空き家を相続したら読むべき!税制や特例から売却・放棄まで徹底解説

空き家を相続したら読むべき!税制や特例から売却・放棄まで徹底解説
執筆者: 杉田悟

はじめに

空き家の相続は、突然の出来事として訪れることが多いものです。突然手に入れた空き家にどう対処すべきかと、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

本記事は、以下のように感じているあなたにお届けします。

  • 空き家をどうすればよいか分からない
  • 税金や手続きが複雑で不安

空き家相続の基本や、リスク、税制上の特例などを詳しく解説します。

これを読めば、相続後にとるべき行動や判断のポイントがクリアになります。空き家に関して後悔のない選択をするために、ぜひ参考にしてください。

第1章 空き家を相続する際にまずすべきこと

相続財産に空き家があったとしても、最初に何をすべきかわからないという人は多いのではないでしょうか。

ここでは、空き家を相続する際に行うべきことや考えるべきことについて、順を追って説明します。

空き家を相続する予定がある方は、あらかじめこの内容を知っておくことでスムーズに手続きを進められるでしょう。

1-1 空き家を相続するか相続放棄するか決める

まず初めに決断しなければならないのは、空き家を相続するかどうかです。

空き家の相続には、税金支払いや管理義務といった負担も含まれます。他の相続人と、空き家の対処については早めに話し合いの場を持つべきです。

築年数が古く利用価値が低い空き家の場合は、無理に相続すると後々の維持費や管理が大きな負担になる可能性もあります。将来的な計画や費用負担も踏まえ、相続するかどうかは慎重に判断しましょう。

なお相続放棄する場合は、相続の開始(被相続人の死亡)を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ相続放棄の申述を申し出る必要があります。この期間を過ぎると単純承認とみなされ、相続放棄は認められません。また、空き家のみの放棄は認められておらず、相続放棄する場合は現金などその他の相続財産についても受け取れなくなります。

1-1-1 【注意】相続放棄しても管理義務が残る可能性がある

注意しなければならないのは、相続放棄しても空き家が直ちに自分と無関係になるわけではないということです。

放棄しても一定の条件下では、管理義務が残るケースがあります。

例えば、放棄しても他の相続人が決まるまでの間は、最小限の管理をする責任を負う場合があるのです。相続する権利を持つ人が全員放棄した場合は、国から相続財産管理人が専任され、最終的に国の所有となります。

空き家を完全に手放したい場合は、このような法的手続きの流れもきちんと理解しておくことが重要です。

不動産の相続放棄についてさらに詳しく知りたい場合は、こちらの記事も参考にしてください。

1-2 相続したら相続登記する

空き家を相続したら、まず相続登記を行う必要があります。相続登記とは、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する手続きです。2024年から義務化され、怠ると過料(罰金)の対象にもなります。

面倒だからと相続登記を放置する人もいますが、名義変更ができていなければ売却や解体、賃貸などの処分ができません。将来にわたるトラブルを防ぐためにも、早めに手続きを行いましょう。

相続登記は法務局で手続きします。自分でできる手続きではありますが、抵当権抹消登記なども見据えて司法書士へ相談するとその後の手続きも安心です。

1-3 空き家の現状を確認して処分・利活用を考える

相続登記が済んだら、空き家の状態をチェックして現状把握しましょう。老朽化や雨漏りなどの劣化だけでなく、修繕の必要性や周囲に危険を及ぼす落下物の可能性などがないかを確認します。

空き家を今後どうするかの選択肢としては、売却・賃貸・解体・居住などが考えられます。状態や立地条件に応じて適切な活用を選ぶことが、空き家の価値を活かす第一歩です。

すぐに判断するのが難しくても、とりあえず放置するという選択肢は避けるべきです。空き家を所有しているだけで、固定資産税や管理コストがかかります。そのうえ放置しつづけると、次章に述べるような大きいリスクが生じることになります。

処分や利活用をすぐ決められなければ、管理会社に依頼するか自分のできる範囲で管理を続けることが大切です。

第2章 知っておきたい空き家相続の5大リスク

空き家を相続することで発生するリスクには、目立たず見落とされがちなものも含まれます。放置していると、税金の問題だけでなく、建物の劣化や近隣トラブル、行政からの指導など対応が遅れるほど問題が深刻化する恐れがあるのです。

この章では、空き家相続に潜む主な5つのリスクについて解説します。リスクをあらかじめ知っておけば、取るべき選択肢が見えてくるでしょう。

2-1 税金が6倍に?固定資産税・都市計画税のリスク

空き家を放置すると、固定資産税や都市計画税が最大6倍に増額されることがあります。これは「住宅がある土地には軽減措置を適用するが、適切に管理されていない場合は対象外」とする制度によるものです。

通常、居住用に使われている建物では「住宅用地の特例」によって固定資産税の評価額が最大6分の1になることで、負担が軽減されています。しかし放置された空き家が周囲に危険を及ぼす可能性があると行政から判断されると、「特定空き家」「管理不全空き家」と指定されます。「特定空き家」「管理不全空き家」と指定されれば特例は適用されなくなってしまうため、固定資産税や都市計画税の軽減措置もなくなるというわけです。

空き家を使う予定がないからといって放置していると、税負担が急増して資産価値以上のコストが発生するリスクもあります。活用や処分の計画は早めに進めましょう。

2-2 「管理不全空き家」「特定空き家」とされると強制解体のリスク

行政から「管理不全空き家」や「特定空き家」に指定されると、固定資産税の負担が増えるだけではありません。

行政からの勧告・命令が行われ、最終的には行政代執行による強制解体を受ける場合もあります。なお、その場合の費用は自己負担です。

物件の広さや構造にもよりますが、解体費用は数百万円かかります。相続した空き家を放置していると、思わぬ金銭的負担がのしかかるリスクが生じるのです。

2-3 相続登記の義務化で過料リスク

先述の通り、2024年から相続登記が義務化されました。原則として取得を知った日から3年以内に登記をしないと、最大10万円の過料が科される可能性があります。

名義が変わらなければ、売却や利活用もできないだけでなく、相続人の間でトラブルも起こりがちです。手続きに不安がある場合は、早めに専門家に相談して正確かつ迅速に登記を済ませましょう。

2-4 建物の劣化・倒壊・ご近所トラブルのリスク

家は使われずに放置されていると、雨漏りや壁の崩壊など、建物の劣化が進行しやすくなります。

また、景観や衛生環境の悪化から近隣住民とのトラブルにつながることもあります。さらに、空き巣や放火、犯罪グループの拠点化といった犯罪リスクの温床にもなり得るのです。

通行人の上に瓦が落ちてきて怪我をさせるなど、空き家の劣化が原因の場合は所有者に損害賠償を請求される事態にもなりかねません。

定期的に点検や掃除に訪れる必要がある他、遠方に住んでいて難しい場合は管理委託を検討すべきです。

2-5 維持費負担と遠方管理のリスク

空き家を所有するということは、固定資産税や保険料、修繕費などの維持コストがかかることを意味します。

特に、実家など遠方にある空き家を相続した場合、現地までの移動や定期的な管理に多大な手間と費用がかかります。

遠方にある空き家ほど、第三者への管理委託や売却の検討を早めに始めることが、長期的な負担を避けるポイントです。

第3章 【ケース別】相続した空き家への対応策

空き家をどう扱うかは、建物の状態や立地、資産価値によって最適な方法が異なります。

この章では「資産価値がある場合」と「資産価値が低い場合」の2つのケースに分けて対応策を解説します。

3-1 空き家に資産価値がある場合

空き家が駅の近くや都市部にある場合や、築浅で状態が良い場合は、次のような選択肢が考えられます。

  • 売却
  • 賃貸
  • 自己利用

空き家を売却する際は、適用要件を満たせば「空き家の3,000万円特別控除」など税制上の優遇措置を活用して税負担を抑えられます。ただ、個人で買い手を探すのは難しいため、不動産会社と契約するか空き家バンクに登録するのが現実的です。

空き家の売却を検討したい方は、相続登記から売却までワンストップで支援できる住まいの賢者までご相談ください。

また、地域のニーズがあれば、空き家を賃貸物件にして収入源とする方法もあります。しかし、リフォームやリノベーションは必要です。また、入居者がなかなか見つからないリスクもあることを知っておきましょう。

空き家を人に譲るのは考えられず、自力で所有し続けたい場合は、いっそ自分で住むことをおすすめします。

完全に生活の拠点を移すのが難しい場合は、週末や長期休みだけ住むセカンドハウスとしての活用も考えられます。

どのような選択肢を選ぶにせよ、空き家の資産価値は時間が経つほどに落ちていきます。売却や賃貸を検討するのなら、少しでも資産価値が高い方が有利です。方向性を決めたら、早めに行動しましょう。

3-2 空き家の価値が低い場合

一方、老朽化が進み立地条件も悪い空き家は、売却が難しくコストばかりかかる場合があります。

このようなケースでは、無償譲渡(寄付)や解体という選択も視野に入れましょう。さらに、収益化を求めるなら解体後の更地を駐車場や倉庫として活用する方法もあります。

ただし、更地にする場合は解体費用や固定資産税の増加にも注意が必要です。費用対効果をしっかり見極め、収益シミュレーションをしたうえで判断することが大切です。

第4章 空き家相続に関する税制・制度の特例

空き家を相続した際には、使える税制や制度の特例を知っておくことで、負担を大きく軽減できる可能性があります。

この章では、空き家相続に関連する制度や特例について解説します。

4-1 空き家バンク

空き家バンクは、市区町村やNPOが運営するホームページ上で、空き家を取得したい人・空き家を譲渡したい人をマッチングさせる取り組みです。主体になっているのが民間ではなく地方自治体なので、空き家が所在する地域の補助金制度などを併用しやすいのがメリットの一つです。

また、登録は無料で行っている空き家バンクが多く、特に利用料や仲介料などもかかりません。ただし、マッチング後に不動産会社に仲介を依頼した場合は仲介料は必要です。

空き家バンクは不動産会社と違い、登録された空き家を積極的に営業などは行いません。そのため、譲渡先が見つかるまでに時間がかかるというデメリットもあります。

空き家バンクに登録できる期間は決められており、多くは2年間です。その間に譲渡先が決まるとは限らず、他の活用方法も考えながら空き家を運用したいという人には向いているでしょう。

なお、登録期間の延長は手続きすれば可能です。

4-2 空き家の3,000万円特別控除

相続した空き家を売却する場合、一定の条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度が「空き家の3,000万円特別控除」です。

令和6年の改正によって、売主が耐震改修や解体をしなくても、買主が一定期間内に対応すれば特例が適用されるようになりました。

ただし、適用には居住用建物であること、被相続人が一人暮らしであったことなど複数の要件がありますので、事前に確認しておきましょう。

空き家の3,000万円特別控除に関しては、こちらの記事も参考にしてください。

4-3 小規模宅地等の特例

この特例では、被相続人が住んでいた宅地330㎡までの部分について、相続税評価額を最大80%減額できます。ただし、適用には以下の条件があります。

  • 配偶者、同居親族、被相続人に配偶者や同居相続人がいなかった場合の親族
  • 相続後に居住を継続すること(配偶者以外)

参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)/国税庁

相続税の申告期限までに居住を開始していないと特例が受けられない場合もあるため、早めの意思決定が重要です。高額な税負担を避けるために、ぜひ活用を検討しましょう。

4-4 相続土地国庫帰属制度

どうしても空き家を手放したいという場合は、相続土地国庫帰属制度を検討しましょう。

相続土地国庫帰属制度とは、一定の条件を満たす土地を国に引き取ってもらう制度です。

ただし、適用されるのは土地のみです。建物が残っていると申請できないため、先に解体する必要があります。また、申請には審査や負担金も発生するため、事前に制度内容をよく理解したうえで判断することが求められます。

参考:相続土地国庫帰属制度の概要/法務省

まとめ:空き家を相続したらまず「登記」と「現状確認」から

空き家の相続は、放置すれば税金や管理の負担、法的リスクへと発展する可能性があります。まずは相続登記を手続きし、現状の確認を最優先して行うのが大切です。

その上で売却・活用・放棄などの選択肢を検討し、自分にとって最適な対応を取りましょう。

空き家相続の悩みは誰にでも起こりうること。適切な知識と行動で、安心した未来を築いていきましょう。

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この記事の執筆者

杉田 悟(すぎた さとる)

杉田 悟(すぎた さとる)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/管理業務主任者/競売不動産取引主任士

長年の実務経験を持ち、特に相続や不動産登記に関する専門性が高い。一般の方にも分かりやすく、正確な情報提供をモットーとしている。

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