場合でも、空き家を無償で寄付・譲渡できる可能性があります。例えば、隣接地の所有者や自治体、NPO法人、地域活動団体などが受け入れ先の候補です。

ただし、寄付や譲渡をするためには、登記の変更や契約書の作成などの手続きが必要です。また、相手方の受け取り意志がなければ成立しないため、交渉には誠意と根気が求められます。

5-6 任意後見制度・家族信託を利用する

自分が将来空き家を管理できなくなるリスクがある場合は「任意後見制度」「家族信託」の利用を検討しましょう。

任意後見制度は、元気なうちに契約を結び、判断能力が低下したときに後見人が財産管理を引き継ぐことができます。一方、家族信託は、あらかじめ財産の管理・運用を家族に託せる仕組みで、柔軟な対応が可能です。

早めに利用を始めることで、予期せぬトラブルに巻き込まれることを予防できます。これから高齢期を迎える方や、すでに介護を見据えた生活を始めている家庭では、ぜひ検討しておきたい選択肢です。

まとめ:管理できない空き家は早めに手放すことも考えよう!

空き家の管理を怠ることで、近隣住民とのトラブルや行政からの指導、資産価値の大幅な減少などの事態を招く危険性があります。

一方、空き家は適切に管理・活用すれば、資産として再び価値を持たせることが可能です。どうしても管理が難しい場合は、売却や寄付などを含めて早めに方針を決めることが求められます。空き家の資産を保つためにも、できることから始めましょう。

「住まいの賢者」では、司法書士と連携して、相続登記や相続税の相談、土地の活用・売却の相談まで幅広く対応しています。空き家の活用方法に悩んでいる方は、ぜひ無料相談をご活用ください。

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この記事の執筆者

杉田 悟(すぎた さとる)

杉田 悟(すぎた さとる)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/管理業務主任者/競売不動産取引主任士

長年の実務経験を持ち、特に相続や不動産登記に関する専門性が高い。一般の方にも分かりやすく、正確な情報提供をモットーとしている。

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