空き家のマンションが危ない!放置リスクと活用・売却まで徹底解説

空き家のマンションが危ない!放置リスクと活用・売却まで徹底解説
執筆者: 杉田悟

はじめに

近年、日本全国で空き家が急増しており、マンションも例外ではありません。

一戸建てとは異なり、集合住宅であるマンションでは、空き家が周囲の住人や管理体制に大きな影響を及ぼすため、早めの対策が必要です。

本記事では、空き家となったマンションの実態と放置するリスクを解説します。活用方法を確認し、資産を守りましょう。

第1章 マンションの空き家率が急増している理由

全国のマンションにおける空き家率は年々上昇しています。

その背景には、少子高齢化や相続放棄、都市郊外の人口減少などの要因があります。

親からマンションを相続したものの、自身が住む予定がなかったり、老朽化が進んで住みにくくなっていたりして、結果的に空き家となるケースも珍しくありません。

このような事情から、手放すに手放せず空き家のまま放置されてしまうことが多く、空き家問題を深刻化させているといえるでしょう。

1-1 「空き家」と「長期不在」の違いとは?

空き家と長期不在は似ているようで異なるものです。

一般的に空き家とは、人が居住しておらず、定期的な管理もされていない状態を指します。

一方、長期不在は、転勤・留学・入院などによって一時的に家を空けている状態で、いずれ戻る予定があり、所有者が定期的に管理しているケースです。この場合、たとえ人が住んでいなくても、空き家とは見なされないことが一般的となります。

また、行政上の扱いにも違いがあり、空き家に該当すると固定資産税の優遇措置が解除される可能性もあります。

また、特定空き家に指定されると、固定資産税の軽減措置が打ち切られるだけではなく、改善命令や罰則が科されることもあるため、見極めは非常に重要です。

第2章 マンション特有の空き家リスクとは?

空き家になっているマンション特有のリスクとして、管理体制の崩壊周囲への悪影響が挙げられます。適切に対処しなければ、マンション全体の価値低下を招き、他の住民にも深刻な悪影響を与えることになるでしょう。

では、マンション特有の空き家リスクを解説します。

2-1 管理費・修繕積立金の未払いによる訴訟リスク

マンション所有者は、居住の有無にかかわらず、管理費や修繕積立金を支払う義務があります。しかし空き家となると支払いが滞るケースが多く、管理組合とのトラブルに発展することも珍しくありません。

悪化すれば訴訟にまで至り、差押えとなる可能性も考えられます。また、未納が続くことで他の住民の管理費負担が増すなど、不公平感を生む原因にもなりかねません。

2-2 放置による劣化や水漏れなどが周囲に影響する

空き家マンションを長期間放置すると、通水が行われないことによる配管の腐食、換気不良によるカビや腐敗臭の発生などが問題になります。

これが原因で隣室に水漏れや悪臭が及び、住民トラブルに発展するケースもあります。また、壁紙や床材の剥がれ、害虫の発生などが放置され、建物全体の美観を損なう可能性もあるでしょう。

2-3 空き巣に狙われるリスクが高まる

無人であることが周囲に知られると、空き巣や不法侵入の対象になりやすくなります。放火などの犯罪リスクも高まり、マンション全体の治安が悪化する可能性も否定できません。

空き家であることを示すような郵便物の未回収、カーテンがずっと閉め切られている状態は犯罪者の標的となるため、防犯カメラの設置などの対策が重要です。

2-4 管理費と固定資産税がかかり続ける

空き家であっても所有している限り、管理費や固定資産税などの維持コストは発生し続けます。支出だけが発生する状態では、長期的にみて大きな負担になるでしょう。

特に、修繕積立金が大規模改修に向けて増額されるタイミングでは、想定以上の負担に驚かされることもあるでしょう。

資産ではなく負債としての側面が強まるため、支払いの見通しが立たない場合は、活用や売却を含めた現実的な対応が望ましいといえます。

第3章 【まずは自己チェック】空き家マンションはどうするべき?

空き家マンションをどうするか悩んでいる方は、以下のチェック項目を参考に自分の状況を整理しましょう。

資産として保有した方がよいケース

  • オフ将来的に自分や家族が住む予定がある
  • オフ賃貸に出せば安定的な家賃収入が見込める
  • オフ駅近、都市部など周辺エリアに賃貸ニーズがある
  • オフ定期的な管理が可能で、老朽化を防げる
  • オフリフォーム費用を負担できる余裕がある
  • オフ長期的に不動産資産として保有しておきたい

売却した方がいいケース

  • オフ今後その物件に住む予定がない
  • オフ管理や維持にかける時間や費用が負担
  • オフ地域の人口減少で賃貸需要が低い
  • オフ建物の老朽化が進み、大規模修繕が必要
  • オフ管理費や固定資産税が家計を圧迫している
  • オフ早く現金化して他の目的に充てたい
  • オフ相続人が空き家を管理できない

もし「今後住む予定がない」「維持管理が負担」と感じるなら、売却を検討しましょう。一方、資産として保有したい場合はリフォームして賃貸に出したり、シェアハウスにするなどの活用方法もあります。

重要な点は、放置せず明確な方針を早期に決めることです。空き家問題は先送りにするほど手が付けにくくなり、費用や手間が増していきます。

判断の目安を持ち、早期に動くことが後悔しないためのポイントです。

第4章 空き家マンションを管理する方法

空き家マンションを放置せずに管理することは、資産価値を維持し、周囲とのトラブルを防ぐために非常に重要です。マンションの特性に応じた管理体制を整えることが、空き家リスクの回避に直結します。

では、空き家マンションを管理する方法を解説します。

4-1 定期的に通水や掃除をする

配管内の水が乾いてしまうと、悪臭の原因になるだけでなく、サビや腐食を引き起こす恐れがあります。そのため、月に1回は現地に赴きすべての水道を数分間流す、通水作業が欠かせません。

さらに、室内のほこり取りや換気も重要です。空気がこもるとカビやダニが発生しやすくなり、後に使用する際のリフォーム費用が高くついてしまう可能性もあります。

掃除機をかけるだけでも室内の劣化を大幅に遅らせることができます。

4-2 郵便物の管理や掲示板チェックをする

ポストにチラシや郵便物が溜まっていると、外から見てすぐに空き家とわかってしまい、防犯上のリスクが高まります。

月1回以上のペースで郵便物を回収し、不要な広告物は即処分しましょう。

また、マンションの掲示板には重要なお知らせが掲示されていることがあります。

長期間放置すると、大規模修繕や設備点検の通知を見逃す可能性もあるため、併せて確認することが大切です。

4-3 防犯対策をする

空き家が狙われる要因は、人の気配がしないことです。

そのため、防犯対策には人の気配を演出する工夫が必要です。例えば、室内照明にタイマーを設定して夜間に部屋を明るくすることで、留守中でも在宅のように見せることができます。

マンションの場合、玄関前の共用部分には防犯カメラやダミー機器を勝手に設置できないことが多いため、宅配ボックスを活用したり、室内からインターホン応答を設定するなどの方法も有効です。

また、定期的に室内のカーテンを開閉することで、生活感を演出することができます。できる限り人が出入りしているように見せることが犯罪抑止に直結します。

4-4 見守りサービスを活用する

遠方に住んでいて定期的に通うのが難しい場合、民間の見守りサービスを活用するのが現実的です。サービス内容には、定期巡回や簡易清掃、写真付きの報告書送付などがあります。

費用は数千円〜1万円前後が相場で、長期的な安心と比較すれば十分な価値があるでしょう。また、高齢者の単身所有者にも有効な選択肢です。

第5章 空き家マンションを売却する方法

空き家の活用や処分方法に悩んだとき、最も現実的な選択肢が売却です。

維持費や固定資産税、老朽化によるリスクを考えると、今後住む予定がないのであれば、早めに手放すことを検討しましょう。

売却には、仲介と買取の2つの方法があります。売却を考える際は、不動産市場の動向や地域の需要、物件の築年数や設備状況などを踏まえて判断しましょう。

特に、築古のマンションは早めの売却が有利です。今後の負担やリスクを考慮しながら、最適な方法を選ぶことが成功のカギとなります。

では、空き家マンションを売却する方法を解説します。

5-1 仲介業者に依頼して売却する

不動産会社に仲介を依頼することで、より高値での売却が期待できます。

ただし、売れるまでに時間がかかる場合もあるため、売却活動中の管理も怠れません。信頼できる業者を選び、査定額や販売戦略を念入りに確認しましょう。

また、複数の業者に査定を依頼する「一括査定サービス」を利用すれば、相場感を把握しやすくなります。仲介業者に依頼する場合は、情報整理と事前準備が成功のポイントです。

5-2 買取業者に依頼して売却する

空き家を早期に処分したい場合は、買取業者に売却するとよいでしょう。

市場価格よりは低くなりますが、即時買取や瑕疵担保責任の免除などメリットもあります。特に、室内の状態が悪い、長期間空き家だったなど、仲介で売るには不利な条件がある物件でも買取なら柔軟に対応してくれるケースがあります。

価格よりスピードを重視したい方にとっては有力な選択肢です。

第6章 空き家マンションを活かす方法

空き家を売らずに活用したい場合は、地域のニーズや物件の特性に応じて、多様な活用方法を検討しましょう。収益化を狙う賃貸運用や、社会的意義のある地域活動拠点としての転用など、アイデア次第で価値を生み出すことが求められます。

では、空き家マンションを活かす方法を解説します。

6-1 シェアハウスや地域拠点に転用する

空き家を複数人で利用するシェアハウスや子育て支援拠点や起業家向けのコワーキングスペースの活用など、社会的ニーズに応じた形への転用が進んでいる状況です。

行政やNPOと連携すれば、助成金や支援制度が活用できる場合もあります。

6-2 リフォームをして賃貸に出す

リフォームを行うことで、賃貸物件としての価値が向上します。築年数が古い場合は、水回りや内装を中心に改修するだけでも印象が大きく変わります。

特に、立地やアクセスに優れた物件は、若年層や単身世帯からのニーズも見込めるでしょう。賃貸に出すことで安定した収入を得られ、資産の有効活用につながります。

6-3 空き家活用NPOへ相談する

空き家問題に取り組むNPO法人では、活用アイデアやマッチングの支援を行っています。

NPOは営利目的ではないため、所有者の立場に立ったアドバイスをしてくれる点でも安心感があるでしょう。

空き家の活用には専門知識が必要な場合も多いため、信頼できる第三者とつながることが成功の近道です。

6-4 空き家バンクを活用する

各自治体が運営する「空き家バンク」に登録することで、移住希望者や地方で暮らしたい人とマッチングできます。

登録費用が無料の自治体も多く、売却・賃貸いずれにも対応可能です。特に、地方では定住促進や地域活性化の一環として力を入れており、空き家バンク経由での契約成立も年々増加しています。

不動産会社から売れないと言われた場合は、まずは空き家バンクへの登録を検討してみましょう。

まとめ:空き家マンションの放置は危険!早めに方針を決めよう

マンションの空き家を放置しておくことは、周囲に迷惑をかけるだけではなく、自身の資産を劣化させ、負債化させるリスクもあります。

管理費や固定資産税を支払い続けるだけではなく、トラブルになる可能性も無視できません。本記事をきっかけに、空き家マンションへの対処を前向きに検討しましょう。

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この記事の執筆者

杉田 悟(すぎた さとる)

杉田 悟(すぎた さとる)

株式会社あんしんリーガル 宅地建物取引士/管理業務主任者/競売不動産取引主任士

長年の実務経験を持ち、特に相続や不動産登記に関する専門性が高い。一般の方にも分かりやすく、正確な情報提供をモットーとしている。

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